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第73話、鈴子「……………………分かったよ」

お久しぶりです!

長い期間を空けてしまい申し訳ありませんでした!もうイベント直前となったので、色々と考えるところがあり遅くなりました。

ようやく書けたので投稿します!


これからも楽しんでもらえる物語を頑張って書いていきます!

アドバイスやコメントなどがあれば、ぜひお待ちしております!

防音が完備された選手準備室にて、


「…………」


「ぅ…………」


半分下げたまぶたからは、ジィ〜〜と睨みつける瞳が見える。それは、その少女らしからぬ行動だった。


そして睨まれている者はというと、複雑そうな表情を作りながら、瞳を明後日の方向に泳がせていた。


「あの……何か?」


「……質問がある」


瞳を泳がす少女は黒い短髪を揺らしながら疑問を投げかけると、それに以前ジィ〜〜と見つめる少女は区切った言葉で問い出す。


「どうして……広樹も制服なの?」


「ん、何か変なのか?鈴子」


鈴子と呼ばれた少女は、広樹の言葉に耳を貸さないまま黒髪の少女に視線を突き続ける。そして、


(怖いです!どうして私がいつもっ!)


鈴子に視線を注がれる灯花は、恐怖とストレスによって精神を限界まで震わせていた。面倒な仕事を押し付けた主人の姿を心に浮かべ、灯花は血を沸騰させながらも必死の作り笑顔を顔に縫い付ける。


「この制服は特別製なんです」


嘘は言ってない。それは事実であり、本当の事だ。


「彼は転校生なので、いきなりのイベント出場は危険です。で、運営の判断で特別にその丈夫な制服の着用が許されたんです。戦闘服よりも日常着に近いので、とても動きやすいですよ」


「…………」


「確かに、いつも着ている制服よりはキッチリしてるな。それでも動きやすい」


口を閉ざす鈴子の横で、広樹は身に纏う制服を確認する。制服自体は勿論強化素材、黒い肘当て膝当てが付き、その衣類の内側には特殊性の薄い防護着が隠れていた。


「安心感がある。何をそんなに気にしてるんだ?」


「…………」


広樹が軽い笑顔を浮かべる中、鈴子は未だ疑いを晴らせないでいた。


「…………別に」


長い沈黙の後で、鈴子は視線を下に傾けて、自分の両手を見て言う。


「いいや……全部私が……やればいいだけ」


「っ!」


「全部私が?どう言う事だ?」


「広樹は何もしなくていいって事……」


何かに決意を向ける鈴子。その言葉と表情に、反応は二つに分かれる。当然、何も知らない広樹の反応は軽い疑問があるだけだった。


そして、全てを知ってる少女は……


(ごめんなさいっ参加者の皆さん!ごめんなさいっ運営委員会の皆さん!ごめんなさいっ教職員の皆さんっっっ校長ぉ!本当にごめんなさいっ!!)


心の底で、心深く、心の芯からの謝罪を連呼していた。灯花はこれから起こるであろう事態を予測した。それは序列者の本気を、内守谷鈴子の力の一部を知る少女の思考が、全ての者への謝罪に繋がっていたのだ。


(あの天乃バカは絶対に後で懲らしめます!逆さ吊りにして皆さんに謝罪させてやります!なのであわれな私をどうかお許しください!)


重ね続けた謝罪の末、灯花は怯えた自分を隠しきり、視界に映る二人の参加者に笑顔を向ける。


「これより入場式なのですが、……少々問題が発生しまして」


「問題?」


「どう言う事?」


灯花のためらい感が宿った言葉に、広樹が一言漏らして疑問を飛ばす。それは鈴子も同じだった。


「え〜とですね…運営側の登録ミスによって、その…貴方方のチームの入場式は通常予定から外れる事に……」


全ては天乃の仕業である。ミスではなく隠したのだ。

鈴子と灯花の存在が知られれば、校長を含めた運営委員会が必ず動く。そしてイベントの参加を辞退させる様に呼びかけるか、それ相応の制限を強いられた参加となっていただろう。


だが、それを天乃が許さなかった。


天乃は見たいのだ。『自分がワクワクするイベント』を。その為なら大人達を騙し、他人の事情すら考えない。


自分優先主義を持った天乃は灯花に言っていた。『これは理想の舞台なんだ!邪魔なんてとんでもないよ!』


理想の舞台?……ある意味で『処刑の舞台』の間違いである。


灯花は『参加者達の処刑』と『天乃の処刑』を思い浮かべながら、広樹達に微汗をかきながら言葉を続けた。


「なのでですね……特別処置として……貴方方の入場は、宣誓後という事に……」


「それは……」


「…………」


複雑そうな気持ちが表に出る広樹と比べて、鈴子は無言でありながら、その瞳に怪しげな光を燈らせていた。


「運営側のミス……その償いは何?」


「っ!?」


「宣誓後の入場は精神的ストレスになる……それはイベントで不利……特別処置はないの?」


鈴子の言葉には広樹も納得していた。確かに宣誓後に会場に足を踏み入れるのは勇気がいる。観客も含めて既に集まった参加者の前を歩き出すのだ。それは精神に大きな負担を強いる。


「……何かないの?」


「ぅ……」


その追求に灯花は眉を曲げる。鈴子に言った内容は確かに正しい。それは灯花本人にも分かっていた。だが、その権利を灯花は持っておらず、持っているとすれば、


「少々運営側に連絡を」


一言断りを入れて、灯花は懐から取り出した端末で連絡を入れる。その相手は自分が今も怒りの矛先を向けている我が主人。


『なんだい灯花ちゃん。今は「お話があります」』


天乃の言葉に遮って、灯花は詳しく事情を説明した。そして天乃は今出来る処置を考え出す。


『うん、じゃあーー』


その内容に灯花は軽く吐息をつき、鈴子の方へと振り返った。


「運営側からの提案ですが、『スタート地点を決められる』、この権利はいかがでしょうか?」


これから始まるイベントは広大な敷地を使った戦闘である。そのスタート地点はチームごとにランダム指定されるとなっていたが、その地点を自由に選べると言ったのだ。


「……それでいい」


出された提案に鈴子は納得の色を見せる。その処置は少女にとって十分だと判断した。


「では、移動車の者には私達の方から説明して置きますので、乗車した際に行き先をお伝えください」


灯花が追加説明をしてこの話は終わりとなった。やがて部屋の天井隅にあるスピーカーから音楽が流れ出し、実況者を担当する者達の声が聞こえ始める。


「入場式が始まりました。もうそろそろ移動しますので、どうかよろしくお願いします」













うん、鈴子変わった。

その小刻みに震えた脚がなければ完璧だった。


鈴子と近距離にいた灯花は気づかなかったが、離れた位置で眺めていた広樹は、鈴子の内心をしっかり捉えていた。

























『皆さまもご存知!これから登場してもらうのはあの方がいるチームです!前回の優勝者にして序列を持つ存在!さあ!今回はどんな戦いを見せてくれるのか!』


通路中に響き渡るのは、実況席に座る少女の声である。灯花の同伴の元で広樹と鈴子は閉ざされた入場口の前にいた。後は入場口が開くのを待つだけらしく、灯花の姿は既になかった。


「詩織……」


実況者が響かせた少女の名前に一言漏れる。

その漏らした名前は、広樹が恐れながら複雑な気持ちを抱く人物の名前だった。

望めるのなら、イベント中に彼女と遭遇しないまま終幕したい。それが広樹の強い願いだった。


「詩織って……何?」


そう思う中で、隣にいる鈴子は広樹に視線を向けた。広樹の漏らした声は鈴子の耳に届いていたのだ。


「知り合いなの?」


「まぁ、ちょっとな」


「…………どういう関係?」


「ん、そうだな……」


広樹は手で顎を支え、ゆっくりと天井を見上げて考え込む。


本当に複雑だ。自分にとって詩織とは何だ。同じマンションに住む隣人であり、戦闘学に関係する者の中では一番最初に知り合った少女。


今までは恐怖の対象でしかなかった存在だったが、慰められてからは別の気持ちが芽生えていた。


救われた自分がいるも、まだ恐怖している自分もいる。


壁を疾走して追いかけてきた詩織が怖い。

バイク並みの速度で追いかけてきた詩織が怖い。

思い出される彼女の行動は、自分にとって悪夢でしかなかった。


…………なんで追いかけてきたんだ?


詩織はどうして追いかけてきた?元の学校でも、榛名といる時も、どうして詩織はあんな必死に追いかけたんだ?


…………俺を追いかけた理由はなんだ?


俺に何かがあった?

俺を追いかける確かな理由があった?

俺は何かを持っていた?


なんで、俺の近くに詩織がいたんだ?


…………確か「どんな関係なの?」


何かに気づきかけた瞬間に声が響く。気づけば目の前には鈴子が立っていた。


「どんな関係なの?」


同じ質問が発せられる。


ああ、詩織は序列者だ。詩織の認知度が高い事は知っていたが、それは不登校生の鈴子にも届いていたのだろう。

そして、ここまでグイグイ聞いてくるという事は、鈴子は詩織に強い興味を持っている事だ。


鈴子が抱いている、詩織の理想像を崩すわけにはいかない。己が知る詩織の悪歴史を胸深くにしまい込み、考え抜いた返事をもたらさなければと一息飲み込む。


「親切にしてもらったんだ」


「…………」


「転校したばかりの頃に色々と教えてくれたんだよ」


「…………」


「忙しい立場のはずなのにな。俺なんかの為に時間を割いてくれるなんて」


「…………」


「あんなに尽くしてくる女子はそんなにいないと思うよ」


「…………」


「さすがは戦闘学が誇る序列十位、みんなの憧れる姫路詩織だな」


「…………」


「…………」


ん?何か間違えたか?

言い終えてから気づいたが、俺が詩織の事を伝える最中、鈴子は一度も声を挟まなかった。ただ無言で聞き続けて、話し終えてすらも無言だ。


「鈴子?」


「…………」


え、鈴子さん?

今まであった綺麗な瞳はどこに隠れたのかな?

自然み溢れた色をした瞳がお留守ですよ?


「鈴子〜?」


「…………」


無言だ。時々あったが、鈴子はフリーズしたみたいに固まる時がある。

だが、今回は少しおかしい。今まではここまで長くなる事はなかった。


もう1つの違和感に気付いてか、俺の意識は彼女の両手に引き寄せられた。

両肩が僅かに震えていたのだ。果たしてその手の内には────『捻れた空間』があった。


「す、鈴子っ?」


呼吸が一瞬止まり、乱れた声を上げてしまった。

見えたのは背景と膚色が捻れた空間。それは生きてきた人生の中で一度たりとも見た事がないものだった。


依然として鈴子が黙り込む中、近くで重い音が鳴り響く。気づけば入場口は開かれ始めていた。扉から伸びる縦一本の光からは、多くの声援が飛び込んでくる。

それに向かって少女は、変わらぬ顔で歩き始めた。


「ごめん……」


数歩先で立ち止まり、鈴子が静かにそう呟いた。

それは何への謝罪なのか分からない。


「落ち着いたから……大丈夫」


開ききっていない扉の前で、鈴子は表情を見せないまま言い続ける。

だが声は冷え切り、暗さを感じる声がそこにあった。


「……大丈夫」


今の己を知る少女は冷静になっていた。


「……逆ギレだったね」


既に手の中にあった『捻れ』は消滅し、何もない虚空がある。


「……自業自得なのに」


自虐に染まった少女は最後に振り向いて言い放つ。


「うん……分かった」


逆光で表情が見えない。それでも少女の晴れた声は確かに聞き取れた。

でも分からない事がある。


「何が分かったんだ?」


その問いに少女は、

































「私自身だよ」


少女はそう言いながら、一緒に歩こうと広樹の隣に立った。

読んでいただきありがとうございます!


ようやくここまで来ました!

やっとイベント開始です!

色々と考えましたので、それを読みやすい文章で投稿できたらと思います!


これからもどうかよろしくお願いします!

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