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第94話、鈴子「────」

書きあがりましたので投稿します!

これからもよろしくお願いします!

広樹をまだ知らない頃の私…

まだ自分の気持ちで外に出ようと思わなかった頃の話…


そして、荻野広樹がまだ戦闘学に足を踏み入れてない頃の過去。




ピンポーン


「ん?」


通販が届いたのかと、モニターを確かめる。

だが、そこに見えたのは白髪がちょっと生えてるちょっと老いた男性だ。


「……」


私は再び元の位置に戻り、ゲームを再開する。


ピンポーン


「……」


ピンポーン


「……」


ピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーンピンポーン


「うるさいっ」


遊んでるのかと言いたいくらいの呼び出し音が鳴り響く。

ふざけているのか、嫌味なのか、切羽詰まっているのか。どれかは分からない。

だが一つ言いたいのは、いい歳した大人がインターホンを連打するなと怒鳴りたい。


結果として私は、


「……はい」


『久しぶりだね鈴子くん。少し顔を見せてくれないか?』


戦闘学の校長に我慢で負けた。


















「やあ鈴子くん……ん?」


「久しぶり……です……で、なに?」


「その前にチェーンを外してくれないか?それと顔を全部見せてくれ」


私は頑丈なチェーンを付けた扉から、顔半分だけを外に見せていた。

仕切りも無く、この人と会うのは嫌だ。

いや、めんどくさい。


「教育者のトップが直々に私に会いに来た……めんどくさい何かがきっとある」


「直々に会いに来たのは、なるべく証拠を残さない為だよ。電話などの電子ツールも使いたくなかったッッちょっと何閉めようとしてるの!?」


「絶ッッ対にめんどくさいやつっ。もう帰ってっ」


「お願いだから深読みして全てを拒絶しないでくれ!君も一応序列者なんだから、少しは協力してくれ!」


「帰ってぇえ!」


隙間に靴と両手を入れられ、ドアが閉められない。


「人呼ぶよっ。変質者だって泣き叫ぶよっ」


「忘れてるようだけど!君の要望でこのフロアは君以外誰も住めない様に手配したのは私だよ!それと下と上の住人、ついでに管理者にも訳を伝えて買収済みだ!叫んでも誰も来ないよ!」


「ッッッ!?」


「さぁ開けなさい!話はそれからだ!」



















「お茶ない。お菓子ない。くつろぎスペースない。勝手に物に触ったら暴れる」


「暴れるのはやめてくれ。君が本気を出したらマンションが崩壊してしまう」


それもやぶさか無し。

やろうと思えば容易く出来る。

マンションの存命は校長の言葉次第と考えて欲しい。


「で、何の用?」


「その前に換気くらいしないかい?健康に悪いよ」


「私とパソコン機材の周囲には継続的に能力を張ってる。害になるものは近づけない」


「しかし私にはァッッゴホッゴホッ!?ちょっやめてくれ!!私の顔に何を送ってるんだい!?」


「この部屋に漂ってるほこり細菌さいきんと湿気、ついでに悪臭も…重点的に目と鼻と口に送ってる」


「こんな使い方をするのは君くらいだよ!?だからやめてくれ!目が痛くて吐き気もぉ!」


「撒き散らしたら、そのスーツに全部付着させるから」


「君は鬼かい!?頼むから!後生だから!本当にやめてくれぇえ!」


「…………チ」


「今チッって言った!?」


「言ってない」


校長には言ってない。

自分の甘さにチッとしただけだ。

私がもっと悪い子だったら、出て行くまで能力を続けていただろう。

でも私は優しくて甘い。だから能力も解いた。


「で、何の用?」


「その言葉も二回目だね……じゃあ、単刀直入に言うよ」


「……」


「ある少年のお尻の穴を守ってェオェッゴホッゴホッちょっやめ!やめてくれぇえ!!」


「帰るまでやめない。アナタの話は何も聞きたくない」


「冗談とかじゃないんだ!結構真面目な話だから!だから最後まで聞いてくれ!」


テーブルに両手と頭を叩きつけ、土下座っぽい姿勢を見せられる。


うん、いい歳した大人がやる行動ではない。


「一言目から分からない。わいせつ罪で訴えるよ」


「事実が複雑なんだ。とりあえず聞いてくれ。まずは、ある少年を紹介から」


「名前はいらない……重要点だけ短文簡潔に言って」


────。

────。


「つまり……今聞いた任務の建前は二の次にして、ちょっと危険アレな第十位の隣に置きたくない対象者がいて──」


「その彼を君が世話しながら見張っていてほしいんだ。銀行の件をかんがみて、まず悪い少年ではないと私は考えている。危険はあくまで疑いのレベルだ」


結論を言おう。


「嫌だ」


「いや!どうか考えてもらえないか?序列者の中でも君が一番無害で、自己防衛と制御についても君ほどの適任者はあまりいないんだ」


「学校生活はどうするの?私は通わないよ」


「それも直してほしいけど、学校内では『教師陣に見張られた詩織くん』が見張るつもりだ。君には彼のプライベートで友好を」


校長の中で第十位の評価がどうなっているのかが分かった…だが、


「無理」


「詩織くんが抱えている悩みは知っているだろうっ。下手をすれば彼女は──」


「私には関係ない」


そう言って私は、片手に能力を集中させた。

それはこの部屋に浮かぶ気持ち悪い何かの集合体。

名付けて、


「これ以上言うのな、元気っ…ん、ん……病気玉、投げるよ」


「そ、それは一体っ?……どうするつもりなんだい?」


「此処は一年以上も掃除をしてない空間だよ。……トイレやキッチンの排水溝……ゴミ袋から漏れ出た何か……使用済みの食べ物容器……それらから分泌され、部屋のあちこちで空気中に浮かび上がった有害物質を集約──


──校長は、この部屋の全てを顔面で受け止める事になる」


洒落しゃれにならないっ!本当に洒落しゃれにならないよ!」


洒落にならなくてもいい。

とにかく今は目の前の障害を排除したい。

死ぬ事は無いと思うけど、精神的外傷や後遺症を残すと思う──うん、どうでもいい。


「その人の身近で過ごせって言うんでしょ。隣に引っ越して、なるべく接触し続ける……恋人?……絶対やだ」


「恋人とは言わないよ。だが、君が拒んでしまえば、詩織くんに任せる事になってしまう。何かあれば、関係に亀裂が」


「どうでもいい。全て第十位に任せる。私は一切何もしない」


「っ……やはり駄目かぁ……」


くたびれた声で落ち込む校長。


「私と戦闘学側との約束……忘れてない筈」


「それを出されてしまえば、私は何も言えなくなってしまうよ」


「条件を満たす限りで、戦闘学に協力する……でも、それ以外の要求は一切断るよ」


過去にした取り決めを持ち出し、今回の件を突っぱねる。


「話はこれでお終い?」


「いや、もう一つある」


そう言って、校長は鞄から資料の束を出した。


「これは連絡でも良かったんだが、今回のついでで伝えに来た」


「ん……原子炉?」


「実験と開発でね。君の能力で作業員と設備を有害物質から守ってほしいんだ。君にとっての簡単な仕事なら、受けても大丈夫だろう?」


「…………ん、分かった。それは飲む」


本来なら能力の実験だけに協力する約束だけど、簡単な仕事だったら文句は言わない。

感謝される上に、多額の給料も入って、新しいパーツも買える。一石二鳥だ。


「助かるよ。君がいるだけで、期間と準備がほとんど要らなくなる…………いや、本当に助かるよ……」


ホッと息を漏らし、校長は何かを思い出して、眉の間を指で摘む。


「他国の機関がね、君を独り占めしている私に文句を言ってくるんだ。君の能力は万能な上に、発動範囲と発動時間が群を抜いているからね…」


「操作する対象による……質量が重かったり、体積が大きかったり、数が多かったりすると、範囲と時間が極端に減る……後、生物に対する操作も苦手……」


「そうだったね。ところで君は、今も能力を使っているみたいだが──」


電源が入ったままのパソコン、その空気孔を眺めて判断する校長。

当然、精密機械に埃は厳禁。

能力で完全に防いでいた。


「今回の発動を開始して、何時間になる?」


「ん…………とりあえず、三時間は超えてる」


「…………奇才と言うのは、恐ろしいね」


「埃に限っただけ……」


「軽く漂うだけの物質か……君の発動範囲限界を考えると、天気すらも変えられると思うよ」


「天気の操作?…………出来ないよ。距離が遠過ぎると、操作の精度が落ちる」


「そうかい?天気というのは、大気の簡単な変化に大きく左右されるんだ」


窓の外の青空を見ながら、独学を披露する校長。


「少し大気のバランスを崩してやれば、ゲリラ豪雨くらいは起きるんじゃないかな」


「…………話は終わり?」


「はぁ…終わりだが、少しは会話を持たせようと思わないのかね?」


「必要ない」


思う訳ない。

それに何の意味があるんだ。


「会話の不足。早く直さなければ、いつか何も伝えられなくなってしまうよ」


「別にいい」


「カウンセラーは」


「いらない」


「はぁ……じゃあ、これだけは言っておく」


溜息を吐き、校長はやや真剣さを増させた声質で言う。


「君も人間だ。必ず相手ひとを求める時が訪れる。その時に君は、今までの自分に後悔する筈だ」


「そんな時は絶対来ない」


「いや来る。こればかりは断言出来るよ」


経験の差と言いたいくらいに、強く断言される。







「君は後悔する。自分が積み上げた過去に必ず…」




























第十位は……広樹と……今まで……一緒に?


私が……本来……そこにいられた?


なんで……違うっ……こんなの望んでない!


第十位が……広樹の隣に住んでる?


いつも……いつも……いつも……いつも


私はその時……何をしてた?


私がいけないの?


私が断ったから?


私が否定したから?


私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が





嗚呼、これが──




──『後悔』……なの?……

読んでくれてありがとうございます!

事実に気づいた鈴子が、この後に見せる行動とは!!

この先の展開もぜひ楽しみにしていてください!

これからも頑張って書いていきます!

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― 新着の感想 ―
よくよく考えると鈴子の能力ってアクセラレータさんだよね
[一言] ダウナー系後悔ちゃんvsヤンデレアナルバンカー 二人を護衛に着けたら解決って訳にもいかなさそう
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