第89話、詩織「今行くから…」
書きあがりましたので投稿します!
今話は短めです。
これからも投稿頑張ります!
酷い間違いがあったので、すぐに修正しました!
気づいた方には本当にすいません!
「詩織さん!本当に一人で行く気なんですか!」
広大な湖を背後にして、海香は心から心配を表していた。それは自分の憧れの人がやろうとしている事が、とても無謀な事だったからだ。
「二対一ですよ!新入生が相手ならともかく、相手は例の二人です!私達も一緒にっ」
「海香」
そこで詩織がようやく声を漏らす。
「ごめんね。あの船には誰も連れて行きたくないの」
「どうしてですか!?」
滅多に逆らおうとしなかった海香が、今回ばかりはと反論を繰り返す。
だが、詩織には、詩織にしか分からない考えがあった。
「一瞬の油断も許されない世界なの。そんな場所に二人を連れて行けない」
「詩織さん…」
「それに二対一になるかはまだ分からないわ」
「それは一体?」
疑問を漏らしたのは空斗だった。
「能力を隠し続けたい。それが広樹の行動原理だから」
能力を見せたくないのが広樹の本性。
なら、戦闘への介入は極めて低いと考察する。
「それにね。もうなんでもいいのよ」
「詩織さん……?」
声音が軽くなり、詩織は目を細めて笑顔を浮かべた。
その豹変に海香と空斗が不自然感を感じた。
「もう仕事は十分に済ませたから、最後くらいは私の勝手にしたいの…」
どこか儚げさを思わせる雰囲気が纏わり、
「『何もしないで終わった時の、自分への言い訳』……そうね。何もしないで終わるなんて、終わった後の私が許さないわ」
手に持った縫いぐるみに語りかける。
「詩織さん、やはり持っていくんですか?」
「荷物になりそうだったら、僕達が持ちますよ」
それは前の戦いで拾った品である。
雨が降り出しそうな暗雲の中で、勇姿を見せた後輩達の持ち物を放っておくのは忍びなかった。
剥き出しに置いてあった縫いぐるみは以ての外だ。
故に詩織は、あの瞬間で反射的に縫いぐるみを掴み取り、ここまで持って来ていた。
「ありがとう。でも二人の荷物になりそうだからやめておくわ。それに──」
詩織は縫いぐるみを見て言う。
「──コアラ…好きって言ってたから…」
「ん〜?」
「どうしたの?広樹」
右隣から、疑問を持った鈴子が見上げて来る。
それに視線を向けず、ただ真っ直ぐと船外を見つめた。
「いや、この光景がな」
既にドローンの姿はなく、ボートの残骸は広樹の肉眼では見えない距離にあった。
広樹が見たのは、ただ真っ直ぐにある光景のみ。
その光景に心にグッと来る何かを感じた。
「どこかで見たような、悲しい何かが」
悲しい何かが関わっていたと思う。
だが、その正体がなんなのか分からない。
「何が悲しいの?」
「あっ」
目の前に飛び出した鈴子の顔を認識し、一つの記憶が覚まされた。
「お前の顔を見て思い出した」
「何を思い出したの?」
「この光景を見て、何か思い出さないか?」
その言葉に、鈴子は疑問を抱いたまま船外に視線を回した。
そこには依然と暗雲が支配する、暗い湖が広がっていた。
「何も思い出さないよ」
「そうか?じゃあ教えるが」
分からなかった鈴子に、広樹は答えを伝える。
「この光景は──」
それは引き金だった。
それを鈴子に伝えていなければ、後々の未来は少し優しくなっていたかもしれない。
だが、この瞬間。
未来は深い闇に染まった。
そして遂にその時がやって来る…
読んでくれてありがとうございます!
遂にここまで来ました!
とても長かったですが、次回は遂に始まります!
ぜひ次話も読みに来てください!
これからもよろしくお願いします!