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第58話 ボタン

 みんなで3階に集まっている。


「ここです。どうそ!!」

 俺は休憩所とレストランになっている3階の明りを点けた。


「わあ~!!」

「凄いな、ここは」

 そんな感想が聞こえる。

 休憩所の憩い処(いこいどころ)には、リクライニングシートを設置している。


「みなさん、すみませんが今夜はリクライニングシートで寝て頂きます」


「「「 リクライニングシート?! 」」」


「この椅子に座り横のレバーを引くと、背もたれを後方に傾斜できる椅子です」

「ほう、これは凄い。ベットになるのか?!」

 商業ギルドのアレックさんが、目を輝かせている。


 

「それからみなさん、これをどうそ」

 そう言いながら今、ストレージの中の『創生魔法』で創ったパジャマを出した。

 そして1人ずつ手渡していく。



「わっ!これは、なんなのエリアス君?」

 『餓狼猫のミーニャ』のエメリナさんが聞いてくる。


「綿で創ったパジャマ(寝間着)ですよ。普段着のまま寝るのも寝づらいでしょう」

「え、えぇ、そうね…」

 冒険者の彼女達は普段着でそのまま寝る事もあり、パジャマがピンとこなかった。

 そして1人ずつ渡していく。


「それに綿は吸湿性があって肌触りも良いですから。パジャマに最適です」

「これはどうやって着るの?」

 オルガさんが聞いてくる。

「まず下はズボン形式です。履いたら腰のところで紐で止めてください。オルガさんやエメリナさん達のように尻尾がある方は、後ろにやや切込みがありそこに紐が付いているので尻尾の上で一度縛ってください」

「わかったわ」

「そして上着はボタン形式です」


「「「 ボタン?! 」」」


「この丸いのもがボタンです。そしてこの穴に入れて服を止めることが出来ます」

「ほう、これは」

 商業ギルドのアレックさんが感心したように反応する。


 上着は普通の前止めのパジャマで、色は。男は青、女性はピンクだ。

 森で採れた青とピンクの花びらで染色液を作って染めてある。

「まあ、かわいい!!」

 女性達が嬉しそうに、はしゃいでいる。


「こうして袖を通して、前でボタンを留めます」

 俺は簡単に説明をした。


「ねえ、どうしてコルネールさんだけパジャマが違うの?」

『餓狼猫のミーニャ』のマルガさんが聞いてくる。

 コルネールさんは幻術でごまかしているが、ラミアなので長い胴しかない。

 それなので彼女だけ上から被る、ムームーパジャマにしたんだ。


「やっぱり、もう……だからよ」

「きゃっ、やっぱりあの時…たのね」

『餓狼猫のミーニャ』の3人娘は好きな事を言っている。


「馬鹿な事を言わないの。今夜のことは内緒ですからね!!」

「「「 は~い!! 」」」

 アリッサさんに3人は注意をされていた。




「これは特許を取っていたかな?」

 アレックさんが聞いてくる。


「えっ特許?取ってません」

「それは勿体ない!特許を取っておけば、誰かが使うたびに使用料が入ってくるぞ」

「そうなんですか」

「それにこれは画期的な発想です!!」

 ノエルさんも食いついてくる。

「どんな風にでしょうか?」

「従来の服だとサイズは大きめに作り、上から被り前や後ろで紐を締めて調整します。貴族などの高貴な方はスタイルをよく見せるために、後ろから紐で締め付けなくてはなりません。ですがこのボタン式であれば、生地も無駄にならず一人で着替えることが出来るのです」


 ノエルさんの説明によるとこの世界の服は上から被る。

 だからサイズも大きめのものが多い。

 そのため兄弟で着回したり、程度が良ければ古着屋にも売れる。

 その反面、消費が少ないので服が売れず、服屋になり手が少ないのが現状だ。


 だがおしゃれが出来れば話は別だ。

 おしゃれに敏感な貴族の女性は、お金を惜しまない。

 自分のサイズに合う着やすい、服を作ることができるのだ。


 その分、貴族がお抱えの侍女は主人の着替えを手伝う必要がなくなり、仕事が減るかもしれないけど。

 だけど需要が多そうなものは、流行る可能性があると言うのだ。


「そうですね。普段着も前と袖もボタンで留めるのもいいですね」

「色んなバリエーションの服が出来そうですね、うふふ」

「わかりました。明日納品の際に一緒にボタン形式の特許を申請します」

「そうした方が良いわ、エリアス様」

 ノエルさんがなぜか艶っぽく話しかけてくる。

 ど、どうしたんだろう?




「エリアス様、このボタンの素材はなんでしょうか?」

 アバンス商会のアイザックさんが聞いてくる。


 この世界にはプラスチックがない。

 なぜなら石油が見つかっていないからだ。

 あれば生活が向上するだろうけど、いずれは環境問題が出てくるだろうな。


 ボタンの元はストレージ内の『創生魔法』で創ってできた廃材だ。

 今までは『ゴミ箱』に捨てていたが、加工して使うことを思いついたんだ。


「あぁ、それはこの屋敷を創った時にでた鉱物の廃材です」

 そう言って俺はストレージから、大きさの違う色とりどりのボタンを出した。


「こんなに色のバリエーションがあるんですね」

「えぇ、まあ」

 廃材だから黒っぽいものから明るい色、貝のような波模様のものもある。


「まあ、奇麗…」

 それを見た商業ギルドのノエルさんが呟く。

「いりますか?」

 俺はつい、言ってしまった。

 まさかボタンを欲しがるとも思えなかったので…。


「頂けるのでしょうか?」

 ノエルさんは目を潤ませ、俺を見つめてくる。

「お好きなボタンをどうぞ…」

 そう言って俺はテーブルの上にボタンをいくつか出した。


 すると冒険者ギルドのコルネールさん、Dランクパーティ『餓狼猫のミーニャ』3人娘、商業ギルドのアレックさん、アバンス商会アイザックさんと、そのお供の2人も集まってボタンを選んでいる。

「私はこれ!!」

「ちょっと、私が欲しかったのに~」

「私はこれにします」

 みんなそれぞれに選んでいる。


 ふと目の隅にアリッサさんが映り、こちらを見て疲れたような顔をした。

 オルガさんがその肩を叩き、『ドンマイ』的なことを言っているように見える。

 いったい何があったのだろう?



 そして俺達は男女に分かれて、リクライニングシートに座る。

 7月近いと言っても夜は気温も下がる。


「みなさん、これを掛けて寝てください」

 俺は『創生魔法』で創った綿のタオルケットを12枚出して渡した。

 みんな驚いた顔をしたが、もう何も言わなくなってきた。


 そうだよな、もう夜は遅いし、みんな眠いよね。

 いつもならみんな寝て居ても、おかしくない時間だから。


 そしてアリッサさんを見るとまた、オルガさんに『ドンマイ』をされている。

 俺の知らないところで、アリッサさんに何があったんだろう?





 商業ギルドギルドマスター、アレックは思う。

 ノエルよ、ついに男に目覚めたか。

 このまま仕事に没頭し、終わってしまうのではないかと私は危惧していたが…、

 相手は将来有望だ。

 彼はこのアレン領では、収まらない器だ。


 それにエリアス君の輿は、まだまだ空がありそうだ。

 しかも事実上の奥さんのオルガさんが寛容で、他の女性にやきもちを焼かない。

 むしろ公認しているようだ。

 英雄色を好むと言うが、それを分かっている。


 頑張れノエル、玉の輿を目指して。

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