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第74話 旅の空

 俺達は夜が明けたばかりの道を歩いている。

 それにしても暗いうちに起こされるとは。


「アリッサさん、出発が早いですよ」

「仕方ないでしょう?エリアス君のことだからまた、道路整備をしながら行くと思ったのよ」

「そうした方が魔物も近寄ってこないし、歩きやすいから帰る時も楽でしょう?」

「それはそうだけど。ゆっくり寝てたら私達より先に王都に向う商人達が居たら、後から物凄い音が追いかけてきたら驚くでしょう?」

「そう思い今は整備する空間をストレージで包んで、音が出ない様にしてますから」

「まさかそんなことが出来るなんて、思わないでしょう」

「さすがにあの物凄い音をさせながら、進んで行くのは不味いと思いまして」

「あら、エリアス君でも、そんなことを考えることがあるのね?」

「どういう意味ですか?」

「冗談よ、冗談」


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 私はアバンス商会のアイザック。

 馬車の前ではエリアス様とアリッサ様が、仲良さそうに話している声が聞こえる。

 しかしエリアス様は、不思議な青年だ。


 昨晩、ログハウスのリビングでみんなで雑魚寝をした。

 濃厚クリームシチューの特許を商人ギルドに申請すれば、それだけで使用料が入ることを話した。

 すると答えは、そうなんですか。

 それだけだった。


 美味しい食べ物があれば人は工夫して、更に美味しいものを作ろうとします。

 その食事に使用料という、制限を付けてしまうと世の中に普及しません。

 美味しい物を食べたいので、料理に関しては無償でも良いと思っています。

 そして消費が進めは雇用促進に繋がり、お金が動き経済が回りますから、と。


 驚いた。

 なぜそんなことを知っているのだろう?

 経済を回すなどと言う考えは、高等教育を受けた貴族の考え方だ。


 それを伺うとエリアス様はただ、微笑むだけだった。


 そして料理や調理方法は、まだたくさんあると言っていた。

 それを聞いたアリッサ様から、諫められていた。


 無償で教えてもそれを悪用して、特許を取られたりすることもあるから。

 僅かな額でも良いから、特許の使用料を取るように言われていた。



 しかもこの道はどうだ?

 私は馬車の前の窓から前方を見ている。

 左右の木々や地面がひしゃげたと思うと、一瞬で道が広がり整備されていく。

 マジック・バッグで、こんなことができる訳がない。

 これはもう異質な魔法だ。

 そしてそこには触れてはいけない。

 

 当初は魔道具職人としての、彼に国が保護しているのかと思っていた。

 だかそれは違うということがわかった。

『道路整備』というこの魔法は、完全に破壊魔法だからだ。

 この魔法にかかったら、どうなるのか予想もつかない。

 そして考えたくもないくらい恐ろしい。


 だから彼に国はこれほどまでのことをするのか?

 広い敷地と公爵以上の宮殿のような屋敷を与える。

 しかし彼をこの国に縛り付けるには弱い。

 屋敷だけでは彼は満足しないかもしれない。


 次に国は権力を与えるだろう。

 爵位を与え国王の縁戚関係の女性をあてがい、この国に根付いてもらう。

 もし彼が他国に行ったら、その脅威に怯えることになる。


 そんなことは絶対に避けようと、国は色んな手を使うだろう。

 だがエリアス様は、何かをどん欲に欲するようには見えない。

 まるで今が現実ではない様な目をしている時がある。

 どうしてだろうか?


◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆  ◇


 同じペースで1本道を進んでいれば、前を行くグループに遭遇することは無い。

 だがその歩みを前が止めれば、後続は出会う事になる。

 こんな風に…。


 前方には高貴な人を載せるような馬車が3台停まっていた。

 中央の馬車が右側に横転したようだ。


 周りには護衛の騎士が14人くらいとメイドさん達。

 貴族の思われる30歳前後の男性と女性。

 そして10~12歳くらいの少女が立っている。


 護衛の騎士達が力を合わせ、それを起こしはじめた。


 そして馬車が起こされる。


 これでやっと通れる。

 そう思った時だった。


 起こしたはずの馬車が再び横に倒れた。

 遠目で分からないが、どうやら車輪を止める車軸が折れてしまったらしい。




 こちらも馬車があるため、2台同時に通れる広さがない。

 俺達も前の馬車が行かないと進めない。

 

「アリッサさん、どうしますか?」

「そうね、横を通り抜けるには道幅が狭いわね」

「『道路整備』で横道を広げて通り抜けますか?」

「それだと、さすがに驚かれるわ。整備は他に目撃者が居ないから許しているのに」

「なら消しますか、姉御!!」

「誰が姉御よ!!」


 このまま道のど真ん中に、馬車を置かれても後の人が困るだろう。

 それが分かったのか、騎士の人達で馬車を道の横に寄せようとしている。

 でも思う様に行かないらしい。

 仕方がない。


 俺は貴族の馬車の方に向って歩いた。

「エリアス君、どうしたの」

 アリッサさんがそう言いながら、俺の後を付いてくる。

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