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第77話 蒲焼き でもご飯はない

 俺達は宿屋に戻った。

「おやまあ、お客さん。そんなもの買ってきて、どうするのですか?」

 宿屋のおかみさんに言われた。

 この町の人からすれば、たくさん捕れる不味いものなのだろう。


「美味しいんですよ、これが」

「イールがですか?!」

「えぇ、調理次第でとても美味しくなるんですよ」

「へ~、それなら一度で良いから美味しいイールを食べてみたいね。そうすればこの何もない、イールしか捕れない町にも人が来るよ」

「では夕食前に作ってみますか、匂いが出るので軒下をお借りしますね?」

「えぇ、好きに使って良いわよ」


 イールはウナギのことだ。

 そしてウナギはタレで食べるから美味しいんだ。

 しかしこの世界には醤油がない。

 なら作ればいい。


 しかもウナギは皮が厚く、味がなかなか染みこまないから工夫が必要なんだ。


 まずは醤油だ。

【スキル】世界の予備知識発動!!

 醤油作り検索……検索完了!!

 ストレージ内にある小麦、塩、大豆で『創生魔法』を使う。

 大豆はストレージ内で生活魔法の火と水で蒸し、小麦は火にかけ水気がなくなるまで煮つめ砕く。

 麹菌を繁殖させ酵素を生み出す。


 そして時空間魔法を使い時間を加速させる。

 時空間魔法は時間を停止させるだけではなく、加速することもできる。


 もろしぼり、時間を加速させ熟成期間1~2年で薄口。

 2~3年で濃口醤油が出来た。



 これで醤油ができた。

 他の料理にも味付けとして使える。


 その間ウナギはきれいな水に入れておき、泥抜きと臭み抜きをしておく。





 今度はタレを作ろう。


 タレ作りに必要なのは、醤油、砂糖、みりんが無いから白ワインだ。

 俺は宿屋の外に出て軒下を借り長テーブルを出した。

 そこに魔道コンロを出し、フライパンに全ての材料を入れ中火で煮詰める。

 タレを煮詰めるときは火を強くしてしまうと、焦げやすいから気を付けないと。

 ふつふつしてきたら弱火にして、焦げ付かないように木べらでかき混ぜる。

 煮詰めてとろ味がでたら火から下ろして完成!!





 いよいよ今度はウナギの調理だ!!

【スキル】世界の予備知識発動!!

 ウナギの調理検索……検索完了!!

 まな板にウナギを乗せ、目の下あたりに目打ち(釘みたいな物)を刺し固定する。

 頭の方から尾にかけて背開きにする。

 調理は背開き、腹開きの2通りあるが俺は手間はかかるが背開きを選んだ。


 そしてフライパンの中に水を入れお湯になるまで待つ。

 お湯になったらウナギの身に軽くかけ、湯通しににする。

 そしてフライパンの中に陶器の皿を置きウナギを載せ、水を引き15分程度強火で蒸し余分な脂を落とす。

 ウナギは油が多くタレが弾かれてしまう。

 だから素焼きや蒸した方がタレが馴染みやすくなる。


 なぜ背開きにしたのかと言うと腹から裂くと、蒸す過程で外側の身が割れて串から外れてしまう。だから外側が厚くなる背開きが適していると判断したんだ。


 以前住んでいた世界の西の方では腹開きをして、そのまま焼いて食べるようだ。

 お好みでどうぞ!




 魔道コンロに網を乗せ串に刺し、タレをつけウナギを焼く。

 身の方に焼き目がつくように焼く。

 タレが乾いたらまたつけて焼く。

 これを三回繰り返す。


 蒲焼きといえばこれだ。

 俺は団扇うちわを『創生魔法』で創り扇いだ。


 パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、

  パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、

   パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、

 パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、パタ、


 お皿に盛って、はい蒲焼の出来上がり!!



「おう!やっとできたのかい。で、いくらだい?」

 目の前には労働者らしいおじさん達が並んでいる。

 そしてその後ろにもたくさんの人が…。


 あ、あれ?

 以前にもこんなことが…。


「エリアス君、また実演販売だと思われたのよ」

 アリッサさんに言われてやっとわかった。

 今さら違いますとは、言えないしな。

 

 オルガさんを見ると、仕方がないわね、と言う顔をしていた。

 

「数量限定で1本900円で販売します!!」

 飲食が原価の3倍が売値と考えたからだ。

「高いよ~」

「いや、俺はそれでも食べたい!!」

「1本おくれ!!」

 意外にも高いと言って帰る人より、食べたいと言う人の方が多かった。


「はい、お待ち~!!」

「う、旨い?!うまいぞ大将!!」

「へい、ありがとうございやす」

「俺にもくれ!!」

「私にも!!」

 こ、このままではウナギが足りない。

 するとウナギを購入した少年達が、店の前を横切り不思議そうな顔をしていた。


「おい君達。イールが足りないんだ。君達の仲間から、生きたイールを分けてもらえないか?」

「わ、わかった。行ってくるよ」

 そう言って子供達は市場の方にかけていく。

 しばらくすると他の屋台の、子供たちが桶を持って集まり出した。

「はいそれみんな買うからね!!」

 そう言うと子供達は嬉しそうに笑みを浮かべた。


 アリッサさんとオルガさんに手伝ってもらいながら、焼いて焼いて焼きまくった。

 おかしい。

 並んでいる人が減らない。

 そんなことを俺が思っていると、オルガさんも同じ事を思ったのだろう。


「ねえ、エリアス」

「なんでしょうか?」

「さっきから思ってたけど、そのパタパタ仰ぐのは意味があるの?」

「え?」

「魔道コンロだよね、これ。炭火じゃないし」

 そ、そうだった。

 魔道コンロを仰いでも意味がなかった…。


「だからお客が途切れないのよ」

 そうでした、すべて俺が悪いんです。

 仰いで匂いを飛ばし匂いに誘われ来てみれば、お客が並んでいれば自分も並んでみようかな、て思うよね。

「4本ください」

「あいよ~て、アイザックさんじゃないですか?」

 アバンス商会のアイザックさんが、お供2人と御者1人を連れて並んでいた。

「エリアス様がまた新しいことを始められたようで。この町には小さいですが商業ギルドがあるので、何かされるなら特許を申請しておくことをお勧めいたします」


 その後、『赤い翼』の4人も買いに来てくれた。

「美味しい?!」

 宿屋のおかみさんも買ってくれて、とても美味しいと言ってくれた。

 


 そして時間は過ぎ閉店となった。

「閉店です!!ごめんなさい~!!」

 まだ並んでいてくれた人は、ブツブツ言いながら帰って行った。


 気が付いたら夕食時期になっていた。

「俺達も食べてみましょう」

 そう言いながら、残しておいたウナギを焼いて食べた。

「お、美味しいわ。エリアス君」

「ほ、本当だ」

 アリッサさんも、オルガさんも喜んでくれる。

 あぁ、これでご飯があればな…。

 この世界にはお米はないらしいから。



 見るとウナギを買った子供達が残っていた。

 11人はいる、仕方ないな。

 実は後で食べようとまだ、ウナギはとって置いたのだ。

 絞めてあればストレージに収納できるしね。


 子供達にも焼いて食べさせてあげた。

 自分達が扱っているものが、美味しいものだと認識してほしかったからだ。

「美味しい~!!」

「うめえ!!」

「美味しいね」

 子供達が美味しそうに食べている。


 宿屋のおかみさんが俺に言って来た。

 

「ねえ、さっき一緒に泊っている商人の人と、特許を取ると言ってたよね」

「えぇ、まだ分かりませんよ」

「頼むよ、特許を取ってほしいんだ」

「どうしてですか?」

「この町には特産が無いからさ。でも私達はここで生きて行かないといけないから」

 そう言えばアイザックさんも、アレン領には特産品がないとか言ってたな。

 濃厚クリームシチューを作ったテオドーラ村もそうだし。

 特産品があれば働く場所が増え、失業者や孤児も減るのか。


 すると何人か増えていることに気づいた。

「近所の店を経営している人達さ。彼らも気持ちは同じだよ」

 見るとさっき列に並んでくれていた人も居る。


「わかりました。タレの作り方と蒲焼の焼き方を申請しておきましょう」

 クリームシチューの時に、アリッサさんから特許については言わている。

 後々のことを考え、今回は申請しておこう。

 俺はオルガさん、アリッサさんを連れ商業ギルドに向かい特許を申請した。

 タレの作り方と蒲焼の焼き方を開示することでお金を払う。

 開示料は使いやすいようにと、安い金額に設定し醤油も卸した。


 そして一緒に商店経営者や子供達が、ゾロゾロ付いて来ていた。

 商業ギルドの人が驚いている中、商店経営者の人達はお金を払いタレの作り方、蒲焼の焼き方などの情報を買っていく。



 すると商業ギルドに付いてきた子供達が文句を言い始めた。

「こんなに高いなら払えないよ~」

「やっとうまくいくと思ったのに」

「え~~~ん!!」

 泣き出す子まで出て来た。

 蒲焼を売って今の生活から抜け出せると思ったのだろう。


 俺は安くしたつもりでも、孤児の子達にしてみれば高い金額かもしれない。

 しかし特許を申請した以上、彼らだけ特別扱いはできない。


「それならイールを焼いて売るのではなくて、イールを捕まえて店に卸す仕事をすればいいじゃないか?」

 子供達に俺は説明した。


「ここにいる宿屋の人達は、蒲焼を店に出そうとしているんだ。でもイールは捕まえないと店で売れないだろう?」

 うん、うんと子供達は頷く。


「だから君達は捕まえて、宿屋に卸す商売をすればいいのさ」

「そ、その方がいいな私」

「そうだね、焼いても売れない時があるし」

 子供達も、その方が良いみたいだ。


「それなら明日から試しに、うちの宿屋に卸しておくれ」

「え、いいの?!」

 宿屋のおばさんが買い取ってくれると言う。

「まずはやってみないとね」


 その場に居る町人達は、未来に向け目を輝かせていた。


∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽


※エターブの町(Ukkīpedia調べ) 

 ジリヤ国王都とアレン領を結ぶ町の1つ。

 エターブの町は以前、特産品も無く休憩でさえ旅人が寄る事がない町だった。


 ある日どこの河川や湿地にもいる、誰も見向きもしなかったイールに目を付けた。

 そしてタレを付けて焼くと言う、画期的な発想で町おこしを果たした。


 当初、旅人が街道を歩いていると物凄く美味しそうな匂いが、エターブの町からしたと言う。町に寄ってみるとイールにタレを付けて焼いた、蒲焼という食べ物を団扇うちわで扇いでいたと言う。


 金額は900円と一回の食事代としては高価だったが、試しに食べてみるとこれが絶品だった。

 噂が噂を呼びたくさんの人達が、イールの蒲焼という()()()目当てに町を訪れた。

 そして雇用が促進され、消費が生まれ、失業率が下り、安定した職場で働くことにより子供が増え人口が増加し町は発展した。


 その後、蒲焼のタレは全国的に広がった。

 イールが捕れない地域ではハモ、アナゴ、ドジョウ、ナスなどで代用したと言う。

 人々はタレの旨さに気づき、それを応用し今の料理に発展したと伝えられている。


 後年にはイールは乱獲され絶滅を危惧されるほどになった。

 そしてエターブがイールの保護を訴え、人工養殖を最初に始めた町となった。



 ジリヤ国西暦1192年以降に突如、食文化が発展し人々の生活が豊かになる。

 食文化を綴る歴史書に、発祥の場には黒髪の少年が必ず居たと記載されている。


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