第169話 二度目の秋 綿の収穫
秋になった。
春に植えた綿の収穫時期だ。
綿花と呼ばれる種子を包む白い『綿毛』それが綿だ。
作業をしているのはダークエルフや、シャルエル教会で派遣してくれた人達。
綿は花が咲いてから40~50日ではじけ、中から白いコットンボールが出来る。
これが収穫時期の目安。
割れた直後の実は水分を沢山含んでいる。
だからよく乾燥させないと、カビが生えてしまうから注意が必要だ。
綿は1年草だから収穫を終えた後は根こそぎ抜き取る。
これを『綿木引き』と呼ぶ。
根がしっかりと張っており、本数が多くなると重労働だ。
だから収穫時期から時間を空け冬場に行い、抜き取った綿木は十分に乾燥させてから畑で焼けば畑の肥料にもなる。
1つのコットンボールは3~5つの部屋に仕切られ、中に4~8つくらい種が入る。
しかも『綿』が種に絡みついている。
手で綺麗に種を取ろうとすると至難の技だ。
そこで棉繰機の出番だ。
棉繰機は綿の種を取る機械で、丸い木のローラーが2つ上下に付いている。
その間に綿を入れてハンドルを回すと、種だけが手前に残る仕組になっている。
収穫後、この作業をみんなで行う。
種と綿に分けたらアバンス紡績店に納品だ。
それが終わった頃に次の麦の種まきが始まる。
アバンス紡績店はすでに店と言うより、工場規模の大きさになっている。
シャルエル教工業団地の中に場所を移し、今まで働くところが無かった女性をたくさん雇っている。
それだけでも地域住民からは感謝されているとか。
生産も順調でアイザックさんは会う度に笑顔が絶えない。
王都にも支店を出し、黒猫の宅配便で稼いでいる。
エリアス商会の調味料や魔道具、グラスも黒猫の宅配便で運び商業ギルドの仕事も請け負っていると言う。
そしてもう1つカレーに使う調味料だ。
一年草が多く栽培するより、自然栽培を生かすことにした。
収穫はアスケルの森を知っているダークエルフの人達に頼めばいい。
カレー調味料も時々だが、他の領から要望も多く王都に卸している。
その内、宅配便も競合する商会が出てくるだろうけど。
最近知ったことだが俺が整地したジリヤ国王都と、アレン領を結ぶ整備した道路がコットンロードと呼ばれているらしい。
それだけお金が動くと言うことだろう。
ダークエルフのディオさん達は毎朝、鉱山で働く人達をアレン領まで蒸気機関車で送迎している。
製鉄して物を作り、手頃な値段で販売したところ飛ぶように売れる。
シャルエル製作所で製造した台所用品のフライパン・鍋・やかんだ。
工場も24時間でフル稼働し、交代制でも生産が間に合わなくなっていると言う。
俺は石炭を高温で利用できる、コークス製法の特許を取り有料で開示している。
まず石炭を約1000℃~1300℃の高温で加熱し乾かす。
すると硫黄やアンモニアなどの不純物が抜け、発熱の大きい燃料になる。
その結果、石炭に含まれる硫黄分が鉄を脆くすることを解消している。
これを使い鍛冶ギルドに石炭の売り込みも終わっている。
これで鍛冶ギルドが作るものは品質が上がっている。
火力も強く木炭代わりにお風呂を沸かしたり、ストーブを焚いたりもできる。
そして今では商業ギルドや商人に卸し、一般の人に使ってもらえるようになった。
それには掘り起こす炭鉱夫が必要になる。
炭鉱夫はアレン領で雇い蒸気機関車で送迎する。
安全は冒険者ギルドに依頼を出し、冒険者を雇い警護されながら仕事ができる。
そして給与も待遇もよく人が集まらない訳がなかった。
歩きでアスケルの森に来るのは5時間は掛かるからね。
それに魔物もいるから安全面を考えて送迎することに決まった。
ある日の午後だった。
妊娠をしていることが分かった。
いや俺じゃないよ。
1年くらい前にダークエルフのラルフさんと結婚をした、エリザちゃんの侍女ネリーさんが妊娠した。
先月から『つわり』が始まっている。
ネリーさんは煮物の臭いや湯気が不快になるようだ。
そのため、ミキサーを創り栄養補給に野菜ジュースを飲むように言ってある。
【スキル】世界の予備知識で調べたところ、妊娠5週目頃から始まり12~16週くらいまであるらしい。
今は9月だから出産は来年の7~8月くらいか。
これではエリザちゃんの侍女は無理だな。
俺の妻のオルガさんはそれを聞き、数より質なのか?と言っていた。
こら、エリザちゃん。
数に対して質の量はどのくらいだったの?なんて本人に聞かない!!
はい、そこっ!!
リアルに答えない!!
更に質問しない!!
エリザちゃんも今年で11歳になった。
国元から離れ1人で可哀そうだ。
だからエリザちゃんの実家のファイネン公爵から、代わりの侍女の手配をしてもらっている。
アレン領の『ラウンド・アップ』まで来てもらい、鉱山で働く人達の送迎のついでに一緒に開拓村まで来てもらう手はずになっている。
それまではエリザちゃんの世話は、今まで通りネリーさんがしている。
できれば今後のことを考えるとネリーさんも妊娠したから、来るのは子育て経験のある侍女がいいけど。
エリザちゃんは侍女の件でよほど心配なのだろう。
最近アバンス商会で始めた郵便を使い、何度も事前に実家と手紙のやり取りをしている。
郵便は送り先が有名な人なら、番地なんてなくても届けられるからね。
出産に関してはダークエルフの女性で、経験のある人が居るから心強い。
今後は街のように商店に来てもらい、人を集めるのが課題だな。




