第65話、灯花「あの最後は怖かった」
書きあがりました!
よろしくお願いします!
それと、考えている事が一つあります!
この小説のキーワードに『ヤンデレ』を加えようかについてです。
実際ヤンデレなのかが微妙です。もし頂ければ、助言をくれると嬉しいです!
また、感想やコメントもお待ちしています!
広樹が腰を浮かせて詩織を注意深く見つめる中、その視界外でもう一人、詩織を見つめる天乃がいた。
「詩織ちゃんもいるなんてね。これは偶然?必然?それとも運命?」
「それよりもちゃんと座ってください。サングラスを着けてますが、やはり目立ちます」
戦闘学で人気のある天乃をこれ以上目立たせまいと、灯花は声を強める。
「これ以上、私の胃に被害を与えないでください」
「しょうがないな〜」
そう言って天乃は詩織の席から視線を外し……
ジロッ
「廊下に首を出すのも駄目ですっ!次は多重能力者の席ですか!」
「だって気になるじゃん」
「戻れ」
言われて従い、天乃は元の姿勢に戻る。
だが、その口には不敵な笑みを浮かべていた。
「詩織ちゃんは知っているのかな〜?」
「どういう事ですか?」
「僕の持つ情報だと、詩織ちゃんは彼にご執心みたいなんだ。それが」
笑い震えながら天乃は語る。彼の思考が作り出した面白い現状分析を。
「観察対象であり、自分のチームメンバーである彼が、鈴子ちゃんと二人でデートをしている事を知っているのかな〜って」
灯花は顔を青くする。
終いには武者震いが少女の身体を襲っていた。
「……何でしょう……スゴく嫌な予感がします……」
「僕はワクワクで頭がどうにかなりそうだよ。そう言えばこの状況なんだけど、灯花ちゃんが観てる朝ドラの展開に似てない?」
「連想させないでくださいよ。アニメ版だと、最終回は残酷な結末を迎えるんですから。余計に恐ろしくなってきました」
それを聞いたからか、よりニタニタと笑顔になった天乃。
灯花は、既にどうにかなっているその頭を撃ち抜きたいと目端を吊り上げた。
「……何もしませんよね?」
「……ムフゥゥ」
やる!
鼻穴を大きくした天乃は絶対何かやると断定して、灯花はテーブルの下で靴を踏みつける。
「やったら撃ち切ります」
「どっちかにしよう。撃つか切るか。でも今は刀を持ってきて……」
「私の能力は知ってますよね、ブッ刺しますよ」
股間に鋭い突起物が触れる感触。
それに天乃はゆっくりと視線を下げて、それを確認した。
見えたのは銀色をした鋭い刀の切っ先。
「ぉぅぅ…ジェットコースターに乗った時のような、股間が冷える感触が」
「変な発言も止めて下さいっ、私も寒気に襲われてるんですよっ」
「どこが?股か」
「っむ!」
「ちょっ!」
セクハラと言える言葉に、灯花は躊躇なく刀を押し込んだ。
それを天乃は両の親指で白刃どり、テーブルの下では隠し芸の披露界が開かれていた。
「無駄な争いは憎しみしか生まないっ。だからねっ、この刀をしまいなさいっ」
「大丈夫です。私が生むのは肉染みですから、そのズボンに赤い染みを作ってあげます」
「まだ女になりたくないのよぉっ、さっさとその粗末なモノをしまいなさいっ、はしたないわよっ」
「いい加減に黙って下さいっ」
注目が集まらない程度に低い声を上げながら、微汗を額に光らせる天乃を睨みつける灯花。数秒経ってこれ以上は意味がないと、刀を隠した。
「大丈夫。やるって言っても、僕は無駄な争いをしないようにサポートに回るよ」
「無駄な争い?」
「僕の第六感が言っているんだ。この後も面白い状況が続くと……あれっ?」
天乃がチラッと右奥に視線をやると、二人の姿は既になかった。
「あっちにいますよ」
第六感は言っている。これはマズイと。
榛名と共に逃げた時の記憶が蘇り、己の持つ何かが危険信号を発していた。
未だに追いかけられた理由は分からない。怖くて聞けなかったからだ。だが、今になって聞いておけばと後悔した。
何故今、あの追いかけられた悪夢が思い出したのか。それは危険を回避するために、己の生存本能が発した叫びだったのではないか。
絶対に会ってはならない。もし会えば、恐ろしい何かが起こると予感し、顔から血の気が引いた。
故の行動はただ一つ。
「広樹、震えてるけど大丈夫?」
「男には震える時が時々あるんだよ。だから気にするな」
「それは絶対に病気だよ……それと」
鈴子の見つめる先には当然、震える広樹がいる。
だが、その広樹の姿が、
「どうして左手で自分の顔を鷲掴みにしてるの?」
「ヘッドマッサージだ。これには震えが治る作用があるんだ」
嘘である。もうなんでも良かった。今は顔を隠す事が優先だった。
だがその格好に、レジカウンターの店員も驚きを隠せず、目を見開きながら震えていた。
中二病フードと顔面鷲掴みのカップルがいるんだ。当然であり、驚かない方がおかしい。
「お、お会計が」
店員に悪いと思いながら、お金を差し出し、釣りをもらって扉を早足で向かった。
そして詩織の席にチラッと視線を送り、誰一人として見てない事を確認。
何やらコソコソと会話をしている。故にバレずに済んだのである。
「広樹……何で泣いてるの?」
「人は恐怖から逃れると、涙を流す生き物なんだ」
はは、涙が流れてくるよ。
どうしてかな……
「じゃあ追いかけようか……って難しいよね」
「気づかれました」
天乃と灯花の意識を向けた先には、瞳に鋭さを宿した三人。詩織と海香と空斗がいた。
その姿に自分達の存在が知られたのだと気づく。
「居場所はまだ特定されてなさそうだし、早めに出ないとね」
「しかし、貴方の場合は」
本当に目立つ。サングラスだけでは隠せない、光る雰囲気がある天乃だ。
店員や歩く人の注目を集めれば、絶対に気づかれる。
警戒態勢に入った詩織の前に、天乃の存在を出せばどうなるか。
何かを言われる事は目に見えていた。
「おいおい、何を言っているんだい」
思考を回転させていた灯花の前で、天乃は軽い口調で考えを口にする。
「灯花ちゃんの『透化』で逃げるんだよ」
それは灯花が持つ能力。自分もしくは触れた存在を一時的に『消す』能力。その『消す』は注ぐ力の度合いによって効果が二種類に異なった。『姿を視界から消す』と『物体的に消す』。
略せば、力を注げば注いだだけ、『対象の存在点を消す事が出来る能力』なのである。
その力に期待する天乃であるが、灯花は納得しなかった。
「お会計はどうするんですか?それと私の能力は、貴方までをすり抜けさせる事は出来ませんよ。今のところ使用者限定ですから」
「会計は置き手紙でも残して余分に出すよ。もし心配だったら校長に適当に言う。能力は透明化だけで大丈夫」
「校長に迷惑がかかる上に、扉が勝手に開いたらヤバイでしょう」
幽霊が出入りでもしたのかと周囲から見られるかもしれない。
だが、天乃には関係なかった。
「灯花ちゃん。このままじゃあ二人を見失うよ」
「いいんじゃないですか。私たちはここで静観していましょう」
「詩織ちゃんにバレたら大変だよ」
「何のために踏みつけてると思ってるんですか?」
そう言いながら、灯花は天乃の靴を踏んでいる足に体重をかけた。
それに天乃はにっこり笑い、
「ご褒美?」
本気で踏みつけた。理由は透明化して隠れるためだった。
「分かった。じゃあ僕の持つ手段を使うよ」
その言葉に、灯花はまた顔を青く染めた。
「大丈夫。出来る限り周囲に「やればいいんでしょっ」灯花ちゃんナイス!」
天乃の能力を知る少女は、仕方無しにお願いを聞いた。
二人は腰を低くしながら立ち上がる。
「じゃあ」
天乃はゆっくりと灯花を背後から抱きし…『ゴォッ』と腹に肘を入れられた。
「次やったら斬ります」
「冗談でも怖いな〜」
彼が肩に手を乗せた事と、周囲からの視線を確認して、灯花は能力を行使した。
なお、二人が残した不可解な現象は、確かに見られていた。
主に、詩織の席に座る一人の少女に。
読んでくれてありがとうございます!
灯花ちゃんの能力なのですが、本当に申し訳ありません!能力名を変更する可能性があります!
よろしくお願いします!