第47話、榛名「私が本気を出せば!」
書き上がりました!
ぜひ!読んで欲しいです!
そしてこれからも頑張っていきます!
「博士ぇ〜」
場所はポットとモニター、多種多様な機材が大半を占める部屋の中。
その少女は、椅子に座る博士に力のない声を上げる。
「返してくださいよ〜」
「駄目だよぉ」
榛名が一つのポットに抱きついていた。
その中には、緑黒の光沢を放つ2丁の拳銃。
そして、予備マガジンと弾薬が入ったケースが保管されていた。
「私の子供たちなんですよ。どうして取り上げるんですか」
「人聞きが悪いねぇ、回収しただけだよぉ、代金だって君の口座に振り込まれたはずだぁ」
そのポットに入っているのは、榛名の製作した装備一式。
広樹が持っていた装備だ。
少女は愛着の湧いたそれを取り戻したいと、管理を担当している博士に懇願しに来ていたのだ。
だが、当然の結果、博士はその願いを聞き入れない。
「人に安全基準を合格してない装備を渡すのは論外。そしてそれを怠った製作者に返す道理はないよぉ」
「そんな〜」
駄々をこねる子供のような姿を見せる榛名。
「お金払いますから〜、もう渡しませんから〜、どうか返してください〜」
「駄目。それと私は今忙しいからぁ、部屋の外に行ってくれないかぁ」
「嫌です!返してくれるまでここにいます!」
反論の決意を胸に宿して、榛名は力一杯にポットに抱きつき、キーボードを操作する博士を睨みつけた。
その姿に博士は溜息を吐き、手を止める。
「忙しいんだよぉ。本当にぃ。生徒の安全という理由で頑張っているけどぉ、もう時間が少ないんだぁ」
「ブゥ〜、そんなのどうせ別の施設が完成させますよ〜。私たちは餌を待つ雛鳥で良いと思いま〜す」
「造った試作プログラムを持ち込み合うんだぁ。それらを統合して最も安全なプログラムを組み上げる。もし私たちだけが提出しなかったら予算減らされるよぉ」
「だったら既存のプログラムを一部変えて、適当に提出したらどうですか?」
子供の考えそうな駄案を掲げる榛名の姿に、呆れた博士は右手で眉の間を摘む。
「一部変えても駄目なんだぁ。プログラムが生徒たちの成長速度に間に合わない。それは知っているだろう」
「……世代ですか」
「ああ、時代が経つにつれて、若い世代が優れた力を持つようになった。教育方法が最適化、進化したんだねぇ」
少女より一周以上の人生を歩んだ博士は、過去に見て来た経験則を語る。
「戦闘力の解明を目指しながらぁ、成長方法も分析されてきたぁ。世界の技術発展もそうだぁ」
「宝箱って言いますからねー」
「ああ宝箱だぁ、今ある戦闘学の技術は、戦闘力の研究から生まれたからねぇ」
榛名の棒読み言葉に賛同を示す博士は、一呼吸を置いて、キーボードに手を向けた。
「脱線したがぁ、言いたいことは伝わっただろう。成長を続ける生徒の安全の為にもぉ、彼らに合うプログラムを組み上げなきゃいけないんだぁ」
「ブゥ〜」
結局聞いてくれない博士に、頬を膨らませながら、ブゥ〜言う榛名。
「だったら私にも」
『失礼いたします。主任、至急ロビーまでおいで下さい』
榛名が何かを言う前に、スピーカーから声が発せられ、博士はそれに反応し立ち上がった。
「呼び出しだねぇ。じゃあ私は行ってくるけどぉ…」
博士がこの場で仕事をしていた理由を、ジト目で見つめる。
「呉々もハッキングをしてポットを開けないようにねぇ」
「分かってますよ〜、行ってらっしゃ〜い」
その言葉を聞いて、博士は頭をかきながら部屋を出て行った。
そしてーー
「さてと」
ギギギギギギギギッーー
工事現場で聞く雑音が響き渡る。
そこにいるのは、ポットに張り付いている榛名の姿ーーではなく、
「何をしているのかなぁ?榛名くん」
「何って、ハッキングが駄目なら、壊すしかないでしょ!」
そこには、電動ハンマーをポットに打ち付ける安全ヘルメット榛名の姿があった。
「しっかし割れませんねー!何ですかこの強度は!」
「私が造ったポットだよぉ。力で割れる造りではない」
律儀に説明をする博士は、流れる動作で榛名の持つ電動ハンマーのスイッチを切り、顔面を鷲掴みにする。
「そしてぇ、ハッキングが駄目だからと言ってぇ、壊して開けるのが良いという理屈はないと思うがねぇええええ」
「痛い痛い痛い!!」
「まったく反省していないねぇ」
アイアンクローによって、頭蓋骨に激しい痛みを負う榛名は、もがきながら博士の右手を振り払った。
「じゃあ返してくださいよ!私の作品が使われずに保管され続けるなんて我慢なりません!」
逆ギレする少女の姿に呆れながら、博士はゆっくりと椅子に腰を下ろす。
「だったらまず反省した証拠を…」
「ええぇ『反省した証拠』は作りましたよ」
その言葉を待っていたのか、榛名はニヤけながら、パソコンの画面を見る博士を見た。
「どうですか博士!二世代先を行ったと思いますけど!」
博士は手をゆっくり動かし、確かめるように画面上を見回す。
そこにあったのは、綺麗に組み上がったプログラム。
「……本当に頭が痛くなるよぉ」
その言葉に、榛名はフンスと鼻息を荒げる。
「後は博士がブラッシュアップすれば、このプログラムは提出出来るんじゃないですか?」
「最初から榛名くんに手伝わせていれば…」
胸を張る榛名を前に、博士はほぼ不眠不休だった過去を思い出した。
「私の数週間はいったい…」
「いえいえ、あくまで博士の組み上げたプログラムに、私が手を加えただけなので!」
「慰めはよしてくれぇ。後が怖い」
博士はそう言って、パソコンの電源を落とすと、目元をかいて榛名へと向く。
「じゃあ榛名くん」
「はい!では私の子供たちを」
その期待を込めた眼差しに博士は、
「久しぶりにぐっすり寝るからお休みぃ」
欠伸をかきながら、何処からか出した毛布を身体に被せて、寝息についた。
「ちょっとぉおおお!!」
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