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第188話 ハンドクリーム

 デリクさんの奥さん、ジェシカさんの荒れた手を見て思いついたことがある。

「デリクさん、植物オイルはありますか?」

「ございますが、いかほどでしょうか?」

「今のところはそれほど、量はいりません。後は底の浅い小さい木のカップがあれば、それも何個かほしいのです」

「分かりました。ただいま、ご用意いたします」

 デリクさんはそう言うと席を外した。


 しばらくするとデリクさんが戻ってきた。

 

「カップはこれでよろしいでしょうか?2個ございますが」

「はい、大丈夫です」

「これをどうされるのですか?」

「主に女性相手の商品を作ってみてはと思いまして」

「女性相手のですか?」

「えぇ、そうです。すみませんがそれを作るのに、台所を貸して頂けないでしょうか?」

「台所ですか、わかりました。こちらになります」

 そう言うと俺達4人は立ち上がり台所に向かう。



「では始めますね」

 そう言うと俺はストレージから鍋を出した。

 するとジェシカさんが驚いた顔をしていた。

 いきなり何もないところから、鍋を出されたら驚くよね。

 まあ念のためマジックバックと言い訳できるように、ポーチ近辺から出してはいるけど。


 鍋に生活魔法で水を入れストレージから薪を出し、それに火を付けお湯になるまで待つ。

 生活魔法で水を出し火を起こすと、更にデリクさんとジェシカさんは驚いた顔をした。

 お湯になったらストレージから、更に小さい鍋を出した。

 そしてここで登場するのが、蜜蝋(みつろう)だ。

 蜜蝋(みつろう)とは蜂の巣を構成する蝋《ろう》を精製したものだ。

 キラービーを何百匹も倒しシャンプーに使う蜂蜜を取った時の巣が、残っていたのを思いだした。


 お湯になった鍋に小さい鍋を入れ、火にかけながら湯せんをして蜜蝋(みつろう)を溶かす。

 湯せんとは材料を入れた鍋やボウルなどの容器を温めて、間接的に材料に熱を加える方法のことだ。

 そして蜜蝋(みつろう)が完全に溶けたら、2個のカップの中に植物オイルを入れる。


「後は固まるのを待つだけです」

「エリアス様、いったいこれは何をお作りになったのでしょうか?」

「はいデリクさん。これはハンドクリームといって、皮膚を保護し潤いを与えるものです」

「皮膚を保護し潤いを与えるのですか!」

「冬場はどうしても水仕事なので手が荒れます。そこで手を保湿するものがあればと思いまして」

「ほう、それはいいですな」

「使い方を兼ねてさっそく手に塗ってみます」


 俺はそう言うとクリームを手に取った。

 クリームは手の甲から塗ることが多いかもしれないが、手の平で温めてから塗ったほうが伸びがいい。

 しっかり手全体に伸ばすように塗るのがポイントだ。

 俺は指先にクリームを付け自分の手の平に取る。

 両手で軽くすり合わせ、手の平全体に行き渡らせながら温める。

 手の甲を優しく押さえ全体に馴染ませる。

 指の付け根から指先まで指1本1本を丁寧に握るように塗る。

 これでまんべんなく塗れたはずだ。


「さあ、やってみてください」

 デリクさん、ジェシカさん、エリザちゃんが俺の真似をして指先にクリームを手に付ける。


「あぁ、エリアス様。手のカサカサがしっとりします」

「これは凄い、手がスベスベです」


「これは良い!これなら女性が喜びそうだ。ところでエリアス様、先ほど入れた蝋《ろう》は何から採れた蝋《ろう》でしょうか?臭みがありませんから動物性の蝋《ろう》ではないと思いますが」


「えぇ、キラービーの蜜蝋です」


「ブッ!!蜜蝋ですと?!!」

 デリクさんが大きな声を出す。

 

「ほ、本当にありがとうございます、エリアス様。こんな高価な物を」

 ジェシカさんが俺に礼お言う。


 へ?

 高価?


 高価なのか?

 それなら駄目だ。

 意味がない。


 なぜなら庶民相手の商品だからだ。


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