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第7話、詩織「ああ!彼に認めてもらうには今よりも強くならないと!黒く、長く、太っとい棘にできるように頑張ります!彼の身体が満足できる棘を作ってみせる!」

お久しぶりです!

なんとかできました!色々と間違っていたらごめんなさい!

第一銀行の件から三日。




「信じられないことだね」


「でも事実です!」


戦闘学の会議室に校長を含めた教職員が全員揃っている。


現在、詩織は『第一銀行の件』で起きたことの全容を報告。

横には銀行内にあった監視カメラの記録映像が大型パネルに映し出されていた。


「いや、君のことを疑っているわけではないよ。君の部下二名の報告と、銀行内にあった監視カメラの映像とも合致する」


困った様子で校長は映像に映し出されている少年を見ながら意見を口にする。

少年が銀行で起こした始終を見た教職員の全員が、驚きの色を隠せずにいる。

そして、校長もその一人だった。


「『信じられない』のは彼が起こしたことに対してだよ。現実的に考えてありえないことを彼はやってみせた」


校長は今までにない事例を目の当たりにして、感じたことを詩織に伝える。


「私がこのようなことを言ってしまうのはいけないと思うがね。私は彼を恐ろしく思っているよ」


それが日本で戦闘学のトップに立つ男が言った言葉であり、その重大性は詩織を含めた会議室にいる全員に伝わった。


「一番に恐ろしいのは、彼がどんな能力を持っているかだ。彼は一度も目に見える能力を見せずに敵能力者の一人を取り押さえた」


「はい。私も仮説を立てることしかできず、決定的な答えを得ませんでした」


「そう。そして一番に考えられるのは、彼が複数の能力を所持している可能性があることだね」


『っ!?』


その場にいる全員が校長の発言に凍りついた。能力を複数発現させた者の前例は今までにない。


もしも、彼が最初の例だとすれば、それが現在まで戦闘学に在籍していなかったことに恐怖を覚えてしまう。


誰にも管理されずに前例のない戦闘力保持者が一般市民と変わらずに過ごしていたのだ。


彼がその気になれば、力を使って街に大きな被害を発生させることもありえたかもしれない。


「そう驚かないでくれ。いや、恐ろしい仮説を立てた私が悪いね」


場の緊張を解くために、笑いながら自分の発言に反省の色を見せる校長。


「まったく、検査委員会は何をやっていたのだろうね。今まで彼を見つけられなかったなんて」


そして、少し若者っぽい口調でこれまでの不明点を説明する。


「いや、彼は秘匿していたのかもしれないね。小学生という年齢で自分の能力に気づき、今まで過ごしてきた」


詩織は戦闘力保持者が持つ決まりを思い出した。







小学生で行われる検査。

その検査で戦闘力があると判断された場合、戦闘学に入学する権利を得る。


だが、逆に入学を拒んだ場合、生活上の危険を減らすために戦闘力を失わせる治療を施され、強制的に力を奪う決まりがあった。






彼はその規定から逃れたのだ。

検査前に戦闘力を覚醒させ、あまつさえ誰にも言わずにコントロールを身につけ、検査から逃れた。あり得るはずがない。


(そんなことが小学生にできるわけない!)


詩織は彼の経緯を想像し、その結果を否定した。

同じ過程を想像している校長に肯否を問うた。


「そんなことがあり得るのでしょうか?」


「ありえないと言いたいが、現に彼の動きを見てしまったらね」


そうだ。彼の一連の動きは自分の力を完璧にコントロールしなければ実現できないことなのだ。


「犯罪組織にいる戦闘力者、それも透明化していた敵を捕獲した。それが普通に育ってきた者にできるとは到底思えない。彼はただの素人ではないよ」


ありえないことだ。


「彼がどうやって検査から戦闘力を隠蔽したのかも不明だ。検査機器に間違った情報を植え付ける操作系能力か、検査員本人を操った洗脳系能力か、それとも本人の技量だけで機器から戦闘力を隠蔽したか。……考えるだけ無駄だね」


考えるだけで恐ろしい。


「そして、彼が銀行で見せた動きだ。状況を整理する限り、複数の能力を持たないと成立しないね」


警備員の動きを止めた何か。

女性銀行員を怯えさせた何か。

天井裏に隠れていた部下を見つけた何か。

透明化した敵を発見した何か。


私がこの目で見た現実だ。


「さて、ここに彼の資料がある」


校長は机に置かれている数枚の資料を手に取り、この場にいる全員の視線を自分に向けさせた。


「政府関係の伝手でね、彼、荻野広樹を調べさせたんだけど、いくら情報を集めても戦闘力に関係する情報が一切なかった」


戦闘力を持っていれば、一般人よりも高度な動きが可能になる。どこかで尻尾を見せるはずなのだ。


「現在、彼は一般の高校に通う一年生だ。三年以上も彼は戦闘力の隠蔽をしてたことになる」


普通であれば、学校生活の中で力を使って他者よりも上を目指すはずだが、彼はそれをせず、周囲と変わらない評価を得ている。


「検査委員会と私たちの目から逃れるために、彼は今まで一切隙を見せなかった。いや、すごいね。男なら力を使ってモテたいとか考えると思うんだけどね」


校長は広樹の経緯を説明した上で、男ならこうするだろと冗談じみた意見を言う。


「しかし、今回彼は正体を現した。どんな理由があったのか分からないけどね。銀行に来た彼は犯罪組織と私たちが動いていると知った上であの行動に走った」


そうなのだ。


「あの笑える格好は自分の姿を隠すためかな。いや、面白かったね。まあ、監視カメラの記録を分析班にまわしたら顔が割れたんだけど」


あれは私の唯一の疑問だ。


「もしかしたら、身体を変化させる能力も使っていた可能性があるね。あの格好で素肌のほとんどが見えなかった」


それだったら納得できる。

肉体変化型の能力がある。

ハリネズミのような針を全身に覆う能力もあれば、鳥のような翼を生やして飛行できる能力もあるのだ。

つまりは常人を超えた自然界の動物の力を発揮していた可能性もある。


「さて、ここからは真剣な話になるけど…」


今まであった気軽い雰囲気から一転して、真剣な表情に変わった校長。


「荻野広樹、彼は私たちの存在に気づいているだろう。そして、私たちが荻野広樹に対して戦闘力を保持していると疑いをかけていることも。いや、疑いではなく確定的だね」


彼と自分たちとの関係を説明する。


「今まで戦闘力を隠蔽してきた彼が、今回私たちの前で正体をバラした。しかも、能力の正体を現さずにだ」


能力の正体を知られずに、能力を持っていると理解させた。あり得ないことを彼は行ったのだ。


「さて、次に彼が起こすアクションはなんだと思う?今まで隠蔽してきた秘密をバラしたんだ。きっと大きなことを起こそうとするだろうね」


その言葉は単純に見えて、とても恐ろしい内容である。

今まで隠してきた能力を公衆の場で見せたことには理由があるはずだ。


今までのことを考える限り、理由もなく秘密をバラすようなマネを彼がするはずがない。

恐らく、これから彼が起こすのは私たちに関係することであるのは確定的だ。


「さて、一つだけ詩織くんに聞きたいことがあるのだがいいかい?」


「はい」


校長はさっきまでとは違い、優しい顔と口調で詩織に質問をした。


「あの時の姫路詩織から見た荻野広樹の印象を聞きたい」


「何の注意もしないから、正直に答えてくれ」校長がそう付け加えて詩織をみる。

その場でしか感じることのできない感覚がある。


校長は詩織にその時に感じた彼への雰囲気を聞こうとしていた。

唯一彼に近づき会話をした彼女だけなのだ。


「一番最初に思った言葉は馬鹿という文字でした。しかし、そこから恐怖に変わり、最後には尊敬と感謝に変わっていました」


「尊敬と感謝か」


詩織は思ったことをありのままに述べた。


「敵と思っていた強者が突然に味方だったと知った時、何かが満たされたように感じました」


詩織は胸に手を当てて校長に正直な気持ちを伝える。


「どうやったら彼のようになれるのか、あれはまさに強者に思えました。あの時、彼が私の味方だと知った時、私は誰にも負けないと思えたんです」


そして最後の気持ちを伝えた。


「もしも、彼が仲間に…戦闘学日本支部の一員になってくれたら、世界に点在している戦闘学全支部の上に立つことができると感じました」


これが詩織の感じた少年の全てである。


教職員たちが彼女の言葉に荻野広樹という人物の影をみた。

その言葉に考えを練る校長。椅子に座りながら、パネルに映っている彼を見る。


そして、覚悟を決めたのか詩織の方に向き直り、一つの提案をした。


「彼を味方にできると思うかい?」


「私は可能性があると思っております」


「そうか……なら、詩織くん。これから君に任務を出す」


「はい」


「彼と接触し、彼を戦闘学に転校させるよう図りなさい」


「それは」


「今さら彼から能力を奪うことは難しいよ。どんな抵抗を見せてくるか分からないしね。それなら私たちで預かるしか方法がない」


教職員一同が校長の話に驚いている中、詩織は話を淡々と聞き続ける。


「転校の準備は私が進めておく。君はこれから荻野広樹くんに接触してくれ」


「了解しました」


そして最後に校長は、


「もしも、彼が戦闘学を拒んだ場合だけど、即刻彼から退避してくれ。何をされるか分からないからね」


彼がその気になったら、退避する前に殺られることしか想像できない教職員たち。

だが、それを一番理解しているはずの詩織は強く返事をした。


(彼が仲間に!広樹くんが仲間になれば!)


彼女の頭の中では広樹一色だったからだ。


今にも能力を暴走させてこの部屋にいる全員を棘で串刺しにするほどにまで彼女の心は燃えている。

色々と考えを巡らせながらも、彼が戦闘学に入った後のことを想像し、ワクワクする詩織がそこにいた。






そして詩織たちがいる会議室の真下には資料保管室があるのだが、翌日、資料保管室を訪れた者が発見したのは、串刺しにされた跡がある保管物たちだった。

これから頑張っていきます!

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― 新着の感想 ―
[一言] なんと美しいタイトル詐欺…!要素がなにも出てこないではないか!(褒め言葉)
[気になる点] 登場人物達、物事を決めつけるのが速いし激しすぎる…勘違い物だからと言えばそれまでだけど全く共感出来ないから読んでて頭に?しか浮かばん…
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