猫アレルギーなのにモフモフ好き
猫アレルギーとわかったのは、数年前の、皮膚科での検査だった。
親戚で猫を飼い始め、その家にお祝い事があり家に遊びに行った時、猫を触った直後から涙がとまらくなったのだ。
昔は 子どもの頃に犬を飼っていたので、いままで気にしていなかった。飼っていたけれども、犬は抱いたりなでたりするのは好きだったが顔をなめられるのは苦手だった。
しかし、猫については、過去を思い返すと、猫は外で撫でたり抱くことしかしていなかった。たまに、野良猫を触ると、少し身体がかゆくなる時があったのだが、めったに触れないので気にもとめていなかった。
アトピーの治療で、皮膚のお医者さんのところで血液検査をすることになった時、ついでに調べてもらうことになった。ダニとカビは100%のレベル5。接触したら高確率で発症するのだが、たまに、新しいアレルギーが出ることもあるので、数年に一度、気になる項目を調べているのだ。
「ユウさん、アレルギーで、調べたい項目、好きに選んで良いよ」
と、言われ、その時は、猫と犬を試しに調べてみることにしたのだ。
案の定、犬はギリギリ陰性で、猫は陽性。
猫はレベルでいうと2で低いのだが、かゆみが出るので気をつけねばならない。
昔は犬好きだったが、動物を飼わなくなった今は猫好きだ。猫の毛のフワフワ感が好きなのだ。あのモフモフはたまらない。顔は埋められないけど、触るだけで楽しい猫。今日はハチワレさんが朝から来てくれてラッキーだった。もっとモフモフしたかったなぁ。
ああ、運転中だった。
つい猫のことを考えてしまった。
ゴミ箱に捨てたウェットティッシュの残骸を見ると現実に引き戻された。
猫を触ると幸せな気分になる。今日も仕事を頑張らなくては。職場では調査案件が待っている。上司がまた、叱責するんだろうなぁ。先輩のゼンさんと一緒にがんばらなくてはと、奮い立たせた。
ゼンさんは、2つ年上の先輩で、情報系では技術もあり頼れる存在で可愛がってもらうことが多い、優しい人だ。最近は営業先の対応にも行くから、残業続きだ。切れ長の目で、笑うとふんわりとした笑顔が爽やかで、ちょっと気に入ってるんだけど、そのことは、秘密だ。
車を地下の駐車場にとめてから、職場の階へエレベーターで向かう。今日は、珍しく誰にも会わない。いつもなら一階で先輩が乗り込んできて、少し喋りながら行くんだけど、いない。
ざんねん、と思いながら、職場の22階で降り、情報分析室の部屋に入った時だった。
「ボムッ!!」
眼前に広がる、白い影。何かに当たったようだ。あれ?なんだ??こんなところに、モフモフ?
「うーー、いたいにゃ、、」
先輩の声が聞こえてきたと思うと、デカイ猫が、振り返った。