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第69話、天乃「灯花ちゃん!僕の美脚はどうかな?」灯花「……私は一体」

投稿が遅れてごめんなさい!

よろしくお願いします!

夕日が沈む頃。夕飯を一緒にする事を決めて、二人が訪れたのは独特な匂いが香る『回転寿司』だった。


ボックス席で鈴子がメニュー欄を見る中、広樹は備えられている注文用の端末に手を伸ばす。


「鈴子は何が食べたい?」


「玉子、マグロ、イクラ」


言われたネタを打ち込み、次に手慣れた動きで、湯呑みに緑茶の粉と熱湯を注ぐ。

鈴子が渡された湯呑みに口を付け、白い吐息を吐き出した。


「回転寿司…久しぶり」


そう言って、鈴子は目に入ったネタを、レーンから一つ取る。


もぐもぐ口を動かす鈴子の前で、広樹もネタを取ろうと手を動かす。

食べ進める中で、注文した皿も届き、テーブルの上が色鮮やかになった。


「それで、二つの願いは決まったか?」


軽さを持った声に、少女は喉を鳴らしてから答える。


「まだ……ちゃんと決めたい」


「日常に支障を起こすのは駄目だからな」


「分かってる」


念には念をと、願いの条件を改めて確認する。目の前の少女は変わった思考の持ち主だ。場合によっては命に関わるかもしれない。


「まあ、ゆっくり決めてくれ」


「うん」


「じゃあ手洗い行ってくるわ」


そう言って席から立ち上がり、鈴子の横を通り過ぎる。















少女は咀嚼そしゃくしながら考えていた。


広樹の心を変えるしかない……どうすれば……二つで叶える方法は……


頭を悩ませながら、無言で虚空を見つめる。第三者の立場から状況を理解すれば、どうしようもない思考図が見えていただろう。

引きこもりの少女が、自分の好きなものを他人に押し付けようとする図。


だが、それでも少女は心の内で必死になっていた。

『離れてしまう』、その言葉が見えない起源から聞こえていたからだ。その方法だけだ。そのきっかけだけしか持っていない。だから離せないんだ。


どうすればと、少女が思考を続ける。

そして聞こえてきた。







「ねぇ〜灯也とうや〜聞いてよ〜」


「なんだい、あ、天子あまこぉ」


レーンを挟んだ隣の席から、一際明るい声が耳を打つ。

目線を向けると、そこには背の高い美女と、身長の低い美男子が会話をしていた。


(カップル……?)


身長が逆転し、その差がありすぎるカップル。その姿と声色はどこか視線を追うものがあった。


「私の友達がねぇ〜最近ゲームにはまったみたいなのぉ〜」


「へ、へぇ〜」


「実はその友達ぃ〜、ある事でゲームが好きになったんだってぇ〜」


鈴子の瞳が大きく開く。


ある事……ゲームを好きになる事!


気づかない間に、鈴子は徐々にレーン側に身体を寄せていた。

なおも、二人の会話は続いた。


「ほぉらぁ〜よくテレビである〜ゲームの祭典何ちゃら〜ってやつ〜あれに参加して好きになったんだってぇ〜」


「が、外出届けはどうしたんだよ?」


美男子と同じ疑問を持つ。外に出るには外出届けが必要。序列者の場合は暴走の危険性の低さから、許可は簡単な手続きで取れる。でも、序列外は長い手続きと信用が必要だった。


広樹は……難しい……


「ほぉらぁ〜去年の終期イベントに景品があったじゃない〜それで旅行に行って〜そのついでで行ったらしいわよ〜」


終期イベント、景品、旅行。


理解が追いつけないまま会話が進む。解けていない疑問もあるが、今は聞かなければと心に訴え、鈴子は思考をレーンの先に向け続けた。


「それでぇ〜興味が湧いちゃったんだよねぇ〜。それでさぁ〜今回のイベントで目指さなぁい〜?」


今回のイベントの景品が?そんな都合の良い事が?

あり得ないと小さく口から漏らす最中、その疑問を美男子が言葉にしてくれていた。


「で、でも景品にあるのか?ゲームのイベントだぜ…」


「ゲームじゃないのよぉ〜ムフフフ〜実はね〜」


…………。


見つけた…


次に聞いた内容に、鈴子は口端を小さく上げた。














「ただいま〜って、スマホを睨んでどうしたんだ?」


「…………決まった、私の願い」


瞳の奥で底知れない光を宿す少女、その瞳に「お、おう」と返して、僅かな緊張を覚えながら腰を下ろす。


横目で覗いたスマホには、細かい文字列が画面を埋め、反対側からは読む事が出来なかった。


疑問を巡らせる少年と、何を考えているのか見えない少女。


変な空気が漂う中で、先に声を溜めたのは鈴子だった。


「一つ目のお願いは……その前に生徒証を貸して」


「生徒証か?え〜と、ほれ」


「ありがと……………………うん、終わった」


「何がだ?」


差し出されたのは、読みやすく向けられた鈴子のスマホ。

軽く操作されたそれには、『申し込み完了』を始め、二人分の個人情報が並んでいる。


「…………ん?」


広樹は固まった。読み間違いが無ければ、それは前に校長と話したイベントの参加登録だった。

生徒証にあった番号も記載され、目が点になる。


「鈴子さん……これは一体……」


手遅れだと思いつつも、それを正しく理解するには目の前の少女の言葉が必要だった。

心臓の鼓動が大きく耳に聞こえる中、広樹はフードに隠れた少女の顔を再確認する。

そこに見えたのは、


「広樹は何もしなくていい……私が全部……」


薄笑いを浮かべた少女がそこにいた。















「お!届いた届いた!」


「……私は……一体何を……」


笑みを作る女装好青年と、死んだ目をする男装少女。

二人を除けば、その部屋には誰もいない。


「灯花ちゃん」


そして椅子に座ってパソコンを見つめる好青年は、笑みを浮かべながら少女に口を開いた。


「この二人の登録情報は僕が管理するから。後は分かってるね」


目の前の好青年の思考を知っているのか、灯花と呼ばれた少女は何も言わなかった。

言っても無駄だと、もう遅いと、数分前までの行動で悟ったからだ。


「校長にバレない様にしなくちゃね」


障害となる人物の姿を思い浮かべながら、天乃は登録手続きを自らの手でおこなった。

これからも頑張ります!

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