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第57話、海香「詩織さんみたいな強い女の子になりたい!」

書きあがりました!


報告を後書きに書いておきます!

「やって来ました!ショッピングモール!」


「ちょっと待ちなさい海香」


明るい声を上げる少女の肩を、詩織は右手で鷲掴みにした。


「ご飯を食べに行くって話だったのに、どうしてショッピングモールに来たの?いえ、来させられたの?」


「そこらのレストランに行くよりは、雰囲気のいいキャッキャッウフフな場所にあるレストランの方がいいじゃないですか!」


「休憩よ。お昼の食事だけよ」


「分かってますよ!じゃじゃ!食べる場所を決めましょう!」


「本当に分かってるの?」


疑いの目を向ける詩織の前には、案内板に視線を走らせている海香。

そして、黙る空斗。


「……」


「どうしたの空斗、ずっと黙ってるけど」


「いえ、視線がですね…」


詩織の質問に、空斗は泳いだ目で明後日の方向を見る。


「視線…?」


「あの…僕…ちょっと離れた距離に…」


「はいストップ」


ゆっくり下がる少年の腕を、案内板を確認し終えた少女が掴み取った。


「いや〜分かるよ〜、だってね〜、一対二だもんね〜、しかも一人は詩織さんだもんね〜」


「お願いだから離してっ、本当にヤバイからっ」


「……?」


詩織を置き去りにして、コソコソ話し合う二人。


「大丈夫よ〜、むしろ後で自慢すればいいんじゃな〜い、詩織さんとだぞ〜いいだろう〜みたいな」


「死ねとっ、僕に死ねと言うのですかこの人はっ、それは本当にシャレにならないよっ」


「何がならないよ、なの?」


「「っ!?」」


近距離から声がした。

当然、詩織が距離を詰めて話しかけたからである。


「いえ!私が空斗を女子の人気者にしようと計画していまして!」


「えっ、ちょっ」


「人気者…ねぇ」


「はい!でもこの子は人気者にならないって自己評価低めをかましてるんですよ!イベントで活躍すればきっとモテるのに」


「そうなんだ」


「海香っ!ちょっと何言ってるの!」


「詩織さん!ここはこの子に何か勇気が出るお言葉を頂戴したく存じます!」


空斗の意思を無視して、海香は適当な話題を作り出し、詩織もそれを真面目に受け止めて、慌てた様子の空斗を見る。


「空斗」


「は、はい」


「あなたは…中性的な顔だわ」


「はい?」


「顔も悪くないから、上級生の中に飛び込めば可能性はあるかも」


「…………ぁぁッ」


「良かったじゃん!ワンチャンイケるって!」


真面目な回答に、顔を真っ赤にする少年。その背中を強く叩くのは、この状況を作り出した張本人だった。


「あ、詩織さん!良さそうなお店を見つけましたから、そこに行きましょう!」


「ええ、分かったわ」


悪びれる様子もなく海香は、両腕に詩織と空斗の腕を絡ませて、レッツゴーと声に出して歩きはじめた。











「この超ジューシーハンバーグをデミグラスで一つ」


「私も同じのをお願いします、空斗は?」


「大根おろしでください」


「かしこまりました!」


明るい声を上げる店員は、操作し終えた端末をしまっていなくなる。

今この場にいるのは、並んで座る海香と空斗、そして向かいに座る詩織である。


海香が選んだのはハンバーグレストラン。広々とした開放感溢れる空間には、お客がたくさんいる。

そして、


「また…視線が…」


「それはもうお終い」


「視線?」


顔を青くする少年の腹に小突きを入れて、笑顔を浮かべる少女。

だが詩織は、


「……やっぱり感じるのね」


「え」


「私もこのレストランに入ってから視線を感じてるの…」


「いや、あの」


「自分で言うのもなんだけど、私は人の視線を集めやすい。そこは自覚してるの」


小さな動揺を胸にする二人の前で、詩織は鋭い声で事実を伝える。


「でも今回は少し違う視線が混ざってる…」


「それって…」


「その視線は…うん、複数いるわ」


序列者の直感に信用性があった。

故に聞いている二人の瞳が本気になる。


「もしかして、イベント前に潰そうとか」


「……ちょっと違う、この視線には殺意が無い」


「そこまで分かるんですか…」


驚く二人を前に、詩織は冷静に身にあじわう視線を経験で分析した。


「一人は…たぶん」


「お待たせしました!」


「「「ッ!?」」」


研ぎ澄まされた精神に、いきなりの声が飛び込んできた。


「まずは超ジューシーハンバーグの大根おろしのお客様」


「ああ、僕です」


空斗の前に、ジュ〜と音を奏でる鉄板皿が置かれる。

続いて、もう二皿が詩織と海香の前に置かれた。


「それではごゆっくりどうぞ!」


明るい声の店員が離れる。それを気に詩織は再び視線に集中した。


「料理が出来上がるの早かったですね…」


「……っ」


「ど、どうしたんですか?」


唇を噛む詩織に、目を丸くした空斗。


「視線が消えた…今感じるのはいつも感じる視線だけ」


「そ、そうなんですか」


「……」


「ん?どうしたの海香、ドアをずっと見て」


「えっ、ああ、うん」


空斗の疑問の声に、海香は定まっていない声を上げた。


「今なんだけど」


「うん」


「ドアが勝手に開いたの」


「……何を」


おかしい。

このレストランのドアは手動だ。

勝手に開くことなんてありえない。


「見間違いじゃないの?」


「本当よ!確かにこの目で見たの!」


疑う空斗に、本当だと語る海香。

その海香の言葉に、詩織はある仮説を閃かせた。


「透明化…たぶん見られていたんだわ」


「それって…」


「私たちが気づいたのを知って逃げたのだと思う」


詩織の語った可能性に、空斗と海香は喉を鳴らす。


「視線は複数あったんですよね…他は」


「完全に消えてるわ」


「そうですか…」


沈黙と同時に、恐れを含む警戒を纏わせる空斗と海香。

その二人の姿を見て、詩織は優しく微笑んだ。


「大丈夫よ。私が同じチームにいる限り、二人には手を出させないから」


「詩織さん…」


「些細な事でもいい、何かあれば私を呼んで。絶対に行くから」


「はい…」


同級生だが、経験と実力の差が詩織の信用を大きくしていた。

その言葉には高い説得性があり、二人の心に優しく響いた。


「じゃあ食べましょうか。大丈夫、食事中に襲ってきたら私が対応するわ」


「「はい!」」


警戒を消した二人は、テーブルに置いてあったフォークとナイフを掴み取った。















「やって来ました!ブラホワ!」


「ちょっと待ちなさい海香」


「……やって来ました!ブラホワ!」


「言い直さなくていいから」


食事を終えて次に訪れたのは、『ブラホワ』と呼ばれる衣類店だった。

『ブラック』と『ホワイト』の略語がその店の名前である。


「鍛錬の続きに行くわよ」


「ちょ、ちょっとだけ話を聞いてください!」


「……何?」


「ここに来た理由が二つあります」


「それで」


「一つは、鍛錬が始まってからの数日、学校以外で休めた時間は全くありませんでした」


「ええ、その成果として人体強化を一分も伸ばせたわ」


本来なら数ヶ月でやっと一分なのだが、それを数日でやり遂げたのだ。

だが、その分の苦労は大きかった。


「本当の話!私たちの身体がずっと悲鳴を上げてるんです!そろそろ休ませて上げないと壊れる勢いです!」


「……やり過ぎた?」


「教えてもらっているので言いづらかったのですが、ちょっとギリギリラインを迎えていました」


海香は数日隠していた事実を詩織に突きつけて、詩織は過去を思い出し、表情を暗くする。


「……ごめん、確かにハードだったかも」


「でも一分も伸ばせたのは本当に嬉しかったです!そこは本当にありがとうございます!」


「うん」


反省する詩織に、明るくお礼の言葉を語る海香。


「だから!今日だけでも休憩が必要と思い、ここに来ました!」


「でも、どうしてここなの?」


「空斗、それこそが一番の理由なんだよ」


疑問を浮かべる空斗に、海香は詩織の瞳をジッと見つめ始めた。


「詩織さん」


「な、なに?」


「詩織さんって今時の服を持ってますか?」


「……」


「やっぱりですか」


「どうゆうことなの?」


何も言えずにいる詩織の隣で、新たな疑問を口にした空斗。

その疑問に海香は訳を説明した。


「天草先生から頼まれたの。詩織さんが女子らしいことに無頓着だって」


「ッ…」


「無頓着?」


詩織がギクっとする中、海香の説明は止まらない。


「詩織さんはず〜〜と戦闘力一筋だったのよ。つまりはず〜〜と鍛えて勉強してたの」


「それって」


「買い物も遊びも知らないってこと!完全な仕事人間だったのよ!」


それが序列十位だった。

詩織は戦闘学に入学してから、娯楽の時間を絶った生活習慣をしていたのだ。

買い物も行かなければ遊びにも行かない。

友達もほとんどいない。


「だから天草先生に言われました!女子らしい習慣を覚えさせてって!つまりはオシャレなコーディネートをさせるんです!」


「天草先生ぇぇ」


詩織は苦いものを噛んだような顔をして、自分の担任の顔を思い浮かべる。


「天草先生ぇぇじゃないです!とにかく!私がここに来たのは、詩織さんを今時の女子にするため!さぁ!選びますよ!」


「……でもそんな、必要な時なんて」


「それを言うのは次の質問を聞いてからにしてください」


詩織の否定の言葉を切って、海香は明るい声で質問をする。


「詩織さん、今、交際したい相手はいませんか?」


「え、いないけど」


…………。


「……えっ」


けろっと返した詩織に、海香は本気で驚いた。


「いないんですか!男女のお付き合いですよ!ラブラブチュッチュですよ!」


「考えたこともないわ」


「……」


「海香、詩織さんがここまで言ってるんだから本当のことだよ」


嘘を言ったようには見えない。

キッパリと本当の意思を伝えた顔をする詩織に、海香は何か的外れなことを考えていたように、目を丸くして沈黙した。


「……とりあえず、女子らしい服を買いましょう、本当に、たぶん、役に立つ日が訪れるはずです」


「え、ええ分かったわ」

読んでいただきありがとうございます!

次回は早めに出すつもりです!


ちょっと修正を行っていますので報告します!


数字の書き方を現在、修正中です!


1人を一人、13時を一時、1週間を一週間、序列10位を序列十位、1億円を一億円など、バラバラだった数字を統一しました。


また、AK-74、CZ805ブレン…(銃の名前)、170cm、40%、500mなどは、漢字にすると分かりづらいと思ったので、修正しませんでした!


もしも、この部分でアドバイスがあれば、ぜひコメントをお願いします!


それと『ブラホワ』というお店は調べてみて、存在しなかったので大丈夫のはずです!

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