第95話、コアラ子(いやだ…私はまだ)
書きあがりましたので投稿します!
それと読む前に注意っぽい事ですが、
序列者下位でも人体強化を少し高めると、
ド○ゴン○ールに出てくる『ヤ○チャ』くらいは強くなると思ってくれると嬉しいです!
他で例えるなら、
バイ○ハザードに現れる『タ○ラント』くらいと思ってくれれば嬉しいです!
曖昧な基準ですが、それぐらい頑丈で腕力があります!
どうかこれからもよろしくお願いします!
「…………狭いね……此処は」
「っ?第九位?」
「私達には……この場所は狭すぎるよ……ねぇ、そう思わない?──姫路詩織」
「っ…………へぇ、アナタ──」
──そんな瞳、出来たんだ。
「暇だなぁ…」
俺は何もせずに座っていた…
いや、状況について行けなかっただけだ…
「本当に…何がなんだか…」
詩織は言っていた。
鈴子に向かって『第九位』と呼んでいた。
聞き違いか、言い間違いかは分からない。
だから、改めて聞くしかない。
「鈴子が……いやいや……でも」
詩織が床に這い蹲された光景と、建物内に蹴り飛ばした事実。
あれらを起こした鈴子の姿が、完全に強者の姿に見えた。
「本当だったら……ヤバイ……のか?」
今まで自分は、頭をザクロ状態に出来る少女と一緒にいながら、注意と文句を繰り返していた。
相手がその気になったら、いつでも自分の命を奪えた。
「いやっ……やっぱり間違いだ……」
現実逃避をするしかない。
もし認めてしまったら、今までの過去に嘔吐を余儀なくされる。
今も喉まで何か込み上げるものがある。
「何か、気分を」
気持ちを切り替える何かが欲しい。
そう思って視界に入ったのは、榛名から買い取った武器である。
「……一発無くなってる?」
ケースに入っていた弾は一発のみ。
本来は二発入っていた筈だった。
だが、武器本体を確認して、その疑問はすぐに晴れる。
「少し汚れが……使ったのか」
眠っている間に鈴子が使ったのだと分かった。
「でも、何に使ったのかは今はいい」
それよりも今胸を締め付けている気分をどうにかしたい。
喉に胃酸が登ってくる感覚をどうにかしたい。
だから、今は何かを無理にでもしたい。
「問題ないだろ」
どうせ自分が持ってきた武器だ。
今回のイベントは鈴子が一人で全てやると言っていた。
だったら、俺が自分の武器をどう使おうと文句を言ってこない筈。
「打ち上げ花火と行こうか」
そう言いながら、俺はスティンガーミサイルを斜め上方向に向けて、太陽が照らす海上の奥を見た。
だが、それだけでは何か物足りない。
だったら歌でも歌いながら撃ってやろうと思った。
打ち上げ花火にピッタリな歌を、
「んん……き〜み〜が〜、いた〜──」
ッッッッッッ!!
「ッ──」
突然背後から空気を揺らす様な轟音が鳴り響いた。
そして見えたのは、建物の屋上から瓦礫と煙が舞い散った光景である。
「とおい〜ゆ〜め〜──」
状況について行けず、何故か口は止まらずに、記憶にあるフレーズを紡ぎ続けた。
そして見てしまう。
「そ〜ら〜に──」
空に打ち上がった一人の少女の姿。
その流れる様な茶色の長髪は見間違える事はない。
そして信じられなかった。
「きえて〜──」
姫路詩織がアッパーを受けた様な姿勢で吹き飛んでいたのだ。
「はなび〜……えぇ?」
ようやく状況に対する言葉が漏れ出る。
「詩織?」
三十メートルは飛んでいるであろう少女の姿に、瞼が大きく見開かれる。
ありえない。
だが、この光景を作り出せるとしたら、今いるのは一人しかいない。
そして煙が舞った屋上から、一人の影が空に飛び上がる。
「ッ!?鈴子」
その正体は想像していた一人だった。
鈴子は真っ直ぐと吹き飛んだ詩織に急接近し、空中で到着した瞬間に、
ゴォッと、
空気を破った音を鳴らせた右拳で、詩織の胴体を抉り落とした。
ッッッッッッ!!
そして再び屋上から煙と瓦礫が撒き散らされる。
その中に鈴子が飛び込み、更に連続した破壊音が鳴り響き続けた。
「…………………………………………うん」
とりあえず、鈴子との接し方を変えよう……
あれ、ちょっと頬に水滴が……
雨は止んでる筈なのにな……
可笑しいな……
鉄に覆われた通路上で、少女達は轟音を奏でていた。
詩織はその闘争に奮起していた。
鈴子もまた同じである。
「くっ!?確かにアナタの言う通りね!」
壁を蹴って膝蹴りを繰り出す詩織に対し、剥ぎ取った鉄扉を振り下ろす鈴子。
「アッ!?」
「グゥ!?此処は私達の戦いに狭すぎる!」
お互いに一撃をもらい、床に転がりを見せる少女達。
「序列者の戦いに駆け引きや技術なんて関係ない!!そんなのを考えていたら先に周囲が崩壊する!!」
床を爆散させ、鈴子に向かって高速飛躍する詩織。
それに鈴子は薄い鉄壁に拳を抉り込ませ、壁を剥ぎ取って投擲する。
「ねぇ!そうでしょう!内守谷鈴子!!」
片手で投げ込まれた壁を打ちはらい、鈴子の眼前に近づく。
そして横蹴りを右肋に入れ込むが、それを受けながらも両腕で固定し、鈴子は詩織を壁に叩きつけた。
「勝敗が着くのが先か!此処が崩壊するのかが先か!さぁ、どっちでしょうっね!!」
膝を曲げ、鈴子の頭を両手で掴み、自らの頭蓋に叩きつける詩織。
その衝撃で鈴子は足から両腕を解いてしまう。
お互いが額に手を置いて、一度距離を取る。
だが、人体強化をしている少女達にとって、その距離は一度の瞬きで無くせる範囲だ。
「さっきから何も言わないけど、どうしたの?」
「…………詩織」
「なによ鈴子」
いつの間にか序列番号で呼び合うのをやめ、名前で呼び合う様になった二人。
その中で、闘争を開始してから無言だった鈴子が、ようやく気持ちを声に出した。
「私は後悔したの……でも、それを帳消しする方法があるんだ……とても簡単なね」
「後悔?こんな時に言う事?」
「うん。こんな時に言える事なんだよ……だって私は」
「ッ!?」
詩織が瞳に写したのは二対の銃。
鈴子は格闘戦から射撃戦に変更しようと、銃口を詩織に向けた。
「此処で帳消しにするんだから……!」
「させる訳ないでしょ!!」
次に鉄壁に拳をめり込ませるのは詩織だった。
鈍い雑音を鳴らしながら壁をカーテンの様に伸ばし、鈴子の方へ障壁を成す。
「今のアナタは能力に変更する気はないでしょ!!」
「っ」
「人体強化を今の領域まで上げたら、能力よりも人体の方が便利よね!」
広げた障壁に一撃拳を放ち、火花を散らせながら鈴子に吹き飛ばす。
だが、人体強化を発揮している鈴子にとって、その鉄壁を弾き飛ばすのは容易だった。
「正直もう人体の方が手っ取り早いのよ!それと──」
「っ!?」
「武器も使えば、もっと楽になる!!」
詩織が両手に持ったのは黒色二対の銃。
それを構えて、跳ね返された壁を紙一重で躱し、二対の銃を持った鈴子に急接近した。
「ッ!──」
「ッ!──」
ッッッッッッ!!
それは銃を持ちながらの格闘戦。
二対の銃を持った少女達が、銃口を自分に向けさせない様に叩き落とし尽くす、眼光を光らせた高速戦闘でのせめぎ合い。
「ゥッ!?──!!」
詩織は最初に負った両手両腕両肩の負傷が残っている。
それにも関わらず、人体強化を成した鈴子とほぼ互角に渡り合っていた。
「ッ!?──!!」
また鈴子には詩織ほどの実技経験は無く、全ての行動が人体強化に頼ったものだった。
加速させた視力と身体が、詩織の動きを見切り、咄嗟の判断で全てを凌いでいく。
壁と床に火花が散り、跳弾した銃弾が無作為に廊下に線を描く。
人体強化と銃撃の乱舞。
序列者のみが至れる闘い。
その動きは既に、常人が認識理解対応を行う事が不可能な領域に立っていた。
「まだまだぁあ!!」
「ッッ!!」
まだ少女達は限界に達してはいない。
人体強化の上昇は継続発動が必須となる。
エンジンと同じ様に、身体を徐々に強化させていき、速度を上げていくのだ。
だが、それには注意があった。
「ッッグゥゥッ!?」
「勝算は無いよ。骨と筋肉が悲鳴を上げてる」
鈴子の上段蹴りを防いだ詩織の両腕が悲鳴を上げた。
その痛みによって、詩織は数分前に行った行為を思い出す。
それを鈴子が言葉にした。
「最初の弾丸で、アナタは緊急的な急激強化を発動してそれを凌いだ。本来の順序を無視した自殺行為で」
「クッ!?」
「身体は急激な人体強化に耐えられない。時間を費やして段階を踏まないと、強化に耐えられずに身体は崩壊する。その両腕と…視力も悪くなってるでしょ」
鈴子が詩織の現状を看破した。
その事実の連続に、詩織の顔に焦りが浮かび上がる。
「でもしょうがないよね。武器は序列者を倒せる様にする為に考えられたんだから」
手に持った武器を強調しながら、鈴子は語る。
人間離れした格闘戦を繰り返しているのにも関わらず、首輪からは死亡判定が出ない。
それは自分達が致命傷となる負傷を負っていないと、脳と身体が判断したからだ。
だが、武器による攻撃だけは違う。
「壁に叩きつけられても、床にぶつけられても、人体強化をした私達にはどうって事はない。でも、擬似塊による判定からだけは逃れられない」
つまり、序列者が至れる身体の頑丈さがあっても、銃弾を急所に受けて再起不能と判断されれば敗北となる。
それがほぼ唯一、序列外者がイベントで序列者を破れる方法だった。
乱舞が静まり一度距離を開け、お互いが銃口を宿敵に向けながら語り合う。
「さっきは敗退をする様に勧めたけど……もうしないでほしい」
「…どう言う事よ」
「言った通りだよ。私がアナタを倒す。そうすれば、きっと──」
息を僅かに上気させて、
「広樹の全部を私がっ」
熱い何かが入った一言が響き渡った。
…………。
…………。
何を言ってるの?
私を倒す?そうすれば?広樹の全部?
意味が分からない。
わからない。
ワカラナイ。
私から何もかも奪っておいて、広樹から何を奪うって言うの?
背中には広大な湖が広がり、目の前には窓ガラスがいくつもある建物が見える。
俺は背中を壁に付け、胡座で考えに耽っていた。
「暇だ……いや、もう何をどうすれば」
本当に分からない。
え?何がだって?
詩織が此処に来てからの全てだよ。
「理解が追いつかない。情報が足りないのもあるけど──ねぇ、コアラ子ちゃん」
両手に抱える縫いぐるみに喋ってる自分がいる。
打ち上げ花火も失敗して、詩織が打ち上げられた光景を見てしまったら、嫌でもこうなる。
ちなみに縫いぐるみを何故『コアラ子ちゃん』と呼んだのかと言うと、まぁ、アレです……
何故か女子特有のシャンプーの匂いがあるからメスという事で……嗅いでないよ。詩織から受け取った際にふわっと匂いが鼻に入っただけだよ。
だから俺は人から預かった縫いぐるみの匂いを嗅ぐ変態ではありません。
「俺にこんな趣味はないんだけどな…」
見ていると可愛く感じて来た。
恐怖によるストレスが原因かな?
何故かこの縫いぐるみをギュッ〜ってしたい。
「なぁ、コアラ子ちゃん。君は詩織からの預かり物だけど……いいかな?」
縫いぐるみに聞く自分が痛いと思える。
でも一人だと何故か言えてしまう。
あえて心で叫ぼう!
ちょっとモフモフギュ〜モミモミしたい!!
「なぁ、コアラ子ちゃん。今がチャンスだと思うんだよ」
チャンスなんだよ!
ドスンドスンと二人が船内で戦い合ってるから、今を逃したら後は無いと思う!
「ちょっと痛いと思うけど、抵抗しなければすぐに終わるから」
きっと生地は大丈夫だろ。
多少強めにモフモフギュ〜モミモミをしても破れない。
数秒間だけの俺の憩いだ。
「早く済ませるから、何も考えず。ただ受け入れてくれれば良い」
精神が病んでる俺への贈り物という事にしたい。
もう縫いぐるみに自分の熱い感情をぶつけても良いと思う。
てか、縫いぐるみに聞く事自体が間違ってる気がしてきた。
「そうだな……最初からコアラ子ちゃんの許しなんて必要なかったんだ」
無い無い。
無機物に許可を求めていた俺が馬鹿だった。
たぶん混乱してた所為だ。
……でも、やっぱり何か、この匂いと布触りを実感すると、ちょっと気持ちが揺らいでしまう。
本当にやってしまってもいいのかと。
詩織への背徳感が訴えかけてくる。
…………でも、一回流されても良いかもしれない。
そうだ。少し趣向を変えてみるか?
そして流されよう。背徳感も何もかも。
例えば……これで……
「コアラ子ちゃん。今自分の頭に当てられてる物が何か分かってる?──この黒くて硬くて大きな棒状のコレが」
…………アレ?ちょっと卑猥に聞こえたかも。
いや拳銃ですけどね。
ちょっと脅す流れにしたくて言っただけですハイ。
「何も抵抗しないでほしいな。そうすれば、痛い目に合わないから」
縫いぐるみの頬を銃口で軽くグリグリする。
あえて心の中で叫ぼう。
メッチャ柔らけぇえええ!!
このモチモチした弾力はなんだ!!これが縫いぐるみの感触なのか!!
俺の知っている縫いぐるみの感触はいったい何だったんだ!!
良い匂いがしながらの、この柔らかさ!
ちょっと頬と頬を合わせたい!スリスリモチモチしてみたい!
良いよな!
良いよね!
ちょっとだけなら大丈夫だよね!
少しだけ堪能させてください!
この可愛いコアラ子ちゃんの身体を!
「じゃあやるよ、コアラ子ちゃん……」
よしやるぞ!
もう我慢なんてしなくていい!
あの二人の所為で俺の精神は崩壊必死なんだ!
もうコアラ子ちゃんの身体を蹂躙しないとやっていけないんだよ!!
「じゃあさっそく──」
ッッッッッッ!!
建物の壁が爆散し、破片と煙を撒き散らす音。
ゴトッ!ドテッ!グチャッ!ゴロゴロッ!!
詩織が煙から飛び出し、湿った床で失敗したアクロバティックみたく、ゴチャゴチャしながら跳ね転がって来る音。
ドサッ…
俺の胡座に詩織の頭が乗っかり、膝枕ならぬ、胡座枕をやってしまう音。
はい。
誰がどう見ても一目瞭然。
何故か俺は今、
あの姫路詩織を胡座枕しています。
読んでくれてありがとうございます!
次回もぜひ読みに来てください!




