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第137話 序曲

 俺は今、開拓村からアレン領に繋がる道を広げ鉄道を引いている。

 鉄道のレール幅は約1.5m。

 蒸気機関車の幅は3mはあるから、道幅は最低でも5mは開けている。

 

『創生魔法』を使い鉱物でレールを、伐採した樹木で枕木を創っておいた。

 手を前にかざし歩く速度に合わせ、目の前の土を収容する。

 そして排出時に枕木とレールを組み込み線路を引いていく。


 今、俺は炭鉱と鉱山の件で、アレン領に向かっている。

 そしてアレン領の街道まで出た。

 ここからは後で線路を引くから、ここまででいいだろう。

 今回は線路のみで、開拓村まで続く道も舗装は後で良いだろう。



 俺はストレージから自転車を出した。

 でもここで言う自転車は『ドライジーネ』と言われる木製自転車を改造した物だ。

 木製の乗り物でクランクやペダル、チェーンといった駆動装置はなく、足で直接地面を蹴って走る。

 前輪の向きを変えることができるハンドルと、前後同じ直径の二つの車輪を備えて

 馬車を作る技術があればできるだろう。

 二本足で地面を蹴って走る木製自転車だ。


 これで領間の移動が速くなるだろう。

 だがブレーキが無いから、いきなり止まれない。

 だから道場整備されていることが前提になる。


 もし普及したら街中で乗る時には、規制をかけないと駄目かな。

 でもそれはこれからのことだ。


 新しく技術を提供しシャルエル教教会の工房で、作ってもらえればと思っている。

 そうすれば雇用促進にも繋がるしね。


 今後は俺だけが創れてもそれでは意味がない。

 今の技術で出来る物からまずは挑戦だ。

 後で商業ギルドに特許を申請しておここう。





 自転車に乗り10分もかからずアレン領に着いた。

 道が整地されているから、走りやすい。


 入口に並ぶ商人たちが『なんだ、あれは?』という目をしている。

 ベルくらいは『創生魔法』で創って置こうか。

 商人ギルドの身分証を見せそのまま自転車で中に入る。


 チリンチリン!チリンチリン!


 俺はわざと目立つように自転車のベルを鳴らす。

「お母さん、あれはなあに?」

「分からないわ」

 他の通行人達も言う。


「これは自転車という新しい乗り物です。今度エリアス商会経由で販売されます!」

 俺は声を大きめに出して話した!!

「でも楽しそう、私も欲しい~」

「エリアス商会で売り出すのが楽しみだわ」


 俺のことをエリアス商会の社長だと知る人はいない。

 これは自転車の宣伝なんだ。

 娯楽の無い街では、ちょっとしたことが話題になるからね。


 そしてよく見るとその女の子は、キックボードに乗っていた。

 そして周りの大人も、何人かは移動手段にキックボードを使っていた。

 もう普及し始めているのか?




 俺はそのままエリアス商会に向かった。

 半年ぶりに来た商会は、見上げる様な建物になっていた。

 いったいここで何を作っているんだ?


 入り口に立っている駐在員に、社員証を見せ構内に自転車で入る。

 エリアス商会に着き店内に入ると、店員のエレーナさんがいた。

「まぁ、会長様。ようこそおいで下さいました」

 エレーナさんは満面の笑みを浮かべ俺を迎えてくれた。


「アルバンさんは居ますか?」

「はい、社長ですね。ただいまお呼び致しますから」

 そう言うと3階の客間に案内された。

 しばらくすると、アルバンさんが部屋に入ってきた。

「これはエリアス様。お久しぶりでございます」

「アルバンさんもお元気そうで、なによりです」

「はい、それはもう。商会も順調で毎日が忙しく過ぎていきます」

「あっ、それでは更に忙しくなるかもしれません」

「どういったことでしょうか?」


 俺は話し始めた。

 アスケル山脈に眠っていた、鉄、鋼、銀、銅、鉛を含んだ鉱山を掘り当てたこと。

 そして製鉄技術を使った物を作り販売することを話した。


「その一環として作ってほしいものがあるんです」

「どんなものでしょうか?」

 実際に見てもらうために、表に出てもらった。


「これです」

 そう言うと俺はストレージから自転車を出した。

「エリアス様、これは」

「自転車と言う乗り物です。見てください」

 そう俺は言うと自転車に乗ってみせた。


「ほう、なんと」

「これがあれば人が歩く2~3倍くらいの速さで、移動することが出来ます」

「そ、そんなにですか?」

「セトラー領まで歩いて5時間。この自転車があれば半分もかかりません」

「なんという速さですか!」

「ですが乗るのに少し慣れが必要です」

 脚力の強さもですが…。


「便利ですね。キックボードでも、移動手段が広がったと好評で生産が追い付かないのです」

「そんなにですか」

「売れてます。さらに自転車が加われば需要も増えるでしょう」

「ではお願いできますか?」

「はい、大司教ヨハネス様にお願いして、木工や鍛冶が出来る人を増やし工房を作ってもらいましょう。派遣雇用が3年経過したら、勤務評価によっては社員として雇ってもらえると評判になり希望者が殺到しておりまして…」


「それほどですか!ではこれも作って頂けますか」

 俺はストレージからフライパン、鍋、やかんを出した。

 貧困層の家庭には高価すぎて手が出ない台所用品だ。


「これもですか」

「えぇ、これから鉄は身近に溢れます」

「そんなに鉱物が取れそうなのでしょうか?」

「えぇ、40~50年。毎日、掘り続けても終わらないくらい出ますよ」

「それほどですか。今まで鉱物で加工したものは、高価で手が届きませんでした。ですがこれからは変わっていくのですね」

「エリアス商会が世の中を回していく、と言っても過言ではありません」

「世の中を回していく…」

「そして頂点に立ちましょうか」

「頂点に立つ…」


 アルバンさんは余りにも話が大きく、頭が付いてこないようだった。


 そしてアルバンさんは知らなかった。

 今までの話はあくまで序曲に過ぎない事を。




 さあ、ここからが本題だ。

「ではアルバンさん。これから本題にはいりますね」

「えっ、本題ですか?今までのお話しが、そうではないのでしょうか」

「いいえ。ここからが本題ですから」

 俺はストレージから、『創生魔法』で創ったバスターソードを5本だした。

「こ、これは。なんて綺麗な剣でしょう」


 俺は話し始めた。

 石炭という燃える石が出る地層を、アスケルの森で見つけたこと。


 木炭で出せる温度は低く、鉱物に鬆(す)が入り剣なら脆くなる。

 炭鉱から取れる石炭があれば木炭よりも高温になり、不純物の少ない鉄ができる。

 そして鉄の加工がしやすくなれば、色んな物が作れるようになる。


 更に石炭を高温で利用できるコークスという方法を話した。

 石炭を約1000℃~1300℃の高温で加熱し乾かす。

 すると硫黄やアンモニアなどの不純物が抜け、発熱の大きい燃料になる。

 石炭に含まれる硫黄分が鉄を脆くするが、コークス法を使うことによってそれが解消される事を。


 これを使い鍛冶ギルドに石炭を売り込むことを話した。

 石炭を使えばこのくらいのバスターソードなら、作れるようになる(と、思う)。

 そして鍛冶ギルドに石炭を売り、合わせてコークス製法の特許を取り情報も売る。

 これで鍛冶ギルドが作るものは品質が上り、価格も上がる事は間違いない。

 飛びつかない筈が無い。


 それだけではなく火力が強く木炭代わりにお風呂を沸かしたり、ストーブを焚いたりもできる事を話した。

 そして商業ギルドや商人に卸し、一般の人に使ってもらう。


 俺は鉱物、石炭をアスケル鉱山より発掘し、開拓村の特産品にする事。

 これが目標だと。


 そして俺はストレージから、開拓村とアレン領のジオラマを出した。


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