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第32話 黒作大刀

 俺は商業ギルドを出た後、その足で武器屋に向かった。

 もうそろそろ頼んでおいた剣が、出来ている頃だと思う。


 ドアを開けブルーノさんを呼んだ。

「ブルーノさん、いますか?ブルーノさん」

「そんなに大きな声を出さなくても聞こえてるさ」


「剣がそろそろできた頃かと思いまして」

「丁度、できているぞ。ほれ、そこにある」

 

 台の上には、1.5mはある長剣、いいや大剣が横たわっていた。

「打ち上げるのが大変だったぜ!」

 そう言いながら作り上げた満足感からか、ブルーノさんは笑った。


 俺は剣の柄を握り持上げる。

 刀身が赤黒く光っている。

 なんて綺麗な剣なんだ。


「ヒヒイロカネを混ぜたら、なぜかそんな色になってな」


「綺麗な剣です。まるで黒作大刀くろづくりのたち

「黒作大刀か。ぴったりな名前だな」

「こんな素敵な剣を、ありがとうございました」

「裏庭で少し振ってみろ。バランスを見たいからな」

「わかりました」

 俺はブルーノさんから、剣が出来るまで借りていたクレイモアを返した。


 シュン!!シュン!!シュン!!シュン!!


 俺は言われた通り、裏庭に出て剣を振った。

「丁度いいバランスです。とても持ちやすく振りやすい」

 片手でも両手でも扱えるように、柄の長さを2握りから1.5握りくらいにしている。


「そんなことを言うのはエリアスくらいなものだ。なんせ両手剣の材料で片手剣を作り、それを振っているんだからな。そんな軽々しく剣を振るうお前の筋力はどうなっているんだ?」

「あははは、どうと言われても」


「まあ、何かあったらこいよ。定期的に剣の手入れも必要だからな」

「はい、それからミスリルや、ヒヒイロカネのような鉱物は俺でも買えますか?」

「買えないことは無いが、いったいどうするんだい?」


「少し、考えていることがありまして…」

「考えていること?いったいなんだ?」

「それは言えませんよ~」

「そうか、エリアスは鍛冶屋ではないから、鍛冶組合に入っていないから手に入れることはできないな。俺経由で良ければ、売ってやろう」

「ありがとうございます。でも武器にできる鉱物て、どんな種類があるんですか?」

「鉱物か、そんな事も知らないのに欲しいと言うのか」

「はい、すみません…」



「なら、教えてやろう。まずミスリルだ。魔力をよく伝導するので、魔法剣などに使える。アダマンタイトは非常に重く硬い。魔法を通しにくいのが特徴だ。オリハルコンはミスリル以上に魔法を通し、アダマンタイト並に硬い。まあミスリルやアダマンタイトの上位鉱物と言うところだ。緋緋色金ヒヒイロカネは名前の通り赤い金属で、高い熱伝導性を持ち硬い金属だ。オリハルコンと同格だが、剣士が炎系の魔法を付与できるなら迷わずこちらだ。まあ、こんなところだな」


「ありがとうございました。一番安いのはどれでしょうか?」

「金額的にはミスリルだな。次はアダマンタイト、オリハルコンまたは緋緋色金ヒヒイロカネの順だな」


「ミスリルで剣1本作れるくらいの材料だと、おいくらぐらいでしょうか?」

「それを言ったら原価が分かっちまうだろうが。まあ、いいか。ミスリルで200万くらいだ。そしてアダマンタイト、オリハルコンになると倍の倍だ」


「そ、そんなにするのですか!!」

「滅多にとれない鉱物だからな、高いんだよ。いくら金を積んでも、無いときは手に入らないからね」


「そんな高価なヒヒイロカネを交ぜた剣を、俺は10万で作ってもらえるなんて!」

「良いってことよ。試験的に作ったようなものだからな」

「では、頂いて行きます」

「おう、またこいよ!」


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 俺は武器屋から出て宿屋に戻った。


「お帰り~、エリアスお兄ちゃん。オルガお姉ちゃんは、もう部屋に戻ってるよ」

 この宿屋の一人娘アンナちゃん10歳だ。


 あれから俺達2人は相部屋に移った。

 あの後、オルガさんに部屋は別々と言うのも無駄だから、と言われたからだ。


「ただいま!」

「お帰り!」


 俺は部屋に入った。


「どこに行ってたのエリアス」

 いつの間にか気づいたら、オルガさんは俺のことは呼び捨てにしていた。

「商業ギルドに『味元あじげん』を納入して、武器屋に行って剣を取りに行って来たんだ」

「そうだったのね。私にも剣を見せてよ」

「いいよ」

 そういうと俺はストレージから、黒作大刀くろづくりのたちを出して見せた。

「凄いわね、私のバスターソードも長剣だけど、さすがにここまでは長くないわ」


 それはそうだ。

 黒作大刀くろづくりのたちは、全長150cmある。

 俺の身長は172~3cmくらい。

 自分の身長に近い剣など、普通は移動や重さを考えると作らない。

 それに鞘に入れてもすぐに抜けないから、戦う準備に時間が掛かり不便だ。

 でも俺のストレージなら、鞘代わりとなり移動にも支障はない。


「ちょっと、持たせてもらってもいいかしら?」

「どうぞ!」

 俺は片手で持った剣をオルガさんに渡した。


 えっ?!


 ゴトッ!!


 俺と同じように片手で剣を受け取ろうとしたオルガさんは、危うく落としそうになった。


「エリアス、よくこんな重い剣を持てるわね」

「えぇ、力はあるみたいで、テヘ?」

「テヘじゃないわよ。獣人の私が重いと思うのよ。本当にエリアスは人族なの?」

「そんなことを言われても」


 俺にもわかっていた。

 転移してきた当初に比べると、ステータスが全体的に上がっているのだ。


 この世界に体が馴染んできて、本来の能力に目覚めたような感じがする。

 とにかく体力が有り余って仕方ない。


 夕方なので宿屋の食堂に行き、夕食を食べる。

『なごみ亭』は食堂も兼ねており、食事だけでも食べられるところだ。


 そして最近は『味元あじげん』のおかげで人がたくさん来るようになったそうだ。

 店も賑わい席も空いていないことが多くなった。

 これも『味元あじげん』のおかげさ、とビルさんは喜んでいた。


 そして『味元あじげん』は店頭で販売が始まるまでは、俺が店頭価格と同じ金額でビルさんに売ることを約束している。


 俺達は夕食を食べ終わり、部屋に戻った。

 この世界はTVやPCもなく、夜はする事が無い。

 若い男女が部屋に2人いれば、することは1つ…。


 


 あぁ~~~~ん!!

 もう駄目~。

 獣人である私の方が先に音を上げるなんて。


 もうエリアスの体力に、付いて行けないわ~。

 いったい、どうなっているのかしら?


 私、1人ではもう体が持たない…。

 誰か探さないと。

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