表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/221

第51話、校長「最近私のキャラが滅茶苦茶になってないかい?」

『注意:昨日と一昨日に投稿を行いました!確認をよろしくお願いします!』


書きあがりました!

ぜひ!読んでください!

『なっ何を貴様は!』


突然観せられた残酷な画像に、混乱が抜けきっていない声が校長に向けられる。


「伝わっていませんでしたか?なら結論を」


『いっ、いやっ』


「あれは広樹学生の手によって成された、序列十位の完全敗北です。彼は仮想空間内で三十分とかからず無傷で彼女に勝利した」


ーー広樹の手によって

ーー三十分かからず

ーー無傷


それらにおいて、序列者を相手に勝利を収めた。

姫路詩織の実力はこの場にいる全員が理解をしている。

故に、この結果を作り出した者が、一ヶ月前までただの一般人だったーーそれは到底


『貴様はっ』


「『こんな危険な人間を』と言われるおつもりですか?」


言葉を妨げながら、校長は両手を口元で絡ませる。


「矛盾ですよ。貴方たちが求めていた実力ある存在じゃないですか」


『こんな結果を作り出す者をお前はっ!』


「結果?第十位に完全勝利する結果は喜ばしいことだと思いますが」


『そうではないっ!!』


冷静な態度を見せる校長とは逆に、声を荒げる別支部の支部長。


『あんな光景を作り出す危険人物を送り込んだことがだ!!』


「危険人物ですか…天草先生」


「はい」


校長は奮起する男から視線を外し、隣に控えていた女性教師に言葉をかける。


「失礼いたします、今回の作戦に引率した天草あまくさあいと申します」


両手をヘソの位置で合わせて頭を下げる。

そしてゆっくり上げた視線で、円卓を一度見回した。


「今の発言にあった『危険人物』という言葉ですが…それをあの画像のみで判断されたようであれば、撤回していただきたいと愚考いたします」


『ただの教師が何を言っている!あれで十分に奴の危険さが分かるであろう!』


『あんな酷い光景を作り出す人間が危険ではないだと!日本支部の教師は節穴か!』


暴言の矛先が校長から天草先生へと移り変わる。

だが、立場が高い者たちを前にして、その凛とした顔に歪みが一切生まれない女性教師がそこにいた。




「日本支部の教師が節穴…ですか、それは貴方たちに語る資格はあるのでしょうか」




鋭く尖った声質が女性教師の口から放たれる。

それは彼女を知る生徒たちが知らない姿。

優しい女性像を破き、隠していた自分を外に放り出したのだ。


「きっと報告が成されていなかったのでしょう。いえ、隠されたのでしょうね」


その黒いオーラを放つ姿と言葉に、少しずつ動揺に似た感情を抱き始める支部長たち。


「空港で貴方たちが派遣した教師陣が、彼に何を言ったかおおしえします」


それは天草先生が心に閉じ込めていた怒りに他ならない。


ーー無能を連れてきたんだ

ーー彼がここにいる資格は無い

ーーさっさとそのガキをここから追い出せ


語られたのは各支部の教師たちが放った言葉の数々。

だか、それだけでは終わらない。


「そして部隊を救った後の彼に何を言ったと思います?」


ーーどうして貴様がここにいるのだ

ーーお前は勝手に任務に参加したのか

ーー私たちの邪魔を

ーー無能なガキが一人飛び込んで


徐々に顔を青くする重鎮たちを前に、女性教師は冷えた態度で全て吐き出した。


そして聞いた者たちの表情から、その出来事について知らされてなかったことを思わせる。


それはその教師たちが報告をしなかった事実の証明だった。


「彼が危険人物?最初から最後に至るまで蔑んだ態度を向けられた彼は何をしましたか?」


それは荻野広樹が危険人物ではない理由の全て。


「危険な場所に飛び込んで部隊を全員救い出し、暴言を放つ教師たちに矛を向けなかった」


それが物語ものがたるのはーー


「彼が起こし起こさなかった全てが、彼の安全性の絶対的な証明です」


ーー証拠である。


円卓に知らしめた堂々の発言に、周囲は完全に静まり返る。


「…失礼いたしました。私からは以上です」


一呼吸をおいて、語り尽くした女性教師は校長の一歩後ろへと下がった。


『いや、日本支部には立派な教師がいることが分かったよ』


天草先生の目の前に姿を降ろす統括者。


『確かに証明になるね。いやむしろ』


次にその顔を向けたのは円卓だった。


『君たちが派遣した引率者たちに問題があったみたいだ』


その声は静まり返った者たちの心を冷やした。


『力がないからという理由で、彼に暴言を吐いたんだ。それは私も無視できないね』


『でもそれは能力を隠されたからっ』


『だが事実だ』


反論を示す教師に重い態度を見せる統括者。

だが、その意見にも一理ある。


『でも確かに能力を隠したのにも気になるね。それについても聞かせてくれないか?』


「……試したんですよ」


『試す?』


語ったのは校長だった。


「彼には人を試す癖があります。故に私も足元をすくわれました」


『…見抜こうとして、逆に見抜かれたんだ』


「さすが統括長、もう理解されましたか」


『ああ、そして納得もしたよ』


その少ない情報で統括者は全てを知った。


『君の能力鑑定からも逃れられるのか…彼の反応はどうだったんだい?』


「厳しい態度をとられましたよ。そして久々に世代の差を感じました」


世代が移り変わるごとに戦闘力者は進化する。

世代差があっても校長の力は誰もが認める実力がある。

だがその会話にある事実は、校長を超えた実力を持っていることの証明にもなった。


『つまり彼は世界中の教師たちを試したわけだ。ああ〜、これはヤバイね』


最初の雰囲気に戻る。

軽い口調を板に戻し、その姿を空中に泳がせる統括者。


『彼は何か言っていたかい?』


「何も言っていませんでした……でもそれが答えなのでしょう」


『そうか』


宙に浮かぶ統括者は納得する。

まるで荻野広樹の思考を読んだように、疑問を抱かず、それ以上は言わなかった。


『彼一人に時間を費やしてしまったね。そして各支部も一度時間が欲しいだろう』


……。


『今回の報告会は一時見送りとし、後日、本部から連絡する』


統括者はそう述べた。


『では解散。ーーじゃあね』


その言葉を最後に浮かんでいた姿が崩れるように消失。

そして流れるように円卓に座る者たちも姿を消した。


…………。

……。















「あぁ〜〜終わっだぁあああ〜〜ぁぁぁぁぁ!!」


「お疲れ様です、校長」


「いや〜、天草先生もお疲れ様〜」


校長は真顔ポーカーフェイスを、天草先生は凛とした態度を脱ぎとる。


特に校長は分厚く塗り固めた自分を脱ぎ去ったことにより、軽くなった本来の自分を解放していた。


「あぁ〜〜」


溜まった肺の空気を全て吐き出し、円卓に体重を乗せ、両腕に顎を埋める。


「どうだった私の演技は」


「似合いませんでしたよ」


「答えになっていないよ〜」


評価を聞いたはずが、感想が返ってきた。

そこから漏れた言葉に、明後日の方向を向く天草先生はクスッと笑いを見せる。


「私の知っている校長からは想像ができないつらでしたよ」


「そうかい?というか、つらって…さっきの私はそんなに悪役っぽかったかい?」


優しい天草先生から飛び出た不良単語に、校長は思考を回した。


「ええ、完全に悪い校長でしたよ。私の知っている校長は、優しく面白く慌てん坊な人ですから」


「…うん、最後だけは要らないね。坊って…坊はないよ〜」


優しく面白くは否定しない。

それは校長自身が気にいる、親しさを持たれる部分だったから。


「親しさ溢れる校長を目指して長いけど…久々にはっちゃけちゃったよ」


童心に戻った声を上げる

その姿に天草先生は横目をチラリと向けた。


「もう見たくないですよ」


「もうしないよ」


上半身を円卓から背もたれに体重移動し、校長は天井を見上げる。


「どうしてだろうね…」


「何がですか?」


微かに漏れ出た言葉に、天草先生は疑問を浮かべた。


「いや、私たちは広樹くんを守ったよね」


「ええ、これで彼に面倒ごとを負わせないですみます」


「それだよ」


校長は天草先生の言葉から、ある考えに言葉を漏らした。


「負わせない。…私たちはいつから彼を守るようになったんだろうか。それを考えてしまったんだよ」


「……え〜と…校長?」


「ん?伝わらなかったかい?」


困った顔を見せる天草先生に、校長は抜けた声で問いかける。


「いえ、そうではなくて」


校長の問いに、天草先生は一言。



「教師が生徒を守るのは当たり前じゃないですか」



「……」


「どうしました?」


突然黙る校長に、天草先生は動揺の瞳を見せる。

そしてゆっくりと天草先生に瞳を向けた。


「あーいやっ、そうだったね。その通りだ」


曇った空を絵に描いたような表情。

知っていたことなのに、考えることを放棄していたような顔。


その口から紡がれたのは、同意の意思だった。

納得だ。当たり前だ。反論なんて一つもない。


だが、その瞳は曇っていた。


「だが、それを言ってしまったら、危険な任務をやらせている私たちは…」


「ッ、それは……すいません」


謝罪をする。

それはいつも心に抱いているものへの故だった。


「どうして子供たちの手を借りなければ…」


「すまない…こればかりは難しいんだ。…本当に……」


顔に影が指す。

天草先生の言葉に、校長は何かを思い出したように、その声を暗くさせた。


「本来ならその任務は大人たちが行うはずなんだがね……」


「……私に力があれば…」


「やはり戻らないんだね…」


「戻る気配もありません…なんでっ…」


苦い表情をする天草先生の言葉に、校長はその重みを感じた。


それは彼女自身から漏れ出た悲しみだった。


「君は被害者だ。それに死なずに帰ってきてくれた。それだけでも嬉しかったよ」


「……力を失ったんですよ」


「命は大切だ。死んだら何も残らないよ」


慰めるように片手を肩に置く。


「そして、今も『アレ』を捜索している。世界にいる数少ない大人の戦闘力者のほとんどがね」


「…はい」


校長は今の現状を口にした。

そして肩から手を離して、優しい瞳を向ける。


「必ず取り戻せるはずさ。『アレ』の力が本部の解釈通りであれば」


「……広樹くんなら」


校長の言葉に、一人の少年を想像した。


「広樹くんに頼めば、もしかしたら」


「見つけ出すことが出来るかもかい?」


希望が薄く心に生まれる。

停滞し続けている現状に、今までになかったイレギュラーが支部にいる。

だったら、この状況を覆す存在に彼は至れると、熟練の元戦闘力者が抱いた。


「すまないが」


だが、その希望はすぐに諦めさせられる。


「広樹くんには関わらせたくない。もしも向こうが広樹くんを感知すれば、必ず姿を見せるーーそして」


想像したくない現実を言葉にする。


「彼の力まで『喰われたら』、もう手は出せなくなるかもしれない」


「……私は…」


その意味と痛みを知る彼女は心を揺らした。

何を考えていたんだと、弱みを抱いた自分に嫌悪する。


「この話は終わりにしよう!」


天草先生の傷をこれ以上触らないよう、明るい声を空間に打ち上げる。


「今は広樹くんという大事な生徒の危機を救ったことを喜ぼう。君も彼を救えたことを誇りに思えるだろう?」


「……ええ、そうですね、はいそうです。大事な生徒を救えましたね!」


黒に染まっていた心を晴れされる。

空元気に近いながらも、そんな自分は嫌だと、明るい自分を作り出した。


そうだ。勝ったんだ。

世界中の戦闘学を相手に。

だから、今はそれを喜ぼう。


「なんとか『順番』通りに行った。これで広樹くんに対する反感は多分ないだろう」


「最初に画像を観せていたら、もう取り合ってもらえませんでしたからね」


『企み』と『ある事実』の正体。

広樹が作り出した惨殺結果しょうり

そこから発生する嫌悪けんお意識いしきを広樹に向けさせないためにあったのだ。


時間が経てば見つかるデータ。


あの画像データがあれば、恐らく世界は広樹を危険人物として認識、そして捕縛。悪ければ研究のモルモットにされていた可能性もある。


故に、今回の作戦と報告会を利用し、全てを丸く収めたのだ。


作戦中において、けなさせ、救わせ、貶させ、弱みを突き、黙らせる。


報告会において、貴重視きちょうしさせ、危険視させ、弱みを突き、黙らせる。


まとめると、その結果によって、惨殺結果による広樹自身の印象の緩和に成功したのだ。


それを生み出せたことに、校長と天草先生は晴れた表情を見せる。


「じゃあ疲れたから帰るよ。数週間の疲れが溜まりに溜まってね」


「ええ、私も帰って休みます」


『ああ、帰る前に指令が一つある』


「指令ですか?いったい……」


「……ぇ」


その場にいるはずのない第三者の声に、校長と天草先生は一瞬呼吸を止める。




「……統括長…いつからそこに…」


『ん〜まあ、消えてすぐにUターンしたからねぇ〜、想像に任せるよ』


その答えは、単純に最初からと同義だった。

読んでいただきありがとうございます!


ネタバレになりそうだったので隠していたんですか、今回を含めた3話分の話は、少々ざまぁ要素が入っていると思います。

実は私、ざまぁはちょっとあれで…

でも流れでそういった雰囲気が必要になると思い頑張って書きました!


もしも不快にさせてしまっていたらごめんなさい!


この3話でざまぁ要素はこの話では終了です!


これからも、ぜひ!読みに来てください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 能力が欠けらも無いことを知ってるせいで能力奪われる下りの話が滑稽に思えるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ