第52話、統括者『日本支部の校長に対して減給をしようかな?』校長「そ、それだけは!」
書きあがりました!
よろしくお願いします!
そして報告です。
以前から行なっていた修正が終わりました。
読みやすくすることが主だったのですが、一部設定を変えましたので、報告します。
1、1話の内容の変更。
2、2話の最初、電車内の出来事の取り消し。
3、広樹の支給金の600万円を50万円に変更。
4、18話の病院、戦闘力の安定値の平均値を20%から40%に変更。
5、【英】があった話を修正して、【英】を取り消し。
不快に思われたら本当に申し訳ありません。
1話から修正を全体にかけて行いましたので、もしも読まれた際に、何か違和感や疑問、間違い、アドバイスなど、気づいたことがあればコメントをいただければ嬉しいです。
考えながら修正しましたが、面白くなくなった場面もあると思います。その際にはバックアップを取っていますので、何かあればコメントをください。
長くなってしまいごめんなさい。
これからもよろしくお願いします!
『いやー水臭いなー、私と君の仲じゃないか、それなのに演技をしていたなんてね』
「申し訳ありません……」
先ほどまでの気強さはどこにいったのか、円卓に座り込む統括者を前に、顔を青くする校長がそこにいた。
「処分は如何様にも…」
『ああ、別に謝らなくていいよ、最初から気づいていたし』
軽い口調で公言する。
『君は過去も今もそんな人間だったからね』
「そんな人間ですか…ハハ…」
『ああ、そんな人間だったよ』
最初から見抜かれていたと語られ、校長の瞳から生気が薄れる。終いには口から空っぽな笑いが漏れ出ていた。
『それに今回の教師陣の云々については、ちょっとだけ分かっていたからね』
「それはいったい…」
『天草くん、空港で作戦の概要を説明していた男を覚えているかい?』
「ッ…まさか」
思い出した天草先生は、ある事実に気づき肩を揺らした。
『あの子から全部聞いていたんだよ。ついでに言うなら、あの子は天草くんと同類だよ』
「ッ!」
その言葉に天草先生は身体を揺らした。
『俗に言う元戦闘力者だ』
「それは…つまり…」
『ああ、君と同じように『喰われた』人間だね』
それは天草先生の傷だった。
『彼も運良く帰ってきた大人の一人だよ。彼もまた、子供たちを任務に運用することに否定的だから、君とは話が合うんじゃないかな』
いきなりの乱立する事実に、天草先生は反応に遅れていた。
そして唯一、その言葉の中で最も驚いた事実があった。
「彼も五年前の大規模合同作戦に参加を?」
天草先生の中で、惨劇と呼ばれる大事件を思い出した。
だが、その問いに統括者は首を横に振った。
『いいや、一年前だ。疑いのある場所に彼を偵察に送り込んだんだけど…まあ分かるよね』
「それでも生き残っていたことが…っすいません!」
『いいんだ。それが当たり前の反応だからね』
失礼を言ったと天草先生は謝罪する。だが、統括者はそれを気にする素振りを一切見せなかった。
『五年前の作戦で多くの戦闘力者を亡くし、生き残った者たちも戦闘力を失った。その生き残りである君が、教師として子供たちを導いている。私はそれが嬉しかったよ』
「…勿体ないお言葉です」
『勿体なくない。これは立派な導き手に送る言葉であり、君みたいな人間に与えられる言葉なんだから』
そう言いながら、統括者は円卓から浮かび上がり、天草先生へと近づいた。
そして、立体映像越しながら、天草先生の肩に右手を置く。
『さっきの言葉は見事だった』
「ーー」
その言葉に天草先生の思考は一瞬止まった。
その言葉は戦闘学を統括する唯一の存在から告げられた言葉であり、その重さを十分に知る天草先生は、次の言葉を口に出せなかった。
『うん。…じゃあ次は君だよ』
「はい…」
肩から右手を放し、軽い口調に戻した統括者。
ふわふわと浮かびながら、校長の目線に高さを合わせた。
『荻野広樹の管理は日本支部に任せるよ』
「っ!…良いのですか?」
『暴言を吐かれて良い気持ちをする子供なんていないよ。今から転属をさせようものなら、彼は何を考える?』
「おっしゃる通りです」
理屈の通った説明に、校長は納得をした。
『本部からその件について全支部に通達しておく。文句は言われないだろう』
感謝しかない。だが、その言葉を発言する最中に、ニヤリと統括者の口元が吊り上がったように感じたのは、校長の気のせいか。
『だが、こっちも困ったことがあってね』
「困ったことですか?」
『ああ、今回の作戦で身柄を預かった子供たちの件なんだよ』
作戦終了後、身体を取り戻した子供たちを本部が預かっていた。
「まだ目覚めていないと聞きましたが…」
そう。一度は脳を取り出されたんだ。戦闘学の技術と戦闘力者の力を使っても、行われた非人道的な行為への回復は難しい。
『いや、三日前から昨日にかけて全員が目覚めたよ』
だが、統括者は早すぎる回復を伝えてきた。その結果に校長は目を丸くする。
「っ!それは嬉しいことですね!その通達もこれから行うのですか?」
『そのつもりだ。そのために今は情報をまとめているよ。でも…』
喜びの声を上げない統括者がそこにいた。
『あの子たちは戦闘力を手放すことになった』
その事実に校長と天草先生の表情は揺らいだ。
『全員に心的外傷が発見されてね。家族の言葉もあって戦闘学から距離を離すことにしたんだ』
「…心的外傷、どこまでを覚えていたのですか?」
『脳を抜き取られる直前まで…言葉も出ないね』
「……辛いことを」
全てが解決した訳ではなかった。
その作戦の被害者に刻まれた傷は一生癒えることのない傷になるかもしれない。
「やはり、soldierになっていた時の記憶は…」
『当然無かったよ。今までの記録通り、soldierに搭載された脳の方に記憶を保管していたみたいだ』
それがsoldierだった。
戦闘力者の脳を人工の脳に無線接続し、能力を発動させる最悪の兵器。
その非人道的手段を用いられた行為は、被害者の精神と脳に強い負担を強いられていた。
そして、過去の事例にもあるように、soldierに脳を接続していたという結果において、搭載された以降の記憶が残っている可能性も疑われてきたが、記憶があった前例は一つも無い。
故に残っている記憶は、soldierになる以前の記憶のみだった。
『でもね…一人残ったよ』
「残ったとは?」
『戦闘学に入ると決めた少女がいるんだ』
その事実に驚愕をする他なかった。
あの最悪の行為をされた後で、なお戦闘力を持ち続けたいと提言する子供がいたのだ。
それは到底信じられないことである。
「その少女はいったい」
『今回の重要人物だった『アイリ・エデルマン』だよ。あの子は親の反対に強く反発して、戦闘学に残りたいと発言した』
「『調和操作』の少女ですか…ですが、いったい何故」
未知を宿す能力を持った少女が残った。校長は驚愕を隠さないまま、その理由を聞いた。
『soldierになった後の記憶は無かった…アイリちゃんに関してはちょっと違ったんだ』
語られるのは、統括者が自ら本人に確かめた内容だった。
『家族の証言も確かめた上で、アイリちゃんに無かったものが、事件以降に生まれていた』
「生まれていた?」
『……歌うんだ、歌声にはなっていないけど、ただひたすらに、何か取り憑かれたみたいに、必死になって歌い続けている』
統括者の語る事実に校長は耳を疑った。
『理由を聞いたらね、『誰かが歌ってる』と言っていた。何度も何度も歌ってるよ。それも時々泣きながらね』
「誰かが歌っている…いったい彼女に何が…」
『分からない。でも彼女が唯一、回復に向かっている子供でもあるんだ。たぶん歌うことによって精神になんらかの影響を与えていると読んでいる』
歌い続けることで精神を回復させている。
いや、聞いた限りで言えば、歌に依存していることが正しい。
その歌が無ければ、少女がすぐに回復へと向かうことはなかったはずだ。
「失礼ながら統括長、質問してもよろしいでしょうか?」
『天草くん、ああ、質問を許すよ』
「アイリ・エデルマンが歌っている歌の名前とはいったい」
その質問に統括者は軽く天井を見上げた。
「夜の女王のアリア」、モーツァルトが作り上げたドイツ語の曲だよ』
読んでいただきありがとうございます!
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