第6話、新人銀行員「一人の少女がたくさんの尖った黒い棒を出して、ゴツい男達をあひんあひんさせるのってヤバイわ〜」
なんとかできました。
これからもお願いします!
5月31日に間違った部分を見つけたので修正しました!
「撃てぇぇ!!」
一人の男が上げた声によって、銀行内に武装集団が現れる。
そして、銃口を広樹と詩織に向けた。
これから始まるのは銃声と悲鳴の入り混じった劇場になると思われた。
だが。
「なっ!!」「これはいったい!?」「なんだこれは!?」
声を上げたのは先ほどまで銃の引き金を引こうとしていた男たち。
その男たちの身体は今、突如現れた無数の棘によって動きを封じられていた。
二メートルを超え、腕ほどの太さを持つ棘が、この場にいる武装集団全員を一瞬にして無力化したのだ。
「知っていると思いますが、初めまして。私は戦闘学一年の姫路詩織と申します」
「ッ!!」
武装集団がもがく中で、淡々と挨拶を始める詩織。
「貴方たちの組織がこの銀行を襲うことは知っていましたが、私が来ることも計画に入っていたとなると、内通者がいたことになりますね」
冷静にこれまでの経緯を説明する。
「どうしてだ!計画通りに行けばお前は!」
「はい。貴方たちは私を捕らえることで、政府、警察、自衛隊、そして戦闘学教員への抑止力にしようとしたんですよね。強い私を捕らえれば、確かに攻撃をするのは難しいと思います」
詩織は敵の思惑を看破した。
「貴方たちは私たちの計画を知った上で動いていた。でも失敗した。なら、考えられる理由はなんだと思いますか?」
「ありえない!計画の情報が間違っていたというのか!偽の情報を俺たちは!」
「いえ、私たちの計画は確かに貴方たちが持っているものと同じでしたよ」
「ならどうしてだ!!」
敵は全て計画通りに行くと思っていた。相手の計画の情報を手に入れ、相手の動きを読んだ上での計画だ。それを見破られた彼らは詩織を睨みつけて叫ぶ。
「それは……いえ、やっぱり説明はいいですね。無駄な問答は貴方たちに必要ありません。早く終わらせましょう」
敵の疑問に答えを教えようとした詩織だったが、今も一人の能力者を取り押さえている広樹を見た。
彼の瞳から伝わったのは、この状況を早く終わらせろという指示だ。
せっかちなんですねと詩織は思った。
そして無線機を片手に持ち、口元に寄せて、
「やりなさい」
『『はい!』』
無線機から聞こえたのは二人の声。
突如として、彼らの頭上に空間の歪みが発生した。
そして次に起こるのは、
「「「「「ガァァァアアアッ!?」」」」」
彼らを押しつぶすのに等しい強力な重力。
棘で捕らえられている彼らは、重力によって身体が棘の茎部分にめり込み、意識を失う者が続出した。
「次に起きるのは牢獄の中でしょう。では、さようなら」
彼らの結末を見ながら、詩織は最後に彼らのこれからを呟き、目を閉じた。
全てが片付いた詩織は、目を離していた彼に再び目を合わせようとしたが、彼の姿はどこにもなかった。
「どこにいったの!?」
次に驚くのは詩織の番だった。
彼らと対峙している間に、隙をみて逃げられたのだ。
残っていたのは気絶した透明化を使える男だけ。
詩織は慌てて、部下たちに指示を出す。
「今回のことを戦闘学に報告!内通者と彼のことを知らせなさい!」
「「はい!」」
指示に返事をし、すぐに無線機を使って連絡を繋いだ。
そして外に待機していた者たちが銀行内に入ってくる。本当ならここで一息いれるのだが、詩織は未だに心臓の大きな鼓動に襲われていた。
(彼は誰!どうしていなくなったの!知りたい!彼が何者なのかを!)
詩織の中で広樹の評価と興味が急上昇していた。
(逃げた!逃げた!逃げた!逃げ切った!)
高層ビルが並ぶ中にある二車線道路の端に位置する歩行者路に、今もなお走っている男がいる。
広樹である。
(なんだよアレ!いきなり銃を持った集団が現れるわ、いきなり地面から黒い棘が生えてくるわ、いきなり集団が棘にくい込みながら悲鳴をあげるわ、もうわっかんねーよ!!)
広樹はさっきまでの状況を振り返り、動揺と恐怖に襲われている。
(あの女が集団と訳の分からない会話をしている最中に俺をいきなり見てきて、続いて集団の一部が俺を見てきたし!)
(俺は関係ないよ!!)
その時、広樹は心の中であらん限り叫んだ!
広樹の中ではこの場から早く消えたいという気持ちでいっぱいだった。
気持ちが伝わったのか、彼女は『終わらせましょう』と言った。
そして、集団から地獄のような悲鳴が上がったのだ。
(えっ、何、俺の気持ちがどう伝わったら、集団の悲鳴に繋がっちゃうの?)とその時の広樹は思った。
なんとか悲鳴が轟く中で広樹はその場から脱出した。パニックに陥っていた広樹は正面のドアから出ずに近くにあった窓から出て行ったのだ。
よって銀行のドアを外から監視していた組織にバレず、姿を消すことができた。
(とりあえず帰ろう。今日のことは全部忘れて、これからのことを考えよう)
広樹は上着の内ポケットに隠されている宝くじを外側から強く触り、これからのことを考えた。
(次は別の銀行に行こう。とりあえず全額を現金で、その場で受け取れればどこでもいいんだ)
家に帰ったら、次の銀行を調べよう。
広樹の中では先ほどの状況の後にもかかわらず、お金のことでいっぱいだった。
(現金にしたら、何を買おうかな。いや、まずは金庫を買わないとな。それで誰にもバレずに買い物しないとな)
これからの明るい未来を見る広樹。
だが、広樹はまだ知らない。今回の事件に関わったことで、彼の情報が様々な場所で猛威を振るうことに。
頑張っていきます!