第46話、博士「お掃除代行サービスを検索だねぇ」
書き上がりました!!
ちょっと前から修正を考えていたところがあり、次の修正を行いました!
各話のサブタイトルに第○話とつけました!
内容の修正が済んだ話から第○話とつけています!
それとサブタイトルも少し変更しました!
途中から、 詩織「」 みたいなサブタイトルになり始めていたので、統一しようと思います。
これからも頑張っていきますので!
どうかよろしくお願いします!
「臭い」
「臭いねぇ」
「ヒグッヒグッゥゥグザイヨォ〜」
強い異臭が漂う空間で、鼻をつまんだ広樹と博士の目の前には、泣きべそをかいた榛名が尻餅をついていた。
当然ながら、広樹が背後からエクスカリバーを振り下ろしたからである。
キャスター付きの椅子を滑らせ避けた博士とは違い、その剣から排出された汁を真っ向から浴びた榛名からは、女子が出してはいけない異臭を漂わせていた。
「なんか話の流れで振り下ろしちゃいましたけど、部屋大丈夫ですか?」
「いやぁ、私も身を切る覚悟だったからぁ、気にしなくて良いよぉ」
「私は!?」
部屋の心配をする二人に対し、吠えながら立ち上がる榛名。
「女子にソレを放っておいてその態度は何ですか!」
「いやいや流れで。それに罰だって言ってたじゃん」
「女子にこんな酷い罰はないと言っているんです!」
「博士…」
「あぁ、無視で良いよぉ。全然反省していないようだからぁ」
今もキャスター付きの椅子に座る博士は、立ち上がった榛名を見上げる。
「とりあえず、シャワーを浴びてきなさい。本当に臭いからぁ」
「ぅぅ、行ってきます〜」
異臭を纏った少女は、目を赤くしながら部屋から退出。
そして次に博士は広樹を見上げた。
「来てくれて助かったよぉ。ありがとうねぇ」
「いえ、それで話なんですが」
「その前にこの部屋から出よう、臭いだろう」
「はい」
納得の意見に賛成する広樹は、立ち上がった博士の後ろを歩き、廊下へと出た。
「頼んだ物持って来てくれたかい?」
「はい、榛名から頂いた装備です」
歩きながら、広樹は背負っていたリュックから鉄の塊を2丁取り出し、博士の手に渡した。
「ありがとう、他のもリュックの中?」
「はい、弾薬やホルスターも中にあります」
背負った物を強調しながら、表情の見えない博士に言う。
「あと二つ装備があるんですが」
「その二つはどうしたんだい?」
「一つは前の任務で失くしてしまい…」
「ああぁ、まあ任務で武器を紛失する事はよくあるよぉ。それでもう一つはぁ?」
仕方ないと言いながら、次の質問を広樹にする。
「隠し傘…すいません、うちの傘立てに忘れてきました…」
「…いやぁ、榛名くんが作った武器ならしょうがないかぁ」
武器の名前を聞き、どのような形状か予想がついた博士は、それ以上は何も言わなかった。
「それで博士、渡したい物があると聞いたのですが」
「ああぁ、そうだったぁ。はいこれぇ」
ゆっくりと軽い声で、懐から一枚の紙切れを広樹に手渡した。
その紙に記載されていた内容に目を丸くし、半分慌てた口調を博士に向ける。
「博士、これは」
「うん、装備の返済完了書。校長から渡すように言われてねぇ」
「でも…」
申し訳なさそうな顔を作る広樹。
その横顔を見た博士は、知った口を開いた。
「報告書は私も目を通したんだぁ、そして君が今回の任務で自分を責めている事も知っている」
「じゃあ」
「だがぁ、校長と交わした約束を考えてみなさい。君の借金の話のあとに、彼はこう言っていただろう」
記憶の中で、とある日の記憶が蘇る。
『任務の成功失敗は問わず、終了後には装備費の全額を支払う』
校長はそう言っていた。
「終了後は全額払うだっけ?なら、約束は果たされたから、何も問題はないよぉ」
「……そうですか」
「不服かい?」
「……」
「そうかぁ。まあぁ私からは何も言えないねぇ。それは自分でしか解決出来ない問題だからぁ」
そう言って博士は、足を止めて胸元にかかったIDパスを手に持った。
「着いたよぉ」
ピッという機械音と共に、白い扉は開かれる。
「ごちゃごちゃしていて悪いねぇ」
「いえ」
何本も立ち並ぶポットと、電源の入ったモニターが数台設置してある無人の空間。
博士は空のポットの操作盤に触れ、独特な音を鳴らし、そのポットは縦半分に割れた。
「電話でも伝えたけどぉ、この装備は危険だから預からせてもらうよぉ。特に榛名くんの製作した装備はちょっと怖いから、厳重に保管しないとねぇ」
「はい」
広樹はリュックの中身を博士に預けた。
「隠し傘以外はこれで全部です」
「うん、確かに」
装備を空っぽの空間に置き、ポットを閉じる博士。
「でねぇ、私の提案なんだけどぉ」
「渡した装備の代わりを提供する話ですね」
「ああぁ。ただで装備を回収するわけにはいかないからねぇ」
昨日の電話でのやり取りで、提案が立ち上がっていた。
榛名の製作した装備の代わりに、安全基準を合格した装備を配布するという話だ。
「じゃあ、欲しい装備を教えてくれるかなぁ」
博士はカタログ端末を広樹に手渡し、椅子に腰を下ろす。
「今すぐ用意出来る物だったら、すぐに渡すよぉ」
「……博士」
「ん、何かなぁ?」
「やっぱいいです」
「……ふむ、それは何故?」
博士の質問に、広樹は最初にこの研究施設に訪れた日の事を思い出しながら語る。
「もとから俺に装備は要らなかったんですよ。前は流れで受け取りましたが、今はもう」
「……本当に要らない?私の製作した物を渡すつもりなんだけどぉ」
「ごめんなさい」
きっぱりと断る広樹に、表情が隠れている博士は声を落とす。
「そうかぁ、少し残念だねぇ」
「すいません」
「いやいいんだぁ、罪滅ぼしのつもりなだけだったからねぇ」
そう言い残した博士は立ち上がって、部屋の隅にあった棚から、小さなアタッシュケースを取った。
「でもねぇ、流石に何も渡さないというのは私個人としては納得出来なくてねぇ。受け取って貰えるかい?」
差し出された箱を受け取り、少しの重量感を感じた広樹。
何とも言えない表情を作りながら、中身を確認しようと、そこにあった卓にケースを置き、止め具を外すと。
「……博士…これは」
「何も渡さないよりは良いかなってねぇ。使わなくても良いからぁ、持って帰りなさい」
ケースを閉じたのは博士。
何かを言わせる前に、手に持ったケースを広樹の胸に強く押し込み、返すなと意思を伝える。
「あの」
「はいはいぃ帰った帰ったぁ。今になって言うがねぇ、私たちの研究施設、いや戦闘学の全研究施設はイベントの準備で忙しくてねぇ。私もこれから行かなきゃならないんだぁ」
のんびりした動きから一転、長いセリフを吐きながら、博士は広樹の背中を押し出す。
廊下に出ながらも、背中を押す力は止まることなく続いた。
「いやもうねぇ、迷彩ドローンと非殺傷用武装の大量生産、身体的外傷の測定器の開発とかねぇ、校長も鬼だよぉもぉ〜」
「ちょっと博士っ」
「はいはいぃ、出口はあっちだよぉ〜」
「いやっ、この装備はっ」
「私の自信作!もしイベントに参加するならぜひ使ってもらいたいねぇ〜」
「イベントっ?ちょっ」
「殺傷性は少ないから、イベントに持ち込んでも問題はないだろう。ああでもぉ、性能は保証するけど長期使用には向かないから、本当に必要な時に使ってねぇ」
「だから人の話をっ」
「まだ誰にも渡していない作品であり、生産環境が整っていない代物だから予備は無いよぉ〜。君が初めての実戦使用者になるのかなぁぁぁっとぉ!」
「うぉお!?」
言われるがままに出口に着くと、最後に痛いくらいの突っ張りを背中に放たれる。
足がもつれるも、転ばずに外に放り出された。
「じゃあ広樹くん、またねぇ〜」
その言葉を最後に、広樹の視界から博士の姿は閉まる扉によって消えた。
「報告書を見て、君を少し気に入ったんだよぉ」
読んでいただきありがとうございます!
これからも頑張ります!
この装備が後々ヤバくて、恐ろしい状況を…