嬉しいときには舌打ちが出てしまいます
「お前本当に駄目だな! お前は何にも出来ないし本当に使えないよ! お前に出来ることってなんだ?」
豊は物流会社で上司に怒られていた。微動だにせず言葉も発さず、ただ下を向いて。
「仕事が遅すぎ。商品の破損が多すぎ。あと数の間違いが多すぎ。それにやる気がないし、いいところが一つもない!」
「チッ」
「はぁっ? お前、なんだその態度は!」
豊は何事もなかったかのように平然と下を向いていた。一言も言葉を発することなく。
「おい、ちゃんと俺の目を見ろ! 下を向くな! 俺を見ろ!」
「チッ」
豊はゆっくりと顔を上げ、正面に顔を向けた。怒られているとは思えない表情で。
「何で怒られてるのに笑ってるんだ! ヘラヘラするな! 笑い声も出すな!」
「チッ」
甘やかされて育った豊はほとんど怒られたことがなかった。叱ってくる人に出逢ったことが一度もなかった。
「お前は動じなくてある意味天才だよ」
「チッ」