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第62話、葉月「……」さやか「これは……甘いスイーツが食べたい時の顔ですね」

書き上がりました!

これからも頑張っていきますので!

どうかよろしくお願いします!


昨日も投稿しましたので、確認をお願いします!

「おーらい、おーらい、おーらい、はいストップ」


プロモーションで使う予定の区域で、制服を着込んだ少女は、黄色い安全ヘルメットを被って、大人達作業員の手伝いを行なっていた。


「灯花ちゃんお疲れ。後はおじさん達がやるから上がりなさい」


「あ、はい。ありがとうございます」


「うちの子の嫁にならんか?」


「いえ結構です」


笑うおじさんに笑いながら一瞥して、灯花はある場所に足先を向ける。


「…………」


「こんにちは、灯花様」


「さやかさん」


灰色短髪のキャリアスーツ。灯花と同じ黄色いヘルメットを被ったさやかが、灯花に一瞥した。


「仕事の方は」


「先程終わりました。なので…」


「何かあったんですか?」


不安そうな顔で一つのビルを見るさやかに、灯花は小さな心配が芽生える。


「実はさっきまで葉月と一緒にいたんですが」


出された名前に幼さを持つ少女の姿を思い出す。


「貴女の……」


「……まさかっ」


苦い顔を作る女性を前に、少女は一つの確信を抱く。


「私は席を外しました」


「っ!またあの人はっ…」


思い浮かべたのは、好青年の笑顔。失敗した髪染めを改めて染め直したばかりの己の主人。


「行きましょう!あの人は絶対に何かをやらかします!」


天乃あまの様がですか?最近は真面目になったと聞きましたが…」


「アレは違いますよ!真面目そうな提案も出してますが、提案理由は駄人間の思考回路そのものです!」


そう言いながら、灯花はビルの方へと踏み出す。

さやかの声も聞かずに、己の主人の新たな恥を作らせないと、無理にでも介入してやると意気込んだ。


だが、


『ーーーーーーーーーー!!』


「灯花様!?」


爆発と共に、十階建てのビルの一部が崩壊。


爆発によって大質量の瓦礫が落下し、正面口にいた灯花を押し潰したのだ。


「灯花様!すぐに救助を」


「大丈夫です…」


瓦礫の一部から腕が伸びる。

徐々に肩から胴体へと、瓦礫を動かす事無く、物体をすり抜けて灯花は姿を現した。


「やっぱりあの人がやる事にはロクな事が無い!」


「怪我の方は」


「能力を使って回避しましたから大丈夫です!それよりもっ」


『ーーーー!「ぁぁぁぁあああああ!」』


「ガァハァァ!?」


二度目の爆発と突然の落下物に、能力の発動が遅れる灯花。


背中に当たったのは人間大にんげんだいの落下物。


声を上げながら落ちてきたソレに、灯花は四つん這いで睨みつけた。


「次は何をやったんですか!?」


「いや!別に悪い事は何も!」


「それでどうしてビルが崩壊するんですか!?」


灯花が怒りをぶつけたのは、傷だらけの好青年。

戦闘学が誇る序列第二位、光崎こうざき天乃あまのである。


「本当に何もしてないよ!僕は無実だ!」


「犯人はみんなそう言うんですよ!早く白状してくっ!?」


崩壊した階、その穴から巨大な何かが放たられ、天乃がいた場所に突き刺さる。


「これは……槍ですね」


「見たら分かりますよ!?」


材質が鉄とコンクリートで構成された巨大な槍。

それが黒髪少女の数センチ先で突き刺さったのだ。


巨槍を目の前に、冷静に分析するさやかと、それに叫ぶ灯花。


「し、死ぬぅぅ」


そして死にそうな声を上げたのは、刺さった槍の石づき、真上を向いた槍の最後尾部分、そこで天乃が死にそうな顔で生き延びていた。


「本気で殺しに来てるっておっ!?」


それはさび色をした何か。

鞭のように伸びた巨大なソレは、真上から降り打ち、突き立った槍を粉々にする。


「あれは……どうやって」


「また何冷静に分析してるんですか!?これじゃあ色々と問題に!」


崩壊した穴から飛び生えてきた脈打つ触手を前に、灯花は主人の心配よりも別の心配をする。


そして、


「……っ、いない、まさか逃げた!?」


無残な瓦礫の後には、彼の姿は無かった。


「あの馬鹿はぁああああ!」


端末を片手に、灯花は足を加速させる。


そして、慌てた少女が姿を消した頃、さやかは崩れた瓦礫で埋まる正面口の隙間に足を踏み入れた。


入って数分、階段を登って穴が空いた階に辿り着くと、巨大な触手を右手に絡ませた白髪の少女が外を見ていた。


「葉月、何があったんですか?」


「……」


「またこのは…」


言いたく無い事には無言を貫く。いつもの少女がそこにいた。


さやかは錆色の触手に触れて、小さく声をかける。


「これは何ですか?」


「……生物」


「早く戻してください。ビルから地面に伸びっぱなしですよ」


「分かった」


ソレは白い光に包まれ、形の崩壊が始まる。

破片から粒へ、粒から胞子へ、胞子から無へと姿を消した。


残ったのは瓦礫が散乱した風通しの良い穴のみ。


「何があったか、本当に言えませんか?」


「……」


「このビルの修復は?」


「今からやる……一分で戻せる」


さやかを背後に葉月は空いた穴から飛び降りる。


人体強化によって難なく着地したのは、瓦礫で埋まる正面口。


その中でも大きめの瓦礫に触れて、葉月は能力を発動する。


「……」


白い光が辺りに広がる。


表情一つ変えずに、触れた瓦礫も含めて散乱した全てのモノがビルの壁にめり込んでいく。


脈打ち、波を打つようにビルの壁を登っていき、穴が空いた壁にパズルをはめ込むように集約された。


「……」


何一つ変わらない顔で、葉月は地面を強く蹴りつけ、さやかがいる階まで飛び上がる。


上昇が停止した頃には、ちょうど目標の階におり、平面な壁に葉月はそっと触れた。


「……」


壁が内側にめくれ、見えたのはスーツの女性。


捲れて出来た穴から入り込み、葉月は再び能力で穴を塞いだ。


「相変わらず便利ですね」


「……」


「仕事の方は?」


「終わり……次の区域」


ここの仕事は終わったと伝え、次の仕事場に移動すると、葉月は少ない言葉でそう伝えた。


「何があったんですか?」


「……」


同じ質問を繰り返すが、相変わらず少女は無言を貫く。

それにさやかは、一つの考えを導き出した。


「広樹に質問させれば答えてっ!?」


少女の周りに火花が走り、さやかの皮膚を焼いた。


一秒にも満たなかった現象だったが、さやかの瞳にはただ事ではないと知らしめた。


「……広樹に関係する事ですか」


「……」


「その顔は肯定……」


長く付き合って来た少女だ。家族にも等しい間柄である事で、僅かな空気の揺れ動きで簡単な判断が可能だった。


さやかは胸に手を置いて、事の重大さに喉を鳴らす。


「どこまで知られたんですか?」


「……斉木の存在……終わった計画の一部……」


「それだけですか?」


「…………分からない」


顔に難色を示した少女に、さやかは自分の額に手を置く。


「情報が掴まれた経路は?疑われた原因などは」


「無いはず……外に出した時も……空港の時も……何も無かった」


戦闘学に転校した後の彼、広樹との今までの対面を思い出す。

様々な可能性を確認した上で会っていた。


故に、理由は彼が戦闘学に入る前までにさかのぼる。


斉木の時からか。


それより過去か……



















「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!?」


「何を考えてるんですかぁあああ!」


うつ伏せに倒れた男のももを、少女は右靴でえぐるように踏みつける。


かすかな涙を流す天乃に、灯花は本気で怒っていたのだ。


「あの怒りようは何ですか!第一位が完全に敵対心むき出しだったじゃないですか!」


巨大な投槍に謎の触手。

それらによって作られた現場は瓦礫と残骸の山となっていた。


天乃を踏みつける灯花でさえ死にかけたのだ。


当然、その原因である天乃に収まらない怒りを向けていた。


「本っ当っにぃ!何っ!をっ!したん!です!か!」


第一位に何をしたのかを問い詰めながら、暴力的なリズムで足に体重を乗せる。


それに天乃は両手を地面に叩きつけて、泣き叫んだ。


「分かった!教えるから!腿は痛い!」


涙ながらの精一杯の謝罪に、灯花はジト目で見下ろしながら、足を退けた。


「イタタタ……気になったんだよ」


「気になった?」


座って腿を撫でる天乃は、抱えている興味を灯花に伝える。


「あの娘がね。どうも彼と関係があるらしいんだよ」


「彼?」


「荻野広樹。多重能力者の彼だよ」


その言葉に灯花を瞼を大きく開く。


「何を聞いても無視だったからさ。少し深い所まで言ってみたんだ」


「いったい何を……」


「彼を襲う……それ言ったらプッツンされて吹き飛ばされたよ」


それが答え。

気になった事は確信へと変わり、葉月の怒りがその証明となったのだ。


「何からそれに至ったんですか?その、第一位と多重能力者の関係について…」


恐る恐るの質問に、天乃は笑みを口元に浮かべる。


「さやかちゃんの正体は知っているよね」


「人の身体を持つ人工知能。第一位の足りない部分を補助するための最新プログラム」


「そうだね。でも足りないよ」


それには足りない補足があった。


「さやかちゃんの量産体りょうさんたいを全国の中学、高校に一般人として紛れ込ませ、検査から漏れた戦闘力者を発見する。それが彼女のもう一つの役割だ」


人工知能は機械に意識データが存在する。当然それは写してコピーを作り出す事も可能。肉体の量産も第一位が能力で解決していた。


「その量産体の一つ、男版のさやかがいる高校で戦闘力保持者が発見されたんだ」


「しかしそれは」


「ああ、荻野広樹じゃない。知っての通り、彼は銀行で発見されたから違うね」


灯花の言葉を切って、天乃は言葉を続ける。


「発見されたのは山本……何だっかな?」


「名前なんていいので続きを」


灯花の言葉に咳払いをし、天乃は次に確信に近い一言を突く。


「山本君を発見した高校には、荻野広樹が在籍していたんだよ」


「っ!」


「未発見について問われたみたいだけど、荻野広樹の未知によって隠蔽されたと報告。計画にも色々と見直しが発生、量産体は全て回収、肉体は破棄して複数あった意識データは一つに集約。ここまでが現状だね」


天乃は頬に手を添えて、次には真面目な瞳を宿す。


「量産体を広げる計画を考えたのは葉月ちゃんなんだ。何の命令も無く、独自に提案した彼女の計画。だから疑いがあった」


何にも興味を示さない少女が創り出した計画。


戦闘学側としては得であり、政府と協力して計画は実行された。


だが、少女を知る天乃と一部の関係者達は、不可解に感じたのだ。


「手続きや資金問題が邪魔をして、全国に配備する事は出来なかった。故に選ばれた学校のみに配備した。でね」


新たな確信を次に出す。


「その選択する権利は、一部だけ葉月ちゃんにも有ったんだ」


そこからは分かる。天乃が確信を抱いたのは、葉月が選んだ学校に有ったのだと。


「多重能力者のいる学校を…」


「正解」


ニヤついた顔を被って、灯花の言葉に笑いをこぼす。


「葉月ちゃんの計画で。葉月ちゃんの選んだ学校で。偶然って怖いよね」


偶然では無く必然だと天乃は言っている。

それを確かめるために第一位に接近して怒らせた。


「葉月ちゃんが彼に近づいた話は無い。一つ挙げるなら、彼が達成した任務の後始末をしたくらい……いや」


一つあった。


「その後始末をする前に別任務があったね。それを本来の必要期間を大幅に縮めて達成し、すぐに出国した」


「もしや」


「日本支部の目が薄い範囲で会っていた可能性があるね。任務を早く終わらせて彼の所に向かった。それだったらあり得る」


「……以前から関係が」


少女が今抱いた仮説に、天乃は天を仰ぎ見た。





「何かあるんだろうね」



















『ピピピ!ピピピ!ピピピ!』


「ん?珍しいですね。葉月の端末に電話がかかってくるなんて」


「……」


葉月への連絡のほとんどは、さやかが中間に入って対応していた。

故に、さやかの端末ではなく葉月の端末にコール音が響く事自体珍しかったのだ。


『ピピピ!ピピピ!ピピピ!』


「……」


「出ないんですか?」


「機嫌……悪い」


眉間にシワを作る少女は虫の居所が悪かった。

当然、理由はさっきの出来事。


『ピピピ!ピピピ!ピピピ!』


少女にはその雑音が聞こえていないのか、徹底的に無視を貫く。だが、女性はそうはいかなかった。


「うるさいですよ。私に渡すか切りましょう」


その言葉に葉月は、苛立いらだった雰囲気で内ポケットに入った端末を手に、


『ーーーーーー!!』


「ちょっ!?」


突然起こった風圧に、さやかは体をとられて倒れ込んだ。

そして目にしたのは、


「は、葉月!?」


背中に白い翼を生やす少女の姿だった。

果てには頭上に輪っからしきモノも見え始め、天使が舞い降りたように幻想する。


「もしもし」


『葉月か?』


「うん、そう」


倒れたさやかの前では、能力によって誕生した可愛い天使が端末片手に会話を続けた。


『これからショッピングモールに行くんだけど、一緒に来ないか?』


「っ!?っ、ぁ……」


頭上の輪っかが消失し、背中に生えていた翼は枯れた植物の色へと変色。最後には抜け落ちてしまった。


「ごめん……予定……ある」


散り散りになって消えていく翼を背後に、葉月は暗い顔で瞳から生気せいきを失う。


『そうか、いやすまん。忙しそうな時に電話して。じゃあまた誘うよ』


「うん……ありがと」


通話が切れて、後に残ったのは生気が感じられない少女と、擦り傷を負った女性だった。


「偉いです。よく耐えましたね」


全てを知った女性は、優しく少女を抱きしめる。

これからも頑張っていきます!

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