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第63話、鈴子「私より強い奴なんていない」

書きあがりました!

ぜひ!読んでもらいたいです!

似た雰囲気を持つ二人を会わせれば、良い関係を作れると思い、葉月を誘ってみた。


だが都合が合わず断られ、残りの二人に意識を向ける。


「詩織……まだ会いたくない……」


過去に抱いていた勝手な嫌悪感、今では重い罪悪感へと変わっていた。


結果、誘う決心が定まらない。


「残りは榛名…」


少し心配。でも、あのポジティブキャラで鈴子に良い影響を与えるかもしれない。


決めたらすぐ実行と、広樹はスマホに指を走らせる。


『ピピピ!ピピピ!ピピピ!』


…………。


『ピピピ!ピピピ!ピピピ!っん〜?』


「もしかして寝てたか?」


数十秒経ってようやく声が聞こえる。でも、その声は眠そうに揺れていた。


『いえぇ、少しぼ〜としてましたぁ』


「喋り方が博士になってるぞ」


語尾がダラ〜ンと下がった声色。完全に意識が定まってない証拠だった。


「今暇だったりしない?」


『今仕事中ぅ〜』


「そうか、すまん、コーヒー飲んで頑張れよー」


今の状態の榛名は駄目だと即決し、追求せずに話を終わらせた。


『えぇ〜では〜』


通話が終わり、広樹はスマホをしまう。
















ガラス天井がある長い通路。

日差しが照らすのは、白と橙色を合わせた明るい空間。


賑わいがあるそこは、様々な店が並ぶショッピングモール。


円卓ならぬ円椅子。十人ほどが座れそうな円型の椅子に、広樹はスマホ片手に待ち人を待っていた。


待ち合わせ場所を教えて数分。


大きな椅子にも関わらず、それに座るのは広樹のみ。

それに僅かな恥ずかしさを感じ始めていた頃、どこかからか視線を感じた。


「…………」


「…………とりあえず、その格好について」


引きこもり。その言葉の通り、少女は女らしい衣類を持ち合わせていなかったのだろう。


……だが言わせてくれ。


「どこの闇商人だよ」


フード付きの黒パーカー。

被ったフードからももまでに伸びた質の良さそうな黒い布生地。


……だがデザインがおかしい。


「なんでゲームに出てきた闇商人のデザイン服を着込んでいるんだ」


鈴子とやっているオンラインゲーム。それに出てくる闇商人が着ていた大きめのコート。


中二病が着そうなソレである。


別世界のデザインを丸パクリし、パーカーへと作り変えた物を鈴子は着用。


当然目立つ。場違い感が半端ないほどに。


「……これしかない」


「なんだって?」


「制服以外、これしか持ってなかった。パーカーの下は制服……」


これしか持ってない?じゃあどうしてソレだけは持っていたのか。

ゲーマーである彼女がソレを持つ理由。


「イベントの賞品…」


首を縦に振る鈴子。

広樹はそのパーカーには見覚えがあった。数ヶ月前に行われたゲーム内イベントの特別賞品。


そして知っていた。

ソレを持っている意味を。


「改めて世界ランカー入りおめでとう」


世界中何十万人の参加プレイヤーの中で、上位入賞者にしか贈られないソレを持っている。

鈴子は完全なるランカーであった。


「馬鹿にしてるでしょ」


「全然、全く。一周回って感服したよ」


「やっぱり馬鹿にしてる」


頬を膨らませる。だが言わせてくれ。


「ちゃんとしたのを買おうな」


ようやくショッピングが始まる。
















その前に食事。

気づけば短針は一時を指しており、空腹感を軽く感じていた。


「どれ頼む?今回は俺が払うぞ」


「ううん、私が広樹の分も払うよ」


「いや、それこそおかしいだろ」


女に代金を払わせられるか。

付き合ってはいないが、少しでも女の代金を持ってやる。その考えが広樹の中に存在していた。


だが、少女にも『ある考え』を持っていた。


「大丈夫。私の方が広樹よりお金持ってるし。女と男の世間的な目なんて気にしなくていいし。広樹はまだ戦闘学に来たばかりで常識も知らないし。私は戦闘学で長いし。同級生だけど私が戦闘学で広樹の先輩だし。色々考えても私が広樹の分のお金も出したいし。ねぇいいでしょ」


「す、鈴子?」


僅かな雰囲気の変化に、小さな違和感を感じた。


「お願い」


「……割り勘、割り勘にしよう!」


鈴子から視線を外しながら言う。


「私が全部」


「俺個人の問題で、女の子に払わせたら男としては駄目なんだよ。俺の精神プライドを踏みつけたいなら別だが」


その強気の込めた言葉に、納得出来ていない瞳で少女は口を閉じた。


「じゃあ好きなやつを選べ。俺が店員に言ってやるから」


「…うん、分かった」


鈴子はメニューに視線を移し、広樹は鈴子に視線を戻す。

そして、


「今更だけど、どうしてフードを取らないんだ?」


その質問に、鈴子はフードに触れて、深く被るように下げた。


「これ被らないとワーと来る」


「ワーって?」


「私の姿にみんなが熱狂する…たぶん」


「お前はアイドルか何かか」


意味不明な答えに、小さく肩をすくめながら言い放つ。


「取りなさい。食事中に被ってると行儀が悪いぞ」


「今日だけは許してよ。私は顔を隠してないと本当にワーってくると思うの」


「引きこもりにそんな事があるか馬鹿。いいから取りなさい」


「いいやぁああっ」


フードを取ろうと伸ばした手に、鈴子は身体を引っ込めて抵抗する。


必要に注目されないよう、小さな声で抵抗の声を上げるのは偉いと思うが、それは最初からフードを取れば解決した話だ。


だが、少女の声は確かに響いていた。


「そんな抵抗をするな鈴子っ、俺が犯罪者みたいじゃないか」


「広樹、女の子に脱げって要求する時点で犯罪者だよ」


「フードだっ、いいから取れっ、ちょっと目立ってるから……ドン引きしてる客がいる」


席にやや高めの仕切り壁がある。廊下を除けば前後の席に座る客からは見えない。


だが、鈴子の右隣、廊下を挟んで右斜め奥の席に座る黒髪のイケメンに凝視されたのも事実である。


…………あれ、鈴子見えなくね?


「広樹の行動にドン引きしてるんじゃない?私の声も合わさってマズイかもよ?まだやるの?」


コイツ、明確な事実を言いながら脅してきやがった。


随分ずいぶんと強気に成長したじゃないか。初めて会った頃のお前はもう少し内気なキャラだったぞ」


「私は変わると決めた。これからは新鈴子にゅーすずことして新人生ねくすとらいふ謳歌ぷれいする」


「フードを取らないと何も始まらないぞゲーマー。本当は恥ずかしがって被ってるのを俺は知ってるからな」


恥ずかしいのは分かる。ずっと引きこもっていたんだ。知り合いに会う可能性も考えれば確かに顔を隠したくはなる。

だが……


「顔を隠してちゃあ変わったとは言えない……というか」


今更気づいた。


「仕切りあるし、隣の席に誰も座ってないから取っても大丈夫だぞ…」


「…………店員が知ってるかも」


「コイツ……はぁぁ〜」


もう諦めるしかないと思った。

その溜息を吐き出す姿を見て、鈴子はフードの奥で満足だと微笑む。


「笑っているが、お前が変わっていないのは事実だぞ。外では一生顔を隠して生き続けるのか?」


「っ、そんな事ないよ」


反応を見る限り、何とも言えなさそうな顔を出した時点で、すでに色々と考え込んでいたみたいだ。

それだったら評価してもいい。


「その時が来れば、フードを取れよ」


「その時って?」


「過去の自分に後悔した時」


















「なに別の席を見てニヤニヤしてるんですか?気持ち悪いですよ」


「ん?いや〜面白いものを発見しちゃってね」


黒髪のイケメンはジュースを飲みながら、右斜め奥の席に座る者達から視線を外す。


「灯花ちゃん、もしも多重能力者と序列九位が一緒にデートをしてたらどう思う?」


「妄想ですか?夢ですか?九位が研究以外で外出なんて、そしてデートですか?想像するのも難しいですよ」


そう言いながら、灯花は腰を浮かせて、背後に振り向く。


「もし本当なら……」


沈黙した灯花に、イケメンは笑みを浮かべ続けた。


「彼の向かいに座ってるフードなんだけど、座る時に顔が見えてびっくりしたよ。どうして彼といるんだろうね」


天乃の言葉に、灯花は信じられないと叫びそうになった。






「序列九位、内守谷鈴子ちゃん」

これからもよろしくお願いします!

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