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第40話 結婚指輪

 俺とオルガさんはアリッサさんと別れ、泊っている宿屋『なごみ亭』に戻った。

「お帰り~エリアスお兄ちゃん、オルガお姉ちゃん」

 『なごみ亭』の看板娘、アンナちゃんが迎えてくれる。


「2人とも、お帰りなさい」

 奥さんのサリーさんも一緒だ。


「実はサリーさん。俺達、明日からここを出て行こうと思うんです」

「それは突然ね。依頼でどこかに行くのかしら?」


「4日後に王都に指名依頼で行きます。それまで居ようと思っていたのですが」

「まあ、それならいればいいのに」


「実は家を買いまして」

「家を?凄いわね、その若さで」


「その分、借金まみれですけどね」

「返せればいいのよ。借金も財産のうち、て言うでしょう」


「エリアスお兄ちゃん、もうここにいないの?寂しいな…」

「大丈夫だよアンナちゃん。住む家はここから近いからご飯を食べに来るからね」

「そんなに近いの?」

「ここから数軒先にあった古い屋敷跡です」


「え?!最近、突然建ったと言う、あの宮殿のような家のこと?」

「え、えぇ、宮殿かは分かりませんが…」

「凄いわ、エリアス君。見かけによらず甲斐性があるのね、羨ましいわ」

「おい、何の騒ぎだ?」

 奥からビリーさんが出て来た。


「エリアス君達が明日、ここを出ていくんだって」

「なんだ、仕事でどこかに遠征かい?」


「実は4日後に王都に指名依頼で行きます。それまでは家を購入したので、そこに住もうかと思いまして…」

「あなた聞いて!エリアス君達の家は、宮殿みたいだって噂のあの豪邸よ!!」

「な、なんだと!!あんな屋敷を買ったのか?!」


「でも分割ですから」

「俺なんて分割でも買えんわい!!」

「良い人を見つけたわね、オルガさん。お幸せにね」

 そう言ってサリーさんは、オルガさんの手を取る。


「ありがとうございます、サリーさん。私幸せになりますから」

「でもエリアス君はニブそうだし、周りがほっとかないから気を付けてね」


「オルガお姉ちゃん凄い!!私もこの前、あのお屋敷の前を通ったけど凄かった」

「今度、遊びにおいでね」

「うん、私もオルガお姉ちゃんみたいに、結婚の証にお屋敷を買ってくれるような経済力のある男の人を見つけるわ!!」


 待てよ?

 男女が家を買い一緒に住む。

 これをなんと言うのか?


 自分を見てくれる人が居て、相手を大切に思う。

 異世界に転移し1ヵ月も経っていないのに、相手が出来て家を買い結婚だなんて。

 なんて恵まれた環境なんだ。

 


 これも女神ゼクシーのおかげだ。

 良い出会いを生活の場をありがとう。

 そう言えば1度、礼拝に行ったきりであれから行ってないな。

 王都に行く前にオルガさんを連れて、礼拝堂に顔見せに行こう。

 仮にも『母さん』と呼ぶんだ。

 女神は俺が1人だと寂しいと思い、親子ごっこに付き合ってくれているのだから。

 

「王都まで行くならしばらく帰ってこないな。それなら『味元あじげん』を5個。売ってくれないか?」

「分かりました、ビルさん」

「早く店頭で売ってほしいもんだぜ」

「そうなればいいんですけどね」



 俺達はそんなことを話して、自分の部屋に戻ってきた。

 結婚か…。

 そうだ、結婚といえばこれだ!!


 俺はベッドの上に腰かけた。

「オルガさん、ここに座って」

「なあにエリアス」

「左手を出してもらえますか」

「左手をどうするの?」

「いいから」


 オルガさんはそう言いながら、俺に左手を出した。

 鑑定で指のサイズを測る。


「なにをするの?」

「まあ、見ていてください」


 空中にストレージの『創生魔法』作成画面を出す。

 岩山から収納した鉱物の中にミスリルがあった。

 それを加工して、と。

 そして鉱物の中からダイヤを抽出して。


 俺はなにもない空間をタップして、ストレージの中で『創生魔法』を使い指輪を加工している。

 オルガさんは俺が何かをしているのが、分かっているのでただ眺めている。



 ストレージ内で指輪を2つ創った。

 俺のは平打ちのシンプルな指輪。


 そしてオルガさんの指輪は邪魔にならない様に、小さいダイヤをラウンドブリリアントカットと呼ばれる58面体にカットし、それを6個横に並べたデザインにした。

 婚約指輪は無いので、少しは豪華にと思ったんだ。


 俺はストレージから指輪を2つ出した。

「左手を出してください」

 俺はそう言うとオルガさんは、言われたままに左手を出した。

 そして指輪を薬指にはめる。


「まあ、奇麗。この指輪はダイヤなの?」


「えぇ、そうです。台座はミスリルを加工して作りました」


〈〈〈 えっ、ミスリルにダイヤ?! 〉〉〉


「これをお互いの左手の薬指にはめます。オルガさん、俺の薬指にはめてください」

 オルガさんはその雰囲気が分かったのだろう、厳かに俺の指にはめてくれた。


「これはどう言う…」


「結婚指輪です」

「結婚指輪?」


「俺の両親が生まれた国の習慣で結婚の際には、お互いの左手の薬指に指輪をはめるのです」

「それは、どういった理由で?」


「左手薬指の血管が心臓に繋がっていて、結婚を神へと誓うと言う意味があります」

「まあ、そんな素敵な考え方を?!」


「それにお互いに指輪をはめることで、常に結婚への覚悟ができるという訳です」

「素敵な習慣があるんだね」

 大げさだな、でも喜んでくれるのは嬉しいものだ。


「愛しています、オルガさん。これからも俺の側に居てください」

 俺は普段から思っていても、今まで口に出せなかったことを初めて言った。



 そしてオルガさんはうつむいたまま、何も言わなくなった。

 しばらくするとオルガさんの手を、濡らすものが落ちて来た。


 俺はそっとオルガさんを抱き寄せた。

「嬉しい…」

 オルガさんは俺の腕の中で、とても小さな声で呟いた。


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