第181話 ヅケ
海老をむき醤油を付けて、周りのお客さんと美味しさを堪能した。
勿論、各自の自己負担ですから。
「しかし、醤油を付けて食べると本当に美味しいな」
市場のおじさんがべた褒めだ。
「しかしジリヤ国の商業ギルドか…。このマジスカ領マンフレートは、ラードルフ国でも一番下の東にある町だから醤油が買えるかどうか」
おじさんがそう言うと、側に居た商人が聞こえたのかそれに答える。
「それなら私が扱っているから、今度持って来よう」
「おぉ、それはありがたい」
俺が売っても良いけど流通価格が分からない。
だから、あまり直接は売りたくなかったから助かった。
そい言えば赤身の魚が見当たらないな。
「すみません。赤身の魚は無いのでしょうか?」
「赤身は日持ちがしないからね。地元の人が食べる分しか捕らないのさ」
「そうですか。残念です…」
エリアス商会で冷蔵庫を販売しているがまだ一般的ではない。
冷蔵技術のない時代であり、そもそもマグロの赤身などは劣化が早い。
「そんなに食べたかったのかい?それなら少しあるから、分けてあげるから」
「ありがとうございます」
そうだ、醤油があるなら出来るはずだ。
俺は市場のおじさんからマグロのブロックを売ってもらった。
「赤身の魚も保存法はありますよ」
そう言うと俺はストレージから、まな板と包丁とボウルを出した。
「なにをされるのですか、エリアス様?」
「まあ、見ててよ。エリザちゃん」
そう言うと俺は昆布を購入し、マグロを切り身にした。
ボウルに醤油とワインを混ぜ、魚の切り身と昆布を交互に敷く。
酒が無いのでワインで代用だ。
10-15分ほど漬けておけば完成だ!!
「こ、これは?エリアス様」
「『ヅケ』と言う漬け方だよ。塩気の強い醤油へ漬けることで保存が効くんだ」
「そうなのですか」
「ほ、本当か?その醤油があれば『ヅケ』と言うのができるのか?」
市場のおじさんが食いついてくる。
「そうです。サンマやカツオ、アジなど大抵の魚はできます。臭みの強いものはショウガやニンニクを加えるのも良いですね」
「そんなに簡単に教えていいのか?それだけでも、うまくやれば商売になるのに」
「俺は商売をする気はありません。それに美味しい物を食べられればいいですから」
「さ、さすがは魔女様の従者様だ。人間が出来ている…」
「従者様??」
「さっきの商人から醤油を買って試してみるよ。ありがとう」
そう言うとおじさんは笑った。
買い物も済み門のところに向かう。
「帰るのかい?」
門番さんが聞いてくる。
「えぇ、買い物も済みましたから」
そう言って俺はポーチを、ポンポンと叩いて見せた。
「マジック・バッグは便利だな」
「すみませんが、この近郊の地図はありますか?」
「地図かい?」
「そうです。この町の位置を知りたいのです」
「ちょっと待ってろ。今持ってくるから」
そう言うと門番さんは待機小屋の入り、すぐに戻って来た。
地図が書いてある獣皮紙を広げ始める。
「この町マンフレートはここだな。それから…」
門番さんが地図を広げ説明してくれる。
分かったことは、ここはマジスカ領内にあるマンフレートという町だ。
そしてラードルフ国の一番下の東に位置する。
領主テーオドル・マジスカ公爵領は、ここから北西にあり、首都エーランドは更に5~6日くらい西に進んだところにあると言う。
「色々、ありがとうございました」
「こちらこそ、みんなが世話になった。感謝する」
「大袈裟ですね」
俺は微笑みながら、マンフレートを後にした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
俺達は一旦、セトラー国に戻ることにした。
門番さんから見せてもらった地図では、アスケルの森から一番近いのは港町のマンフレートがあるマジスカ領になる。
国交を結ぶならマジスカ領かな?
ラードルフ国の首都エーランドは離れすぎているからね。
今度マジスカ領に行ってみよう。
あぁ、それから弓隊の人達にも言っておかないと。
どうも彼らも自信が付いたのか、魔物を乱獲しすぎてしまったようだ。
いつか怪我をする前に、ほどほどにしておかないとね。




