おっきな猫のゼンさん、お星様のカリカリを食べる
ゼンさんは、おにぎりを2つ食べると、少し落ち着いた。おにぎりには番茶だとおもい、給湯室から、お盆で番茶を2つ湯飲みに入れてきた。
会議室のドアを開けると、番茶の芳しい香りが広がると、ゼンさんは、ピンク色の鼻をピクピクさせた。
「番茶をいれてきてくれたんだね、ありがとう」
「熱いお茶なので、気をつけてくださいね」
テーブルに置くと、両手で抱えるようにして飲もうとしたが、すぐに、
「アチっ」
少し舌を出して、フゥフゥ言い出した。普段飲んでいるお茶と同じ温度だけれども、やはり、猫になると猫舌になるようだ。
それでも、早く飲みたいらしく、フーフーと息をかけている。
まだまだ待たなくてはいけないようなので、試しに買ってきた、ねこ用の星型のカリカリを置いてみた。すると、耳が、ピクンっと揺れて、目が丸くなった。
「それは、美味しそうなにおい。なになに?」
興味津々のゼンさんの前に、お皿に少し出した。
「クッキーとかポテチっぽいものです。」
ストレートに言うのもちょっとためらわれたのて、クッキーといったが、袋にはしっかり、猫の絵が描かれていて、ササミ味と書かれていたから、猫用だとゼンさんもわかった。
「なるほど、、、」
ゼンさんは、少しうつむいて腕を組んで考えていたが、口から少しヨダレが出ていた。
「ゼンさん、最初からこんなものを買ってきて、ごめんなさい。けれども、ちゃんと人が食べて確認した製品だってテレビでやっていたカリカリだから、もし、気になるなら、ね。」
ゼンさんの目が、少し細くなった。そのとき、ユウは一粒カリカリを手にとった。
「私が毒味しますからね」
カリカリを10秒見つめたあと、目をつむって、ぽいっと口に入れて、カリッとかんで飲み込んだ。
どんな味かなんて考えず、とにかく食べた。買ってきてすすめるいじょう、ちゃんと信用してもらわないと。
カリ、、カリカリ、カリカリ、
口の中にふんわりと、ササミの味がした。
「これ、コンソメの薄味だ。ササミの味がするから、意外と美味しい!」
ユウが食べるのをみて、ゼンさんは、あっという間にお皿に飛びついた。
え?ええ?突然野生的になるなんて!
「味がちょうどよくて美味しいよ♬」
さっきの警戒心は何処へやら、猫スマイルで大事そうに星型のカリカリを食べていた。
コトン、
カリカリの星がひとつ転がると、それを追いかけてじゃれ始めた。無邪気に追いかけて捕まえて食べようとする姿は、子供のようだった。
わたしは、ニヤケながら、おっきな猫のゼンさんと、お星様のカリカリのおっかけっこをながめ
ていると、それだけでお腹いっぱいになって、お昼休憩5分前まで、ご飯を食べるのを忘れてしまっていた。
急いでおにぎりを一個お腹に入れ、午後の仕事の準備をするため、会議室を出た。