第68話、鈴子「声をかけないで……」
書きあがりました!よろしくお願いします!
キーワードが上限いっぱいでしたので、取り消すキーワードを考えてから、「ヤンデレ」を加えようと思います!30日には必ず加えます!
鈴子は引きこもりである。
広樹と出会う前から今にかけて、『食う』『寝る』『ゲーム』の堕落した生活習慣。
偶に研究員からの呼び出しを受け、能力を使った研究実験に参加。
それが鈴子の全てであり、日常だった。
故の影響か……
「あの、やはり何かお手伝いを」
「っ!〜〜〜」
「あ、大丈夫です」
店員を前に、少女は少年の背後に隠れていた。
顔を青くしながらフードを深々と被り、力一杯に広樹の服を握り締める。
「おい、大丈夫か?」
「…………広樹」
「なんだ?」
鈴子は引きこもりである。
だがそれ故に、少女はとある病を発症していた。
それは度重ねた生活が作り上げた病。
少女は恐怖を顔に浮かべながら、背後から少年を見上げて言った。
「なんで……会話出来るの?」
「お前が出来ないだけだ」
鈴子は、やや『対人恐怖症』だった。
訪れていたのはショッピングモールから離れた位置にある大きな家電量販店。
鈴子に個人的な買い物があると言われ、連れて来られたのだ。
そしていざ着いてみれば、鈴子は気分を悪くしたのか、徐々に顔を青くした。
人が多く、雑音が入り乱れ、店員が話しかけて来る。
今までの生活とは異なる環境に、鈴子の体調は急激に悪化していたのだ。
「ショッピングモールの時は平気だっただろ。どうしてそんなに怯えてるんだ?」
店員がいなくなってから、未だ背後で顔を伏せている鈴子に問いかけた。それに小さな声を漏らす。
「店員が話しかけて来る……さっきは無かったのに……」
「あっちは店員が少なかったからな、自分で全部やる流れが店にあった。それと、そんなにパソコンとカタログ本を物色してたら、店の人だって対応するだろ」
ここは専門機器が揃った売り場だ。専門知識を揃えた店員が客に声をかける光景は多い。パソコン本体を見ていれば、設定方法や支払いプラン、最新情報を伝えに来る。
そして既に数回、店員に声をかけられていた。
「来てから少し経ってるし、店員も声をかけたくてしょうがないんだろ」
「私なら大丈夫なのに……それに、笑って近づいて来る……」
「笑って?あれは愛想笑いだから深く考えなくても」
「……きっと裏で何か考えてる」
「考え過ぎだ」
背後で顔を隠しながら、不安を胸に鈴子は震える。
それに広樹は半分振り返って、背後にある少女の頭に手を置いた。
「研究の手伝いの時はどうしてたんだ?研究員の大人達がいたんじゃないのか?」
「専用の設備で……やってもらってた」
「専用?」
「顔を合わせない設備」
鈴子はその時の環境を語り始めた。
戦闘学が用意した研究施設、そこで鈴子は能力を使った研究をしていた。
だが、能力の使用上で重要視されたのは、本人の精神状態である。
人が多い環境と対人会話の両方を苦手とした少女に対して、施設側は精神治療をするよりも、その精神に合った環境を揃える事に決めた。
過度なストレスが原因で、身体的、精神的、能力的に悪影響を及ぼさない為の判断だった。
また、精神治療のカウンセラーを紹介されたが、今も断り続けているとの事。
「……私に指示をしていたのは、無機質な声を出すロボット」
部屋の中で二人きり、ロボットは言う。
『次はこの様にお願いします』
『もう一度お願いします』
『ありがとうございました。今回の研究はこれにて終了です』
モニターに詳しい指示内容が表示され、ロボットが声を出す。
頼まれた内容が終了したら、会話の無い専用車に乗って帰宅する。
「その日以外はずっと家の中……」
買い物は全て運送屋を利用し、外の世界と離れた生活をしていた。
あの部屋が鈴子が生きられる環境だった。
「部屋の中が一番落ち着いていた……」
広樹を見ず、広樹の背中で顔を下げ、声音を落とす。
「でも……来たかった」
広樹の服を強く握り締める。
体調を悪くしながらも、強い意志だけでここまで来たのだと、その握力が気持ちの強さになり言葉となっていた。
「どうしてそこまで」
聞きながら、顔の見えない少女を見下ろす。
パソコンを買いたいのなら、ネットで注文する手段があったはずだ。
どうして無理してここに来る必要があったのか。フードで顔を隠した少女は、どんな顔をしながら説明したのか。見えないながらも、震えた声で想像がついていた。
きっと、ここに来たかった理由は、この場でしか得られないものがあるからだろう。
きっと、泣きそうな顔をしているだろう。
「広樹……」
鈴子はゆっくり上を向き、フードに隠れた顔を見せた…
「パソコン買オウヨ…」
『引き摺り込む』、その言葉を連想させる瞳で少女は見上げていた。
うん、分かってた…俺が一緒にいるからだ。
「予想はついてたけどしつこいぞ!?俺はそこまでゲームは好きじゃねぇえ!」
「っ〜〜!」
フロアの端にある非常階段の近く、販売エリアから見られない通路で、喧嘩に近い言い合いが起こっていた。
帰ろうとした広樹を鈴子が止めている状況である。
店員が一度来たが、ワガママっ娘に付き合ってるだけなのでと、適当な理由を言って退散してもらった。
本当にそんな光景だった。
「住所が聞けないからって、店に一緒に行って買おうとするとか、ありえないだろ!」
「私が全部買ってあげるからっ、だからっ」
さっきの怯えた鈴子はどこに行ったのか。鈴子はガンガンに攻めながら、広樹の手を引っ張り出す。
「環境を揃えたらっ、ゲームをやりたいって思うはずだからっ」
「新しいパソコンを買ったって簡単に変われるか!他人の金で買った時点で使いづらいわ!」
「っ〜〜〜〜だったら……」
広樹の見つめる先で、少女は静寂した。
「今使うよ」
「使うって?」
「お願い」
ややあって、少女が主張したのは広樹からもらった権利だった。
今さっきに頂いた約束、それを一日待たずに使った。
だが、次に広樹が言う事に、鈴子は肩を揺らす事になる。
「言っておくが、俺に害が及ぶ命令は出来ないぞ」
「っ!……だったら……したくない事を害にしたら全部」
「それは違う。確かにパソコンをもらう事自体も、ゲームをやる事も害じゃない」
納得出来ないと表情に出す鈴子に、理解が出来る言葉を選び、それを伝えた。
「どんな願いでも、永続性があったら害なんだよ」
「永続性?」
「ずっと部屋を掃除にしに来い。これから毎日遊ぼう。宿題が出る度に代わりにやっておいて」
「そんなお願いしないっ」
「一つ目の願いでパソコンを買わせる。二つ目は何をお願いする気だったんだ?」
「っ!?……」
広樹の言葉に鈴子は沈黙する。
「ゲームを毎日しろって言ったら、俺の日常にとって害にしかならない。結局は相手の心なんだ。俺がゲームを好きにならないと意味が無い」
「……」
「よく考えてから使え。永続性は無くても、一週間くらいなら許容範囲だ」
気がつけば、鈴子は両手を下げていた。考えを改めたのか、少女は俯き表情を出さない。
「…………分かった」
「おう」
「広樹の心を変えればいいんだね」
「……ん?今なんて」
「何でもない」
少女は新たな決心を胸に浮かべて、改めて考え直す。どうすればソレが手に入るのか。
(きっかけが必要……)
そのきっかけはすぐ近くにあった。
「いい事が聞けたよ灯花ちゃん!」
「あの内容がですか?」
「そう!これで目的が叶いそうだよ!」
これからもよろしくお願いします!
次回もぜひ!読みに来てください!




