第8話、斉木「人を肩に乗せるのは、流石に重いわー」
なんとかできました!!
まだ間違いも多いですが、わかるところから治していきたいと思っています!
誤字、脱字、修正、アドバイス、感想待ってます!!
これからも頑張っていきます!
第一銀行の件から四日。
はぁぁ、と広樹は唸っていた。
マイリビングで登校前の時間、その瞳には一枚の宝くじが写っている。
(どうするか…)
第一銀行の件から四日たったが、未だ条件にあった銀行が見つからなかった。
腕を組みつつ、広樹は眉間にシワを寄せ、宝くじを睨む。
(考えても仕方ないか……)
広樹は宝くじを財布にしまい、登校準備を済ませた。
「おーい!広樹!」
「斉木」
「おう!おはよう!」
大きな挨拶とともに、鞄を机の上に置く。
広樹の前の席は、斉木の席だった。
「どうした?なんか寝不足みたいだけど」
「いや、最近探しものがあって、インターネットで調べてただけだ」
広樹は第一銀行から四日間、血眼で条件の見合った銀行を探していた。
その影響か、目元にクマが入っていたのだ。
「ほー、何を探してたんだ?」
「色々と」
「何だよー」
広樹が真実を言うことは絶対にない。
『銀行を探している』と答えても、次の質問が飛んでくるだけ。
宝くじに繋がることは切らねばならない。
教室のドアから次の授業を担当する先生が入ってきた。
「今日はここまでだ」
今日最後の授業が終わり、先生が資料をまとめる。
「起立、礼」
号令とともに、それぞれが下校の準備を始める。
何事もなく、いつもと同じ日だ。
「なあ、最近俺たち話すようになったじゃん」
「そうだな」
戦闘力を教えてもらった日から、広樹と斉木の関係は最初の時より深まっていた。
「これからゲーセンに行かね?」
「…いや、これから予定があるからいいわ」
「探しものか?」
「ああ」
ゲーセンと友人よりも大切な目的がある広樹は、斉木の提案を断る。
「ほい、じゃあまたな」
「おう」
担任の先生が下校前の最後の事項を伝え終わり、号令に入る。
「起立、礼」
友達と会話する者、すぐに下校する者、部活に行く者が現れ始める。
広樹と斉木はすぐに下校する者だ。
「またな!俺はこのままゲーセン行ってくるわ!また誘うからなー!」
「その時に予定がなかったら行くよ」
斉木は広樹を置いて教室から出て行く。
広樹も鞄を肩にかけ、教室を出る。
(なんだあの集まりは?)
広樹が向かった下駄箱のある出口には人集りができていた。
集まる生徒は学年と性別に関連性がなく、みんなが出口の右にある壁を見ていた。
広樹も確認したいが、人集りが壁になって見えない。
「おう、広樹」
「斉木、なんだこの集まり?」
人集りの壁が一枚剥がれた。
剥がれたのはさっきまで一緒にいた斉木だった。
「ああ、ちょっとした有名人が来ててな」
「有名人?」
「本当か分からないけどな」
不確かな回答を返す斉木。
「そこに戦闘学の生徒がいるらしい。しかも、かなりの大物」
「戦闘学?らしい?」
「いや、話を聞くとさ、姫路詩織がそこにいるらしい」
「姫路詩織?」
聞いたことのない名前を聞かされる広樹。
だが、目の前に広がる人集りから、すごい人だと判断できた。
「アイドル?」
「ある意味アイドル。てか、本人かも分からん。戦闘学って情報規制がちょっとあってな、写真が少ないんだ」
「ほー。で、その姫路詩織がアイドルっていうのは?」
「可愛くて強い」
強くて可愛い戦闘学の生徒がそこにいる。
(ちょっと見てみたいな)
「斉木、ちょっとしゃがんでくれ」
「ん?わかった…」
広樹の頼みに疑問を浮かべる斉木だったが、質問をせずにしゃがみこむ。
広樹は斉木の首を股で挟み、体重をかけた。
「はい、立って〜」
「俺はお前の召使いか!?」
文句を言いながらも、ゆっくり立ち上がってくれる斉木である。
(どれどれ…)
広樹は人集りの奥へと視線を飛ばす。
見えたのは壁にもたれかかる明るい茶髪ロングヘアーの女の子だった。
彼女は人混みを鬱陶しく見ながらも、誰かを探すように目を配らせている。
(あれ?どこかで見たような……)
彼女の顔を見た広樹は、どこかで見たことがあると感じた。
少し違和感があるが、その瞳と顔つきは、広樹の心に深く刻み込まれたものと酷似していた。
(確か、銀行にいた……)
広樹がフリーズする。
(やらかしたわ……)
詩織は下駄箱出口の壁にもたれかけながら、自分の失敗に打ちひしがれていた。
荻野広樹は自分よりも頭が回ると判断した詩織は、裏工作をしなかった。
よって、ストレートに行こうと、広樹の学校に来たのである。
(広樹のことを思うばかりで、私の知名度を忘れてた)
姫路詩織の知名度は高かった。
任務などで変装をすることもあった。
だが、銀行の時は学生さを活かすため、変化を作らないよう軽めのメイクで遂行してた。
(素顔で来るべきじゃなかったかな…)
変装しても広樹は見破ると判断し、何も企んでいないという意思表示のために、素顔でここに来た。
だが、その考えが仇となり、この人集りを作り上げてしまったのである。
(でも、これだけの人集りができれば、広樹が現れる可能性も上がるかも)
失敗を成功への一歩に書き換えた詩織は、人集りの顔を一つ一つ確認する。
(いない…)
広樹の姿はそこにはなかった。
詩織は時間割を調べ、下校時間の前からここで待ち伏せをしている。
広樹のクラスの下駄箱もここにある。
よって、広樹がこの出口を使うことは決まっていた。
(早く来なさいよ……ん?)
全く姿を見せない広樹に対して、文句を心に呟いていた詩織だったが、在るものを見てしまう。
人集りの奥から、何かが上に向かって生えて来たのだ。
その生えてきたものを見た瞬間、詩織の心は許容範囲を超えてフリーズした。
会いたかった彼が、人集りの奥から前触れもなく生えてきたのだ。
想定していなかった再会に、彼女は固まってしまった。
「「……」」
お互いに目を合わせた状態で沈黙し合う二人だった。
そして先に動いたのは広樹だ。
「斉木……降ろしてくれ……」
「了解」
ゆっくりと人集りに沈んでいく広樹を、詩織は凝視していた。
それはまるで、映画に出てくる客船が海に沈んでいくワンシーン。
広樹は斉木から降りると、流れる動きで靴箱から靴を取り、目の前の出口を後にして廊下を走り出した。
(なんでいるのぉおおおおおおお!!)
心の中で叫びを上げながら、目に見えるものを加速させていく。
広樹は別の出口に向かって走り出した。
「広樹ぃいいいいいいい!!」
意識を取り戻した詩織は、思わず広樹の名前を叫ぶ。
だが、すでに広樹がこの場から走り去って十秒が経っていた。
人集りの雑音も重なり、詩織の叫びは広樹に届かなかったのである。
「クゥッッ!」
詩織は戦闘力により人体能力の強化を開始した。
目に見える変化はないが、彼女の脚は着実に強化されていく。
脚のみの強化にかかった時間は三秒。
「ッ!!」
右足を地面に強く叩き込み、目の前に広がる人集りの上に向かって飛躍する。
そして、先ほどまで広樹がいた場所に着地した詩織だが、広樹の姿はない。
詩織の両サイドにはそれぞれ長く続く廊下がある。
(どこどこどこぉお!!)
人体能力の強化。次に強化したのは視力。
左廊下を隅々まで見るが、彼の姿がないことに分かると、次は右廊下に振り返る。
詩織が認識したのは七十メートル離れた位置、廊下の角を曲がる広樹の姿だった。
(見つけたぁああああ!!)
詩織は笑っていた。だがその笑みは、広樹にとっては憎悪として見えるだろう。
まだ脚への強化は止めていない。
詩織は広樹が消えていった廊下へと向かう。
これからもよろしくお願いします!