第91話、詩織「ァァアアア!!」
書きあがりましたので投稿します!
これからもよろしくお願いします!
「第九位ィイ!!」
怒りの咆哮と共に黒銃から火花を散らす。
その銃口から鈴子の脳天目掛けて銃弾が飛ぶ。
だが、
──ッ!!
銃弾は鈴子に到達する前に、異様な右旋回を見せて船の壁を抉った。
「っ!?ならァア!!」
詩織の能力、『黒槍出現』。
冷静さを失いながらも心に焼き付けた原則に従って、その鋭さは重症を負う程のものではない。
いや、出そうとしても、集中を乱した今の詩織には、刺す様な鋭さを持った棘は出せなかっただろう。
それを鈴子の真下に発動した。
だが、
──ッ!!
黒い棘は確かに鈴子の両靴の間に現れる。だが、鈴子に向かって伸びる瞬間、黒い棘は粉を撒き散らした様に砕けて消滅した。
「っ!?どうしてっ…!?」
「理解してないんだ…」
詩織が強い懐疑心に襲われる中、それを知っている鈴子は軽々と答え合わせをする。
「大気中には常に、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素が存在している」
「ッ!?」
「それと太陽がもたらす光子と、雨によって増加した水蒸気。これだけの材料が私達の身体を覆っている」
そう言って鈴子は靴先で足元を軽く叩き、次に答えに辿り着かせる。
「足元でそれらの要素を調整してあげれば、一時的にだけど視界から床の表面上をボヤけさせる事が出来る」
「私の…能力を…!!」
「あなたが数メートル先で能力を発動する場合、その前提条件がいくつか存在する。その一つとして、『発動地点を視界に映す事』。つまり、発動地点を視界から歪ませれば、完全な効果は発揮せず、今みたいに不完全な発動になる」
鈴子は詩織の能力を見抜き、その対抗策を能力によって可能とした。
「序列者の中でも、第十位の能力は弱点がはっきりしてるから、対応手段は簡単に思いついた」
鈴子を含めて、序列者には戦闘学から閲覧が許された特別なデータバンクがあった。
そこには榛名も閲覧が許されない、校長や所長などの立場が高い者しか見れない特別な情報がある。
序列者の権限がある鈴子は、そのデータバンクを閲覧し、詩織の情報を集める事は容易に可能だったのだ。
「あなたが私に勝つ事は──」
「ッ!!」
詩織は鈴子に向かって走り出す。
両手に黒銃を握りしめ、銃口を鈴子に向けた。
「真正面から来るんだ…」
沈んだ瞳をしながら構えたのは、身の丈サイズの狙撃銃。
二脚や望遠鏡などの性能向上部品を外し、出来る限り軽量化したそれを、躊躇もなく向かってくる詩織に向けたのだ。
「私の能力は理解してる筈なのに」
引き金を指をかけ、
「真っ直ぐ来てどうするの?」
──ッ!
火花を散らして銃弾を撃ち出した。
当然その銃弾には鈴子の能力が働いており、銃口から直線に移動する道理はない。
(そんなの分かってるわよ!!)
詩織の思考が加速する。
鈴子の能力は一発必中。撃たれれば避ける事はほぼ不可能。
だが、それでも弱点がある。
事前に運動能力と視覚を同時強化し、その銃弾の向かう先を予測。
神経を研ぎ澄まし、最適な回避運動を算出。
一秒間にも満たない瞬間の中で、序列者としての力量を注ぎ込み、視覚と思考を銃弾と同調させた。
(合わせてみせる!!)
重心を前に傾け、命中箇所を減らし、銃弾にあえて向かいに走る。
銃弾の目指す箇所は頭部と胴体の間、その命中の瞬間を思考し、身体を加速させた。
(此処!!)
ギリギリの瞬間で重心を背後に転ばせ、銃弾を視界に捉えながら、下半身を床に滑らせる。
銃弾は僅かに降下したが、直前まで近づいた事により命中には間に合わない。
頬と右肩の間を通過した銃弾は、背後の建物の薄い鉄壁を突き破って消えた。
(捉えた!)
距離は五メートルを切る。
次弾が来るならまた避けてやる。
『誘導改変』だって完璧じゃない。
距離を詰めれば、それだけ能力による銃弾の進路変更は間に合わなくなる。
その条件はお互いの銃弾に作用した。故に、
(もう遅い!)
銃口が三メートル圏内に入る。
いくら第九位でも、相手の超近距離射撃を命中までに完全回避操作をする事は不可能。
一方的に相手の情報を知るのは鈴子だけじゃない。詩織も鈴子の能力の弱点を記憶していた。
「これで!──」
「終わり」
詩織が引き金を引こうとした時、鈴子は沈んだ瞳をしながら背後に振り返った。
「──ガッァァ!?────」
そして衝撃が走る。
詩織の身体は真横に吹き飛び、鈍い音を床に鳴らせながら壁に激突したのだ。
「理解していた筈なのに…ね…」
倒れた詩織に見向きもせず、広樹の元へ歩きながら呟く。
「私は初めから、あなたの銃弾や自分の次弾にも、能力を使う事は考えていなかった」
鈴子の思考は、詩織の予想を空回りさせていた。
「私は最初から、この一発で仕留めるつもりだった──私の初弾は、射抜くべき相手を射抜いた」
詩織に命中したのは、鈴子が最初に放ち、詩織が躱した銃弾だった。
その威力は建物の薄い鉄壁を突き破り、また別の鉄壁を貫通。
鈴子は始終その銃弾を操作し続け、船を大きく半周させて詩織を撃ち抜いたのだ。
「対人相手の急所への使用を禁止された銃弾。命中すれば、死亡判定は確定」
勧告された自分への制限。それが銃弾の威力を物語っていた。
確認する必要も無いと、鈴子は口端を小さく吊り上げて、詩織を背にする。
「じゃあね──第十位」
読んでくれてありがとうございます!
久しぶりの戦闘シーンだったので、気づかずに書き方が変になっているかもしれません。
もし気になった場所があれば、コメントをもらえると嬉しいです!
詩織の動きと思考が化け物並と思いましたが、他の物語に出てくる主人公も同じくらいだったので、詩織なら問題ないと思いました!
思い出してみたら、アニメ界には銃弾を切ったり避けたりするキャラがたくさんいた事にビックリしました!
ぜひ続きも楽しみにしていてください!




