第56話、詩織「詩織さんの鍛錬教室!」
書きあがりました!
自分の書きたい続きをドンドン書きます!
これからもよろしくお願いします!
それは衣服が摩擦する音。
拳と拳が激しくぶつかり合い、汗の粒が弾け飛んでいた。
「持久力も身についてきたわね」
その言葉を合図に、大粒の汗を流す二人の影が床に倒れた。
「もう…無理ぃ」
「詩織さんっ…早すぎぃ…ですぅ」
場所は戦闘学が用意した訓練施設。
コンクリートで覆われた空間で、詩織がチームの二人に鍛錬をつけていた。
始めてから数日。
詩織が最初に着手したのは人体強化の持久性だった。
「約五分、あなた達が人体強化を全力で発動し続けられたタイムよ」
「一分も…伸びたんですね…」
「詩織さんの…スパルタの…おかげ…だね」
顔を赤くしながら、得られた成果に喜び合う二人。
それを見て、詩織も笑みを浮かべた。
「じゃあ次は『変更時間』を鍛えましょうか」
「えぇっ…ちょっとだけ、休ませてくださいよ」
「んー、じゃあ休みながら知識の確認をしましょうか」
「はい、お願いします」
倒れ込んだ二人の側に、詩織は腰を下ろす。
「変更時間の意味を答えなさい。はい空斗」
「戦闘力の発動を入れ替えるまでの時間です」
人体強化と能力は同時使用ができない、故に力を使い分ける必要がある。
そして、その使い分け、力を入れ替える際にはタイムラグが生じた。それが変更時間。
「正解。それで海香、あなたの変更時間の最速は何秒?」
「十秒強です」
「ちゃんと確認しているわね。空斗は?」
「同じく十秒強です」
「うん、二人の記録は良い部類。でもイベントまでには十秒以内まで縮めたいかな」
その考えに、二人の顔が青くなる。
次のスパルタ鍛錬を予告されたのだ。そりゃあ青くもなる。
「し、詩織さんは何秒なんですか?」
少しでも多くの休息を欲して、空斗は質問を繰り出した。
「三秒。それが今の私の全力」
「すごいです!能力を使った後に、すぐ強化もできるんですね!」
その言葉に、詩織は苦笑いを見せる。
「忘れてると思うけど、三秒経ってから追加で強化開始時間も合わせるのよ。私でも部位への完全強化までには約六十秒かかるわ」
「あっ、そうでしたね」
空斗は微汗をかく。
「強化に一点集中して六十秒、戦いながら強化するとしたら九十秒必要ね」
「九十秒…それが詩織さんの完全状態までに必要な時間なんですね」
「完全状態の言い方はおかしいけど、まあ合ってるわ。でも完全は滅多にしないかな」
「え、どうしてですか?」
疑問の声を上げる海香に、詩織は瞳を向けた。
「完全強化は確かに強い。でも強化分だけクールダウンが早まるのよ」
「ああ、確かにクールダウンは怖いですよね」
納得する海香の隣で、空斗は新たな疑問を思い浮かべていた。
「詩織さんは完全強化を抑えているんですよね。じゃあ、さっきの鍛錬の際には何パーセントくらいの強化でやってたんですか?」
それは数分前にやっていた一対二の体術鍛錬。詩織は人体強化をしていた二人を相手に、一人であしらっていた。
「聞きたい?」
「……やっぱりいい」
「聞きたいです」
考え直した空斗を置いて、声を被せたのは海香だった。
少女の声に詩織は吐息を吐いて、答えを伝える。
「十パーセント…以下かな」
「「…………」」
伝えられた言葉に沈黙する二人。
それを前に、詩織は苦笑いを作った。
「ごめんね、なんか」
「私たち、全力だったのに…」
「二人掛かりでも一割に満たないなんて…」
「うん、ホントごめん…」
頑張っていた生徒を傷つけてしまったと反省する。
でも、それが序列者の実力だった。
「じゃあご飯でも食べに行こうか!私が奢るから」
「いえ、そんな悪いですよ」
「最近大きな任務に参加したから、報酬が多く入ったのよ。だから頑張ったあなた達に奢らせて」
「だったら…」
合同作戦で活躍した詩織には、装備のメンテナンスと補充の費用を差し引いても、報酬金がたんまり残っていた。
それを生徒に使うことにしたのだ。
「じゃあ本格的な休憩にするわ。お店が建ち並ぶ区画に向かいましょう」
「「はい」」
三人は使った部屋を掃除し、更衣室に向かった。
これからもよろしくお願いします!!