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第103話 斡旋ギルドとロゴの意味

 ニャオ~~~~ン!!


 朝になった。 

 オルガさんは昨夜、あんなに元気だったのに今朝は起きれないそうだ。

 なぜだ?


 昨晩、アルバンさんからメイドや執事を、斡旋してくれるギルドがあると聞いた。

 さっそく俺はアリッサさんを連れて向かった。




 商業ギルドの側に3階建ての木造の建物があった。

 ドアを開けて俺達は中に入った。


 するとモーニングコートを着た、40代の男の人が立っていた。

 

「いらっしゃませ、本日はどの様なご用件でしょうか?」

「繁華街のはずれで温泉施設をやっています。そこで人を雇いたいと思いまして」

「繁華街のはずれと申しますと、あの高い塀のお屋敷のことでしょうか」

「えぇ、そうです。ご存じですか」

「もちろんです。この界隈であのお屋敷のことを、知らない者はいないでしょう」

 そんなに有名なんだ…。


「さあ、こちらへどうぞ」

 そう言われ俺達は客室に通された。

 そして男の従業員と向き合いソファに座る。


「私はこの斡旋ギルドの副責任者をしておりますハンスです」

「俺はエリアス、そして妻のアリッサです」


「どのような人材をお探しでしょうか」

「受付から接客、全般業務です」

 俺は簡単に仕事内容を話した。


 施設の営業時間は9~15時までにした。

 だから勤務時間は少し早く来て片付けを考え8:30~15:30まで。

 昼休憩は1時間。

 門番が2人。1階の受付が3人。

 2階の娯楽施設で2人。

 3階の休憩所とレストランで3人。

 そして休館もしたいが、来る人が休みを知らないはずだから休めず交代制にする。

 だから従業員も交代制にするからプラス4人の14人だ。


 男女別々の浴室がある。

 働く側も男女半々にして、他の職場と兼務できる人が欲しいと伝えた。

 何かあった時は同性の方が入りやすい。


「では、どの程度のレベルの人がほしいのでしょうか」


 トン、トン、

 その時、ドアがノックされ50代のメイドさんがお茶を持って来た。

 そして俺達の前にカップを置いた。


 俺は話をつづけた。

「レベルですか」

「そうです。新人、中堅、ベテラン。後は若い人や逆に年配者なのかです」

「貴族の相手が出来れば年齢は問いません。それからどんな人が来るのか分かりませんから、適度に戦闘もできる人が良いですね」

「戦闘執事にメイドですか。それですと多少お高くなります」

「おいくら、でしょうか?」

「1日で執事が1万円、メイドが8,000円となります」

「差し支えなければ、本人達への入りはおいくらでしょうか」

「入りですか」

「そうです。こちらは高いお金を払っているのに、ギルドで抜いている金額が多ければ本人達にすれば、これしかもらっていないのに、となりますから」

「そ、それは」

「3割です」

 そこにはお茶を持って来たメイドさんが、まだ居て答えてくれた。


「では執事が7,000円、メイドが5,600円ですね」

「そうなります」

 ハンスさんが答える。


「では本人達にすれば、その金額は妥当だとうでしょうか?それとも安い?高い?」

「それは、どう言う…」

「妥当と思えば、それなりに。高いと思えば人は頑張れると思いまして」

「平均収入よりはどちらも高額だと思いますが…」

「では男女の賃金の違いは何でしょうか?」

「は?違いと言いますと」

「なぜ男女で賃金の差があるのでしょうか?肉体労働なら体力に差があるのは分かります。ですが接客なら変わらないと思います」

「女性より男性の方が賃金が高いのは昔からですから」

「同じことができるのに、女性の方が安いのは変だと言っているのです」

 エリアスの転移前の世界では、男女雇用機会均等法が施行されており違和感を感じたのだった。


「では男と同じ仕事ができると思ったら、女でも1万円払えるのかい?」

 いつの間にかお茶を持って来たメイドさんが、ハンスさんの隣に座っている。

「え?もちろんです。仕事は結果ですから」

「そうかい。それから獣人はどうだい?」

「獣人?」

「さっき話した金額は人族の場合の金額さ。獣人は更に安くなるけど」

「おいくらですか?」

「獣人は1日執事が8,000円、メイドが5,000円だよ」

「それでは手取りで執事が5,600円、メイドが3,500円にしかならない」

「それがこの国の格差社会さ。それでもあんたは獣人でも同じ金額で雇えるかい?」


「それでは俺の施設は女性が多いので男性が6人、女性が8人。それと人族と獣人を半分ずつの人数で」

「雇うと言うのかい?!貴族や富裕層相手の仕事に獣人を!!」

「えぇ、そうです」

「それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?」

「それならそれで、施設を閉めればいいだけですから」

 続けるのも面倒だからね。


「な、なぜ、獣人の為に、そこまでするんだい?!」

「俺のもう1人の妻が獣人だからです」

「なっ?!獣人が妻なのかい。そうかい、そうかい」

「そう言うあなたは、どなたですか?」

「私かい、挨拶が遅れたけどここのギルド長のアクアさ」

「俺はエリアス、妻のアリッサです。どうしてアクアさんが、ここに?」

「なあに、ここではあまり見ない年齢の客だからね。興味本位で覗いてみたんだよ」

「そうですか。候補は居そうですか?」

「もちろん、断るくらい希望者が集まりそうだね」


「では、希望者を募って明日、職場見学に来ませんか?」

「職場見学?だって」

「そうです。自分の働く職場を事前に、見学できれば安心でしょう?」

「それはそうだけど、面白いことを考えるね。しかも明日だなんて」

「えぇ、人手が足りなくて急いでいますから」

「わかったよ、声を掛けてみるよ。私も行っていいかい?」

「もちろんですよ」

「あの~、私も良いでしょうか?」

「あんたは駄目だよ、ハンス」

「どうしてでしょうか?」

「責任者が2人いなくなってどうするのさ?」

「そんな~。わ、わかりましたよ」

「情けない声をださないでおくれ。ではエリアス様、明日伺うから宜しく頼むよ」

「わかりました、お待ちしております」




 翌朝、斡旋ギルドのアクアは、希望者を募りメイドや執事を連れてやって来た。

 半数は獣人で残りの人族は異種族に偏見の無い人を選んだ。

 そして彼らは『ラウンド・アップ』の、立派な門構えを見て立ちすくむ。

 特に獣人の彼らは考える。

 私達がくるようなところではない、相応しくない場所だと。

 

 すると獣人の1人が入口の看板に気付いた。

 そこにはこう書いてあった。


『娯楽と遊びの施設、ラウンド・アップ。

 営業時間9~15時。

 紹介者不要、入館料お一人様5万円。

 手ぬぐい、タオルは持ち帰り可能。

 3階の休憩所にてお茶飲み放題とお菓子1品付き。

 なお施設内の従業員に対する暴言、暴力的な威嚇行為、理不尽な要求や言動には

 一切いっさい、応じておりません。

 状況により身分に関わらず、退出頂く事もございますのでご了承願います』


 入館料5万円?!


 そして看板の上には大きなロゴが書いてあった。

 円の下部にエリアス商会の文字と、左右を向く女性の横顔。

 正面右の女性は耳が頭部に付いている。

 ここには人族と獣人の従業員が居ると言う証。


 貴族や富裕層相手の商売で、この看板を出す店はない。

 異種族を見下す至上主義者が多い、貴族や富裕層相手の店で雇う訳が無かった。


 しかしこの施設では、堂々とそれを表に出している。

 このロゴがそうだ。

 人種や身分などの違いを越えて、人類は広く愛し合うべきであるとする考え。


 斡旋ギルドのアクアは昨日の会話を思い出す。

『それが原因でお客が、来なくなったらどうするんだい?』

『それならそれで、施設を閉めればいいだけですから』

 異種族の立場に立ち、本気でそんなことを思う奴がいるなんて。


 そして再び目をやる。


 人族と異種族の友好を示すかのように、下側でクロスした麦の穂が左右から上部に大きく伸びている。


 エリアス商会のロゴが入った看板だった。


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