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第78話、詩織「目には目を、歯には歯を、過ちには残虐を」

長く待たせてしまい本当に申し訳ありません!

書きあがったので投稿します!

今回は少し長いので、ゆっくり読めると思います!

『歓喜の歌』を聴きながら、または聴いた後に読むと、少し面白いかもしれません!☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆


どうかこれからもよろしくお願いします!

「おいっ!なんで明かりが消えたんだ!?」


「わ、分かりません!」


「カーテンを!」


「馬鹿!外から丸見えになるだろうが!」


先ほどの余裕が嘘の様に消え、次々と動揺と焦りが伝播でんぱ、ホール全体が一気に慌ただしさに包まれる。


突然の光の消失は、普段の生活では経験しない。それによって恐怖が簡単に広がったのだ。


「おい!どこかで銃声がするぞ!」


騒めく声に紛れ込む様に聞こえて来たのは、激しく撃たれる銃声の連鎖。

その音は周囲の恐怖をさらに悪化させる。


「全員、非常階段に!このままじゃ──」


「先輩は黙っててください!ここのリーダーは僕なんだ!勝手な命令を出さないでください!」


「お前はっ」


高波が指示を出そうとしたが、それをリーダーが怒りの瞳で否定する。

それに高波は怒りの形相でリーダーの両肩を乱暴に強く握った。


「お前は何も分かってない!この停電は普通じゃない!こんな大胆な行動をする奴は、俺は一人しか知らない!」


ある一人の少女の姿を思い出しながら、高波は意思を込めた声色で叫ぶ。


「俺達が束になっても──」


ドガッ!


語る最中、突然と正面の扉が開き、一人の生徒が飛び込んだ。

その音に全員が武器をその生徒に向けたが、撃つ前に彼は嗚咽を滲ませた声で吐き出した。


「来た!来たよ!下の廊下でっ!」


「おい!何が来たんだ!」


激しく動揺した彼の言葉に、リーダーは高波の両手を振り払い、報告を問いただす。


「真っ暗の廊下をっ、黒いマスクを被った女がっ、制服姿の女がいた!暗くてよく見えなくてっ、とにかく撃ちまくったんだ!でも全然当たらなくてっ!みんなが撃たれてっ!黒い棘がたくさん現れてっ!」


滅茶苦茶な言葉になりながらも、彼は震えた身体で見たものをそのまま伝えた。

そして暗闇の中で彼の表情が薄く見える。そこには汗と鼻水が垂れ、口からは荒い呼吸が大きく目立った。


その姿、発言に、この場にいる者全員が喉を鳴らす。

そして先に声を上げるのは高波だった。


「おい!撤退だ!姫路詩織が─」

「っっああもう黙っていてくださいよ!僕の仲間に口を出すな!全員僕の指示だけを聞け!!」


だが、上級学年である高波を乱暴に押し出し、怒鳴り声を上げながら舞台から降りるリーダー。

怒りによって顔を赤くする彼は銃器を引き抜いて、正面の扉に向けた。


「全員備えろ!裏口はバリケードで通れない!来れるのは正面にある三つの扉だけだ!いいか!全員で敵を討ち取るぞ!」


裏口を除けば、今いるホールに入れる入口は三つだけ。その扉は舞台から正面に横並びで設置してある。


赤く豪華な模様造りの扉。内側から鍵を閉め、そこから離れた位置から、全員でそれぞれの扉に銃口を向けた。


「いいか!開いた瞬間に一斉射撃だ!絶対にこの部屋に入れるな!」


その指示に高波と雲馬の二人を除いた全員が団結の声を上げる。

だが、その場面に高波は苦虫を噛む顔を作って呟く。


「それじゃ、駄目なんだっ……」


「っ!まだ言いますか!僕は何も間違ってない!アンタの言葉なんて必要ない!」


耳に入った高波の覇気の無い声に、リーダーは再び憤怒した。

自分の独占物なかまを奪おうとする高波に対し、リーダーは強い怒りの顔を作る。

だが、依然と高波の表情は暗く、呟きを止めない。


「確か『黒槍出現ブラック・アペアランス』でしたっけ?ただ黒い棘を出すだけじゃないですか!そんなの全然怖くありませんよ!相手はたった一人、待ち構えていれば勝てるんですよ!」


「……お前は分かってない。どうして単純な考えしか持てない。能力の問題じゃない。何故扉にしか注意を向けないんだ……」


「は?何を言ってるんですか?裏口は完全に塞ぎ、後は正面の扉しか侵入経路が無いんですよ」


高波の忠告を意味不明な発言と捉え、リーダーは馬鹿にする様に貶す。

それは雲馬を除いた、他の者達も同様だった。

だが、


「お前らは何も分かっちゃいねぇ…本当に何も分かっちゃいねぇんだっ…」


高波は諦めた表情を被り、全員にあわれみの瞳を向ける。


「戦闘力者は身体機能を強化出来る存在だ。だが、その戦闘力者の中でも、序列者だけは行動概念そのものが俺達とは違う」


やがて彼は銃を引き抜き、銃口を落とす。

覚悟を決めた意思を纏って、その精神はこの場の誰よりも覚悟を決めた者へと変貌した。


序列者アイツらは人の法則に従わない……」


















そこはリーダー達が待ち構えている巨大ホールの真下。多目的室と呼ばれる一室。


窓も明かりも無く、部屋は完全に闇に包まれている。

視界を活用出来るのは彼女のみ。装着する黒いマスクには赤外線レンズが搭載されており、暗闇の中でも視界を保てていたのだ。


そんな彼女は、何もせずにジッと動かなかった。

それは何故か?答えは簡単だ。


『闇の蓋をこじ開ける』──それが詩織の狙いだった。

















『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』『ザァンッ!』


突如とリーダー達の目の前に現れたのは、罅割ひびわられた床から伸びた漆黒の棘先。


「──覚悟しろ。そして理解しろ」


連続で伸び生えたソレは、ホールの壁側の床の半面を覆い尽くし、堂々とち並ぶ。


序列者アレは俺達とは次元が違う」


その現象と光景にその場の全員が言葉を失う中、高波は彼女の存在を謳う。


序列者アレは俺達と同じ存在じゃない」


黒棘が床を貫いた。

それによって、ソレが自然の摂理せつりとして巻き起こる。


「これから現れるのは、世界が認めた強者だ」


──序列者アイツらは人の法則に従わない……


先刻の高波が言った忠告。

それが今現実となる。


序列者はご丁寧に扉から入る事はない。

彼らは人に許された法則を超えられる。


「来るぞ!戦闘学日本支部、序列第十位──姫路詩織!」


そして起こる。

棘先と棘先の間が罅割れる。

床が地鳴りと言う名の悲鳴を叫ぶ。

その答えは、今この場に現れた。



『床の大崩落』



詩織は人の力では成し遂げられない現象を創り出した。










「うぁぁあああああ!?」

「助けてぇええ!?」

「落ちるぅううう!?」


巨大ホールの広い床が、轟音と共に斜めに傾いていく。

缶詰の蓋抜きと同じ現象だ。

部屋の壁際の床のみを下から黒棘で貫き破壊し、反対側に蓋を開けた光景がそこにあった。


扉側の床の大部分が下の階に陥落かんらくし、舞台側の床がかろうじて残る。

分け目にある床の大罅おおひびには、コンクリートを繋げる太い鉄金てつがねが見え、それによって床は完全に崩落しなかった。


だが、その床は急角度に傾き、滑り台の様に次々と生徒を下の階に滑り落としていく。

そこには一切の光が無く、深い闇が広がっていた。

そして、次に巻き起こるのは、


「ぁああああ!?」

「来るな!?来るなぁああああ!?」

「助けてぇえええ!?」


二十人を超える仲間が暗闇の中に滑り落ち、銃声の嵐が下の階で乱雑する。累々の泣き叫ぶ声が闇に充満し、まだ落ちずにいた者達に恐怖を抱かせた。


「ぁ、ぁっ」


怯える生徒の一人が、壊れた機械の様に声を詰まらせる。だが、その片手には銀色に光る拳銃が握られており、その銃口は闇の中へと向いていた。


それを見た高波は顔色を豹変させる。


「やめろ!絶対に撃つな!下の仲間に当たる!」


怒鳴る声で言った言葉に、銃を構えていた一人の生徒は気付かされた顔を作り、その銃口を下げた。

だが、


「いや撃て!全員で一斉射撃!!」


またもリーダーがそれを否定し、闇の中に攻撃しろと命令を出した。


「おいやめろ!」


「黙れ!!いいから全員撃て!これは命令だ!」


傾いた床にへばりつきながら、彼は銃を引き抜き、それを暗闇に向ける。


「撃て撃て撃て!!」


リーダーの怒号と銃声に、恐怖で正しい判断が出来なくなった生徒が一斉に銃撃を開始。

高波が制止の声を上げるも、銃撃音によって声はもみ消され、無数の銃弾が暗闇に降り注いだ。


「くっ、雲馬!」


インカムで仲間の名を叫ぶ。周囲を見回しても彼の姿が見えなかったからだ。

その呼び声に、インカムに声が入る。


『なんだい?』


「落ちてないかっ?」


『なんとかね』


舞台の奥影から雲馬が姿を現した。


「何やってたんだ!」


『バリケードの撤去作業と、一部だけど避難誘導だよ』


「お前っ!」


高波は憎たらしそうな苦笑いを作って、人体強化を開始した。

脚のみに強化を集中、目標の強化値を超えたところで勢いよく飛躍する。


数メートル飛んで着地したのは、雲馬が立つ舞台の奥影。

雲馬の背後には、四人の少女の姿が見えた。


「本当にお前って奴はっ」


「偶然にも可愛娘かわいこちゃんズの近くにいてね。全員抱えて飛んで避難したんだ」


「偶然じゃなくて故意にだろ馬鹿!でも、いい仕事だ!」


可愛い女の子が目当てだった仲間にど突いて、すぐに背後に振り返る。

そこには依然とリーダーの指示の元で銃撃を続ける後輩達がいた。


「倒せるか?」


「無理だろ。向こうもこうなる事は予想していたはずだ」


分かりきっていると高波は言う。

その行動は全て、彼女の予想範囲内だろうと理解していた。


「行くぞ」


高波を先頭に、四人の少女を挟んで雲馬が追い歩く。

六人の影はそのホールから消えた。


そして──


「撃て撃て撃て撃て撃て撃てぇえええ!!」


下に落ちた仲間諸共、弾薬のある限り全てを撃ち放つ。

それはリーダーを含めてその場にいる全員がそうだ。

やがて弾薬が尽いたのを、拳銃から発せられる空っぽの音が知らせる。


「や、やったのか…」


誰が漏らした疑問には、沈黙のみが返ってくる。

下に見える暗闇からは物音一つせず、それはやがて恐怖にゆるみを生み出した。


「倒した…倒したんだぁあ!」

「あああ!やった!」

「序列者を倒したぞぉお!」


リーダーの喜び声に、苦難を共にした仲間達が一斉に歓喜を叫ぶ。

恐怖心から解放された彼らは、盛大に喜びを叫びあった。

やがて、自分達が置かれている状況に気付き始めて、傾いた床から這い出ようと行動を開始する。


だがその時、


「ぇ?」


一弾の銃声が、闇の底から鳴り響いた。

それを機に、一人の仲間が宙に身体を傾けて、暗闇の影に姿を落とす。


──まだ終わってないよ。


実況席に座る天乃がスタジアムでそう言った。

それを言った直後に、詩織は動き出す。


「ぇっアガァッ!?」


それは一瞬の事だった。

数メートルの深さがある暗闇から、黒いマスクを身に付けた詩織が砲弾のごとく突貫し、着地をする間も無く、一人の生徒に拳を叩き込む。


それによって白目を剥き、泡を吹き出した生徒。

血飛沫を上げてないということは、まだ敗退判定が出ていない。

それを詩織は首根っこを掴む形で、腰の高さに軽く携える。


「ぁ、ぁぁ」

「た、たすっ」

「や、くるっ、なっ」


その姿に全員が怯え震える。

闇色の頭蓋がゆっくりと回る、鋭き紅い瞳がその場にいる全ての恐怖心を射抜く。


詩織は再び動き出す。

意識を失った生徒を空間の隅に投げ飛ばし、次の獲物へと手を伸ばす。

顔面に拳を叩き込み、涙と鼻水で滅茶苦茶になった一人の生徒。それを再び空間の隅に投げ込む。それを己の人体強化で一方的に織り成した。


「ぁっ、あっ、ァアアアア!」

「助けて!助けぇぇぇぇぇえ!」


数々の悲鳴が上がり、空っぽの銃の引き金を引く者、必死に傾いた床からよじ登ろうとする者、全てを捨てて闇の中に身を投げ出す者──その全てを詩織は捕らえた。


強化された身体能力は、傾いた床を蹴り砕き、跳ね飛ぶボールの様な高速機動を可能とする。

それ故に一人も詩織の手から逃れる事はなかった。


一人、また一人、また一人…

詩織は一撃叩き込んだ生徒達を一つの場所に向かって放り投げていた。

そこはホールでまだ崩れていない舞台側の床。

乱暴乱雑に投げた影が重なり続けて、二十秒も経たずにそれは終わる。


「ぁ、ぁぁぁ」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「来るなっ、来るな、来るなぁああ!」


顔を恐怖に染めた生徒達。

禍々しい雰囲気をまとう詩織は、マスク越しで彼らを見る。

その行動一つ一つが彼らの恐怖を大きく増大させ、誰一人すら立ち上がる事が出来なかった。


「こっ降参だ!降参するから!だから!」


その中でリーダーは、一際大きな恐怖顔を作って詩織に懇願する。

先ほどの余裕な顔は完全に壊され、それは涙と鼻水で顔面ぐちゃぐちゃにする少年でしかなかった。


だが、



スゥ────スゥ────



懐から黒い拳銃を引き抜く。

それを躊躇なく、怯えた生徒達に向けた。


「降参するからもうやめてくれ!これはイベントなんだろ!降参したら終わりなんだろ!」


リーダーが必死になって自論を吠える。だが、その銃口は外れる事なく、依然と彼らに向けられた。

そして、僅かに詩織の頭蓋が揺れ動く。


『降参って言ったら降参になる。……そんなルールは存在しない』


その言葉によって、一つの記憶が思い起こされる。

それはイベントが始まる前に読んだルールブックに書いてあった説明。


──敗退の確認、本人が首輪チョーカーに十秒触れるか、敵に三秒触れられたら、イベントからの敗退が決定。


それがイベントからの敗退リタイア方法だった。

それに気づいた生徒は、各々の首輪に手を添える。


後は十秒経てば終われるのだと信じていた。


だが、そうはならない。


「ッァア!?」


向けられていた銃口から煙が昇る。

次に巻き起こったのは、生徒達の激しい嗚咽だった。


「なっ、なんっ、で!?」

「俺達は降参しようと!」


撃たれた場所を抑えながら、涙を浮かべて恐怖を吐き出す。

急所を外した事により、敗退判定は出ず。

激しい痛みで顔をより一層歪む彼らの前で、詩織は依然と銃口を下げずに言った。


『十秒間触らなければ、それはまだ参加状態なのよ。だから撃てる』


「なんだよそれ!そんな事が許される訳ないだろ!」

「そんなの先生達が黙ってない!」


『…………警告無し。これは許された行動みたいね』


間を置いてから伝えたのは、続行を示す答えだった。


「なんでだよ!なんでそんな事をするんだよ!そんなに俺達をいじめるのが楽しいか!」


それを叫んだのはリーダーだった。彼は恐怖に囚われながらも、銃口を向ける詩織に強く吠え掛かった。


『…………』


それに詩織は無言となる。

その返答に、リーダーは心の内でニヤりと口端を吊り上げた。


「先輩がそんな事していいのか!戦意もない人に攻撃するのか!そんな事をする奴は人間じゃない!」


『…………』


詩織の続く無言の返答に、リーダーは心の内で益々と口端を吊り上げた。


それは世間的に言えば正しい言葉であり、それは相手の立場を貶める行為だったからだ。


戦いで勝てなければ、言葉で勝てばいい。


(周囲からの評価を滅茶苦茶にして、全てを終わらせてやる!)


リーダーの中の悪意は詩織の絶望によだれを垂らしていた。


「俺達はそんな事しない!俺達は誰も虐めなければ仲間を見捨てない!お前なんかとは違うんだ!」


『…………』


「俺達が全て正しいんだ!俺達が正義でお前が悪なんだ!おいなんか言ってみろよ!」


『…………』


「何も言えないのか!」


詩織は何も言わない。

言わない代わりに、その足下には黒い棘がゆっくりと現れ始める。


黒棘の束。

棘に棘をやして、その上に器用に立ち上がる。


そして着々と彼らから距離を空けてゆく。


「逃げるのか!そうだよな!お前が全てが悪いんだ!お前は俺達を責める権利なんて持ってないんだからな!」


(これでトドメだ!ははははっ!お前の評価はこれで終わりだぁ!)


心の内でリーダーは盛大に笑い震える。

自分の身が救われた事と、序列者を言葉で追い払い、みんなを救ったという結果。


自分の存在価値が跳ね上がり、新たな尊敬の念を込められる存在になれたと、歓喜に浸りながら自画自賛する。


『…………』


詩織の後方移動は停止する。

下には暗闇が広がる深い床穴が見える。

詩織はそこに一瞥して、彼らの方へと紅い瞳を向けた。


『戦意もない人に攻撃するのか……仲間を見捨てない……どの口が言うの?』


暗闇の底で何かが動く音が鳴る。

その正体はすぐに彼らの目の前に現れた。


『この子達の前でそう言える?』


それは無数の黒棘で持ち上げられた『仲間達の屍』。

血色に染まった身体を数本の黒棘でかかえ込み、棘に棘を生やしたソレが、禍々しく暗闇の底からそびえ立った。


『私は一発も撃ってない。銃声の嵐はこの子達がパニックになって起こした事故。勝手に自滅したわ』


気絶した彼らの顛末てんまつ

詩織は自分の目にした事実を語る。


『そこにあなた達が上から銃弾の雨を降らせた。気絶したこの子達に向かって遠慮無しに……本当にどの口がそう言うの?』


「ぁ、ぁ、ぁぁ」


突きつけられた事実に呼吸を止めるリーダー。

それは自分の叫んだ言葉を完全に否定されるものだったからだ。


「こ、これはイベントで、で、ゲームなんだろっ!仮想空間でやったゲームと同じで!死ななくてっ、僕達は力を合わせてっ!」


『ここは現実』


詩織の一言は、言い訳、弁明、反論、その一切を断ち、黙らせる言葉だった。

やがて詩織は銃口を再び彼らに向ける。


『間に合わせで作った受け身台を落下場所に設置して、大怪我をしないように配慮もした。そこをどう乗り越えるのか観察するつもりだったけど──』


詩織は穴を作り出してからは、何一つ攻撃となる行動をしなかった。

寧ろ、後輩達に配慮した行動をとっていた。


『パニックになって銃を乱射し、それで勝手に自滅した。そこまでなら何もしなかったわ。でも──』


状況の対応に評価をつけるなら、彼らは零点だっただろう。

だが、それよりも、



『仲間を巻き添えにしての一斉射撃、それが私の優しさを完全にぶち壊した』



静かに熱した怒りが、詩織の言葉を冷徹にした。

それは人としてやってはいけない行いであり、それを彼らが犯したからだ。


「でもっ、だからって、俺達に酷くするのはっ」


『優しさなら十分にあったわよ。でも、それは落ちて来た子達の為に全部使い果たした。あなた達が起こした弾幕から助ける為にね』


降り注ぐ銃弾の雨から、気絶した彼らを黒棘でおおまもった。

彼らの起こした失態を、詩織は全てぬぐったのだ。


『なんて言ったかしら、かすかに聞こえたのよね。


─いや撃て、全員で一斉射撃

─黙れ、いいから全員撃て、これは命令だ

─撃て撃て撃て撃て撃て撃てぇえええ


──誰がそう言ったの?』


その質問に、リーダーは心臓を締め上げられる。

それは彼が起こした最悪の選択だったからだ。


「ご、ごめ─」

『あなた達の攻撃は仲間を見捨てた危険行為。気絶した仲間がいるのにも関わらず、弾薬の限りを尽くして仲間なかま諸共もろとも撃ち尽くした』


リーダーの謝罪を断絶し、詩織は心を闇に染めて、その銃口を彼らに向ける。


『だから、あなた達に優しくする気持ちはもう無い』


死刑宣告。

その銃口が恐怖という足枷を作り出し、誰も動く事は出来ない。

待つのは、すぐに訪れる自分達の痛みなのだと、誰もが想像した。


『良かったわ。ここにいるのが全員『男』で』


男?

彼女は何に安心しているんだ?


『女子を痛めつけるのは心苦しいのよ』


銃口を向けたまま、彼女は自分達の前に降り立った。


『出来るなら、仲間を見捨てるガキだけにしたいわ』


やがてその足下あしもとから黒い棘が姿を現わす。

だが、それは先ほどに見た黒棘とは異なった。


とがってると大怪我だから、少し操作を掛けて先っぽを丸くしたのよ。この丸加減まるかげんが私の限界』


それは道路に立っている赤コーンの先っぽの形していた。


『あなた達に弾薬を消費するのは勿体無いから、これでするわ』


その言い終わりに、自分達の足下に『黒くて丸みのある先っぽ』がニョキニョキと姿を現わす。


ここから始まるのは、詩織による残虐な処刑劇。

誰もがソレを見て連想した。


『もう十分に反省したみたいだから、すぐに終わらせてあげる』

























『大丈夫──














──痛みは一瞬だから』

読んでいただきありがとうございます!


今回の話では『ざまぁ』っぽいのを書きました!

前にも書いたことがありましたが、やはり難しい……『ざまぁ』だったかも不安ですね。


久しぶりに長文で投稿してみました!

たぶんですが、読みにくかった人がいるかもしれません。


一気の長文投稿か、複数に割けての短文投稿か…

今後その辺りも考えてみようと思います!


それと感想コメントがやっと500件超えました!とても嬉しいです!

たまに読み返しているのですが、とても懐かしく、アドバイスも多くあって、色々と思い出します!

感想コメントをくれた皆さんには、本当にありがとうございます!

これからも頑張って面白い作品を書いていきます!


過去のコメントを読んで思い出したのですが、『ローファンタジーでも伸びるかも』とコメントいただいた事がありました。


少し不安ですが、ちょっとだけ『アクション』から『ローファンタジー』に引っ越ししてみるかもしれません。

よろしくお願いします!


これからも頑張りますので!どうかこれからもよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
執筆当時は無い曲ではありますが、Black Impulseという曲が脳内再生されてました アレも闇堕ちの曲ですしね……
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