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第58話、空斗「試着室って狭いよね」海香「それがどうしたの?」空斗「……うん、なんでもない」

書きあがりました!


誤字脱字違和感があれば、ぜひ!教えてほしいです!

「とりあえず持ってきました!」


「……私が選ぶんじゃなかったの?」


苦い顔をする詩織の前には、籠に大量の衣類を詰め込んできた海香がいた。


「詩織さんはファションの知識は少ないでしょう!だから私が選んできたんですよ!」


「……まあ……確かに」


「でも、詩織さんの意見も尊重しますから!」


そう言いながら、かごからゴソゴソと、


「まずはこれです!」


「……このズボン…大き過ぎ」


「ワイドパンツって言うんですよ!このTシャツと着てもらいますから!」


海香に差し出された二点セットを持ち、試着室の前まで移動。


籠を持たせた詩織を個室に踏み入れさせて、海香は勢い強くカーテンを閉める。


「じゃあお願いします!」


「…ええ」


カーテン越しで強く言われ、詩織はおずおずと着替えた。


…………。


「着替え


シャァァ!


「……私のチョイスも中々」


詩織が伝え終わる前に海香がカーテンを開き、率直の感想を述べた。

そして、次の商品を詩織の足元にある籠から手に取る。


「じゃあ次はこのストライプスカートです!この白Tシャツと合わせて着てください!」


「……」


興奮する少女の言葉に返す言葉が思いつかず、再び差し出された衣類を受け取り、カーテンを閉めた。















「やっぱりこれが無難かな…」


流れで連れて来られた空斗はメンズコーナーで呟く。


小さな願いだった別行動がやっと許され、少年は一人、商品を手に取っていた。


「今頃は海香は詩織さんと服選びか…っ、あ、すみません」


背中に誰かの肩がぶつかる。


ブラホワの店舗内はとても広かった。

たぶんこのショッピングモールにある衣類販売店の中で最も広いと思える広さだ。


故に、人も多く行き来しており、すれ違いに身体が触れたりすることが多かった。


「やっぱり空いていないか」


そして試着室も満杯なのである。


ブラホワには試着室が至る所に設置してあった。


その中でも多くの個室が完備されている場所に訪れたのだが、当然のように満杯。


空斗はそこを諦め、別の試着室を目指した。


「……まあ予想はついてたけど」


店舗中央に設けられた個室に着いたが、やはり脱いだ靴が並んでいる。


人の声が溢れる店内。恐らく個室の前で出待ちでもしない限り試着することは出来ないだろう。



「空斗ー!選んでるー?」



「海香」


そこへ衣類が入った籠を持つ海香と、疲れた顔をする詩織が歩いてきた。


「いやー、少し離れた隙にさ、別の人に試着室を取られちゃったんだよー」


「僕はまだ試着もしてないよ」


「やっぱり。ちなみにどんなの選んだの?」


と、空斗が下げている籠の中身を漁り出す。


漁られている本人は最初から諦めているのか、抵抗する意思を示さなかった。


そして、海香は付いている値札を一枚摘む。


「やっぱりこの値段が普通だよね」


「値段?」


「それが詩織さんの値段感覚がね〜」


「普通に高いわよ」


鋭い声を上げるのは詩織だった。

彼女はそう言いながら、海香の籠から一着の衣類を適当に引っ張り上げる。


「三八〇〇円、服一着でこの値段はおかしいわ」


「……」


「さて空斗。この発言をする詩織さんに一言」


詩織の発言に沈黙を見せた空斗。

そんな少年に海香は自分の思考を伝えろと笑みを浮かべる。


「…………確かに高いですね」


「ちょっ、空斗!」


目を泳がせる少年に、海香は迫った。


「僕はレディースに詳しくないから、ちょっと分からないかな」


「詩織さんか!詩織さんの為に本心を捻じ曲げてるのかこの子は!」


海香は籠を床に下ろして、看破した思考に爆発した。


「本心を言いなさいよ!」


「別にいいじゃん」


足元に籠を置く空斗。

まくし立てる海香から視線を外して、沈黙していた詩織に顔を向ける。


「詩織さん、値段については気にせずに、自分の買いたい服を買えばいいと思いますよ」


「ちょっと!」


海香の小突こうとする手に抵抗しながら、空斗は気を使った言葉を伝えた。


その言葉に詩織は海香の足元に置かれた籠の中を見つめる。


「じゃあ海香の選んだ服は全部無し」


「ええっ!?」


詩織の完全否定に、海香は声を上げる。


「買うなら一着の限度額を二〇〇〇円くらいにしなきゃ買おうとは思えないわ」


「さり気なくイチキュッパを指定していますよね!」


ツッコミを入れる海香に、次は空斗が小さく小突く。


「海香、詩織さんがその値段で買いたいって言ってるんだからそうしなきゃ、それにお金を出すの詩織さんだよ」


「そりゃあ詩織さんの財布から出るわけで…そりゃあ強くは言えないけど…」


「じゃあ決まり。その値段で探してみよう」


「……うぅぅ分かったわよ」


少年の納得いく意見に少女は文句を返せず、床に置いてあった籠を持ち直す。


「じゃあ、空斗は試着室の確保をお願い」


「空いてないよ」


「なら出待ちよ」


「……分かった」


背中を見せる海香の指示に、空斗は改めて店内を見回す。


だが、やはり目に見える試着室のカーテンは閉じられていた。


「やっぱり空いていないわね」


「……残ったんですね…詩織さん」


「海香の行動力がね…はしゃぎがすごくて…」


「なんかすみません。僕のチームメンバーが…」


仲間の悪い部分に謝る空斗は、疲れた瞳をする詩織に小さく謝る。


「確か、あなた達は二人で組んでるわよね」


「ええ、まあ」


「やっぱり海香がチームを引っ張ってるんだ」


あのポジティブっぷりだ。知識は別として、人の前に立っても、仲間が不安になる要素はほとんどない。

詩織はそれを十分に理解していた。


「色々と明るいところがあるので、日常生活のように引っ張ってくれてますよ」


過去の記憶を振り返る空斗。その顔に詩織は笑みを漏らした。


「女に引っ張られて、何か嫉妬とかないの?」


「実力的に海香が上なので、嫉妬は逆恨みになりますよ」


「ちゃんと認めてて偉いわね、本当に」


詩織は空斗から視線を外し、何かを思い出しながら口を動かす。


「本当に偉いわ、自分の実力をちゃんと理解している男子は」


「ん?…何かあったんですか?」


気になる気持ちを胸にする空斗は、明後日の方向を見つめる詩織に質問した。


「私は序列者だから…女子で、一年で、最下位…まあ色々とあるのよ」


「は、はぁ」


「まあ、その面倒ごともプロモーションで全部解消するから、少しは楽になりそう…」


「解消?」


疑問が拭えきれない空斗、また新たな質問が思考に生まれる中、背後から足音が聞こえてきた。


「選んできました!」


新たな衣類を持ってきた海香だった。


「てっ、どうして動いていないの!」


「会話に花が咲いたから」


「何言ってるのこの馬鹿は」


空斗の言葉に海香は不満な態度をとる。

詩織はそんな海香の手に持つ籠を見つめた。


「値段はいいけど…やっぱり買おうとは…」


「天草先生に何か言われるので買ってください!」


海香の言葉に、詩織は担任教師の顔を思い浮かべて喉を鳴らす。


「でも試着室が空いてないし、似合うか確かめられないわよ」


「……それなんですけど」


詩織の言葉に反応して、海香は不満の顔で一つの試着室に指を向ける。


「アレはズルだと思うんですよね」


「アレ?」


ゆっくり歩きだし、その個室に少し近づき改めて見つめた。


「靴が二足…二人?」


「一人五着までの持ち込みなのに、アレだったら十着まで着られます」


「えぇ…そんな変な行動する人いる?」


「じゃあ試着室に二人でこもる理由は何?それ以外に思いつく?」


「……小さな子に着せてあげてるとか」


「靴を見た限り子供用じゃないわ。それに普通のスポーツシューズだし」


海香の洞察に空斗は思考を詰む。

その会話をする二人を背後に、詩織はその試着室に足先を向けていた。


「とりあえず、文句を言えばいいんでしょ、私が言ってくるわ」


「あ、私が行きますよ」


「じゃあ一緒に行きましょう」


「…………っ!?」


詩織と海香が共通の行動に走る中、空斗の頭に一つの思考が浮かび上がる。


「ちょっと待って」


「どうしたのよ空斗」


「……あれは本当に試着してるのかな?」


「……つまりは?」



「もし、エッチィーな事があの個室で起こってたら…」



「「…………」」


女子二人はジト目で少年を見つめる。

当然だ。思春期的な思考を言葉に漏らす少年に対して向けられるのは、その瞳以外はありえない。


「空斗は置いて、あの試着室に入ってる奴らに文句を言ってやりましょう」


「そうね、行きましょう」


「ちょ、ちょっとっ!」


慌てる空斗を置いて、海香と詩織は試着室に向かう。


「ちょっと待って、心の準備をまずしよう!」


「サイズはともかく、どっちもデザインが普通よ、可愛くもなければ女らしくもない」


「じゃ、じゃあ男同士で何かを」


「あなたのその思考に驚きよ。チーム解消する?」


止めの言葉を立て続けに吐かれる中、海香は足を止めない。


そして、あと数歩の位置までやって来た。


「空斗はそこで適当にっ!?」


「「っ!?」」


「おいっ!」

「なんだなんだ!」

「電気が消えたぞ!」


海香の言葉を遮ったのは闇だった。

目に見えていた風景が一瞬で黒に染まり、騒ぎの声が空間に広がり始める。


「停電?」


「ただの停電じゃないわ、非常灯も全て消えてる。それにここまで視界が悪いと、たぶん外の廊下も真っ暗よ」


「このショッピングモール全てが停電ですか…でも」


「普通なら、予備電源か何かが作動して非常灯が照らすと思うんだけど…」


照らされる光は何もない。

ブラホワの店内には窓はなく、太陽の光が入る余地は一つもなかった。

その中で詩織はポケットに手を入れて、


「端末で光を作って」


「は、はい」


詩織の指示に、二人も端末を取り出した。


「とりあえず、店の出口に向かっ!?」


次は詩織の言葉が遮られた。


一斉に照らした光である。

闇に覆われていた空間が一斉に晴れ、辺りの光景がはっきり見えるようになった。


「ついたわね…」


「はい、でもどうして」


一斉停電が一瞬にして回復した事に、空斗は疑問を浮かべる。


「それも今調べてるみたいね、店員の動きも慌ただしいわ」


他所に顔向ける詩織の瞳には、慌てた様子の店員の姿がある。


「人が多いから騒ぎも大きい…今日は買い物をやめにしない?」


その提案に海香と空斗は首を縦に振った。

読んでくれてありがとうございます!


そしてごめんなさい!前回の後書きに、早めに次回投稿すると書いたのですが、かなり遅くの投稿になりました!

次は先の予定をちゃんと確認してから伝えます!

本当に申し訳ありませんでした!


それと報告です。

金額の書き方ですが、一億円(1億円)、二八〇円(280円)、二三〇〇円(2300円)の書き方にしました!


早めに真面目な詩織さんから、アレな詩織さんにチェンジしたいと思ってます!

ギャグパートにもぜひ期待してほしいです!


これからもよろしくお願いします!

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