猫のゼンさん、おにぎりを食べる
会議室に戻る途中、時折、ゼンさんが猫になった話が聞こえてきた。みんなに知られるのは必然だった。ゼンさんは、いつものように仕事していたから。
ゼンさんが、普通どおりに出勤しているのは、とてもすごいと思った。ある小説の主人公は部屋に閉じこもってしまったのに。
猫が仕事をする。
ゆるいキャラクターのぬいぐるみではなく、本物の大っきな猫のゼンさんが仕事する。
ゼンさんには悪いのだけれども、猫好きなわたしには、たまらない状況である。
早く会議室に戻ってお昼ご飯を食べよう。
軽い足取りで、部屋に入った。
「ゼンさん、ごはん買ってきましたよ」
眠い目をこすりながら、ゼンさんが起きた。丸まっていた姿から、椅子に腰掛けた。こうやってみると、意外と大きいなぁ。
おにぎりをテーブルに並べると、手にとって、器用に爪で引っ掛けて、パッケージをとって、はむっと口にほおばった。
「ああ、うまい〜〜。」
幸せそうに目を細める大きな猫は、ゆっくりと味わいながら、シャケのおにぎりを食べはじめた。
猫とおにぎり、意外と合うなぁ。ちっちゃくみえるおにぎりが、とても愛らしい。
「味はどうですか?塩加減はどうですか?」
「少ししょっぱいけど、気にならないよ。味覚は猫寄りなのかもね。」
そう言いながら、もう1つのおにぎりに手を伸ばしさ姿を見て、食事をしてくれることにホッとした。