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第28話 部屋

 俺は誰かに肩を揺すぶられていた。


 我に返ってみるとオルガさんが、目に涙を溜めて俺の両肩を掴んでいた。


「どうしたんですか?オルガさん」

「どうしたじゃないわよ、いきなり何かブツブツ言い始めたと思ったら、何もない空間を指で叩いて。そしたら屋敷が突然できて、裏庭の方も土が盛り上がったかと思ったら平らになって。何がどうなっているの?」


 見られたか。

 ついオルガさんだと、警戒心が無くなってしまう。

 それに気が付くといつも俺の側にいるから、気にしなくなってたんだ。

 言うしかないな。


「これは俺のスキルです」

「スキル?これが」

「そうです、創生魔法と言って自分の望んだものが創れます」

「えっ、望んだものが創れる?」

「ただし材料がないと創れませんけど」

「それじゃあ、森に行って木や岩や土を、たくさんマジック・バッグに収納していたでしょう?このためだったのね」

「ええ、そうです。中に入ってみましょうか」


 俺達はドアを開け屋敷の中に入った。


 三階建ての西洋館。

 正面を入ると中は大きな階段があり、左右はフロアに。

 一階はホール、大階段、食堂、客間、台所、洗濯場、風呂場。

 二階、三階は部屋が七部屋ずつあり、各階にもトイレが付いている。

 地下には貯蔵庫。


 トイレは水洗、台所には魔道コンロ。

 一階のお風呂場、台所や洗濯場、各階にある洗面所にも水道の蛇口が付いている。

 蛇口は混合栓にし『水』と『火』 の魔石を入れ、お湯が出るようになっている。

 照明は全て魔道具で『ライト』の魔法を付与されている。

 そして屋敷の魔道具の魔力は屋根に『魔素吸収パネル』を設置し、大気中にある魔素を吸収していることを説明。

 氷と風の術式を付与し冷蔵庫もある事を話したら、オルガさんは声も出なくなっていた。


「す、凄いわ。まるでお城みたい。それにこんな豪華な設備は、王都でもないかもしれないわ」

「そうですか?それから毎日、お風呂に入って綺麗にしてくださいね」

「毎日お風呂に入れるの?」

「はい、衛生面でちゃんとしないと病気になりますから」

 この世界では細菌の概念がないからね。

 地球でも3秒間なら、落としても大丈夫と言うルールはあったけど。


 それから三階に上がった。

 

「俺の部屋はここにしますが、オルガさんはどこにしますか?」

「えっ、私も良いの?」

「もちろんですよ、仲間ですから。それに宿屋だとお金かかりますから」

「そ、そうね。それならエリアス君の隣の部屋が良いわ」

「わかりました。それから食事も簡単なものなら、俺も作れますから」

「凄いわ、エリアス君」

「そんなことないですよ。戦闘に役立ことは何も出来なくて、こんなことしか出来ません。これからどうやって、生きて行こうかと思うくらいですから」

「い、いや~、それだけ出来れば十分だと思うよ」




★オルガ目線

 私は思った。

 エリアス君はどうやら、自分に自信が無いらしい。

 そうだよね、世間知らずで15歳。

 自分がどこまで、できるかも分からない。


 でも戦闘は出来なくてもこれだけできたら…。

 冒険者を基準に生活を考えていることが、私には分からないけど。





「王都への依頼で1週間後にはこの街を出ますから、それまでは『なごみ亭』に泊まりましょうか。そして王都から戻ってきたら、この屋敷に住みましょう」

「そ、そうね。でもこの広い屋敷に2人きりなのね」

「まあ、その内、人(仲間)も増えると思いますから」

「えっ?!そ、そうね。頑張るわ…私…」

 さ、さすがに獣人が子沢山と言っても14部屋以上ある、この屋敷の部屋を埋めるほど子供は産めないかな~。

 エリアス君で子供がポン、ポン産めるとでも思っているのかしら?

 世間知らずだから、そんなことも知らないのかもね。

 そこから始めるのか…。

 お姉さん頑張るわ~。





「ちょっと疲れました。宿に帰って少し休みたいのですが」

「そうね、屋敷を作るほど、魔力を使ったんだもの疲れたよね」

「それから屋敷の合鍵です。どうぞ」

「あ、ありがとう」

「必要な物を揃えるにしても、鍵があれば俺が居ない時でも出入りできますからね」

 そう言うと、エリアス君は笑った。



 私はエリアス君と、宿の『なごみ亭』に戻るために歩いている。

 エリアス君が、とても眠そうだ。

 そうね、お屋敷を作れるほど魔力を使ったんだもの。

 でも魔法で家は作れたかしら?

 魔法のことはあまり詳しくないから分からないけど。



 えっ?待って。

 仮に魔法でお屋敷ができるとしても…。

 あんな宮殿みたいな建物が、作れるほど魔力があるということ?

 私も多少は剣に魔法を乗せて戦うことは出来るけど。

 あそこまで巨大な物は無理ね。


 エリアス君が簡単そうに言うから、つい簡単に思ってしまったけど。

 とてつもない逸材だわ、エリアス君は。





 私達は『なごみ亭』に戻って来た。

 その頃にはエリアス君は、もう歩くのがやっとで。


 仕方がないから私が彼の部屋まで連れて行った。

 こう見えても虎猫族だから、人族よりは力はあるのよ。


 受付に居たアンナちゃんに、私とエリアス君の部屋の鍵をもらった。


 部屋に入り、ベッドに彼を横たえた。

 エリアス君の匂いがする。

 少し彼の匂いを嗅いでいた。

 だって虎猫族だから。

 獣人にとって匂いは大事。

 好きな人の匂いは嗅いでいたいものなの。


 エリアス君の可愛い顔を見ていたら、ふざけてみたくなった。

 彼の横に私も横たわった。

 しばらく彼の寝顔を見ていた。


 すると無意識なのがエリアス君の脚が、私の脚に絡まりホールドされた。

 そしていきなり私の尻尾の付け根を掴まれた。


 きゃ~!!


 力が抜けた。

 獣人は尻尾を掴まれると、力が抜けてしまう。


 エリアス君は、掴んだ尻尾を何度も、何度も前後に動かず。


 も、も、もうだめ~~!!





 あれ?

 オルガさんの顔が近い。

 これはいつもの幻想か?


『創生魔法』で屋敷を創っている時に俺を心配して、涙目になっていたオルガさんを思い出した。

 とても愛しいと思った。


『創生魔法』で何かを創っている時は、パソコン画面の様なものが空中に見える。

 それをタップして、作業をしている。

 きっと【スキル】高速思考で物事を考えているのだろう。

 はたから見たら目がどこかにイッテいるはずだ。



 そしてオルガさんの目が潤んで、とても可愛い。

 お目々クリクリだ。


 耳もなぜか垂れている。

 思わず耳を甘噛みしてみた。


 あぁ~~ん!!


 オルガさんの今まで聞いた声がない、声が聞こえた。


 その瞬間、俺は疲れと15歳の肉体年齢の欲求に負け理性が飛んだ。


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[一言] 朝ちゅんかな
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