第15話 美人ママ、結衣さんをホテルのバーへ誘うことに成功する。
トゥルルル~、トゥルルル~。
「あっ、もしもーし結衣さん? 俺です充勇二です。え? やだな~伝説ポ〇モンが電話してくるわけないじゃないですかー。佐藤ですよ。佐藤のみゅうつーです」
『分かってるし。なに一人で漫才してるん?』
「気にしないでください、自虐ネタみたいなもんです。それであいつ体調どうですか?」
『うーん……。さっきよりも辛そうにしてる感じ? まぁあの子もともと丈夫だから。すぐケロって治るだろうけどさ』
「でしたら急ぎませんと」
『ん?』
「いえこっちの話です。それで、結衣さんはいまなにしてます?」
『うちはようやく仕事が一区切りついたんよ。ビールでも飲もうって思ってジョッキ持ってきたとこだけど?』
あいかわらずお酒大好きだなぁこの人は。
まあいい。
引っかけるにはその方が好都合だ。
「俺、前からずっと結衣さんにお礼がしたいって思ってまして」
『ハ……? なに? うち?』
「はい。小学生の頃からいろいろとお世話になってますし。実は今晩、八王子駅前のホテルのバーを予約してまして」
『ホ……ホテルのバーっ!? え……うそっ、佐藤うち誘ってるの!?』
やっぱり期待した通りの反応だ。
昔から結衣さんは俺に対して妙に優しかった。
それはただ単に、姫谷の先輩だからそうしてくれてるんだって思ってたわけだけど……。
べつに自意識過剰ってわけじゃないぞ?
実は前に一度、結衣さんが酔っぱらっているときに本当に誘われたことがあるんだ。
2人だけでどこか遠くへ行かないかって。
その言葉の意味を当時の俺はよくわかってなかったんだけど。
ひょっとしたら、年下好きの気が結衣さんにはあるのかもしれない。
親子ほどの年齢が離れていることはあんま考えないようにしよう。
闇が深い可能性がある。
結衣さん、クソほど美人なのにぜんぜん再婚しないし。
おかしいと思ってたんだよなぁ。
ま、申し訳ないけど。
いまの俺は姫谷の声にしか興味がない。
「もちろん俺はお酒飲めませんし、結衣さんにたっぷり楽しんでもらおうって思って」
『でも、そんなお金……佐藤持ってなくない!?』
「今日のためにバイト代貯めてきたんですよ」
『っ、待って! 佐藤がバイトしてたのって……うちとデートするためだったんっ!?』
「平たく言うとそういうことです」
この前の出費で手元にはほとんど金は残っていない。
けど、俺には秘密兵器がある。
両親からもしものときに使えと言って渡されているクレカ。
父さん、母さん……いまがこれを使うときなんだ!
充勇二なんてふざけた名前付けたんだからこれでおあいこだよねっ?
『で、でも……いまひまりー体調悪いし、うちがそばにいてあげないと……』
「それ。むしろ逆効果だと思いますよ? 結衣さんがいるとあいつも安心して養生できないでしょうし」
『そ、そっかなぁ……うち邪魔なんかなぁ……』
思考が停止してるのか、結衣さんはぶつぶつとうわごとのようになにかを呟いている。
まさか33歳にもなって、ぴちぴちのDKから誘いを受けるとは思ってなかったんだろうなぁ。
いや、ふつーに結衣さんは美人なんだよ?
カリスマ主婦モデル余裕なんよ?
俺が声フェチモンスターで容姿は飾りってイカれた考え持ってるだけで。
「つーわけで。予約しておきましたんで。20時に八王子駅集合ってことでお願いしまーす」
『あっ、ちょっと佐藤っ……!?』
まだなにか言ってたが俺は無視してすぐに電話を切った。
うん、完璧。
我ながらナイスアイデアすぎる。




