第39話、アiリ(伝えtaいこtoがたくsaんaったんだ…)
お久しぶりです!
7月後半で長く間をあけてごめんなさい!
書けましたので投稿します!!
ぜひ!読んでもらえると嬉しいです!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
コメント感想待ってます!
大爆砕。
そこに起こった衝撃は地面を揺らし、大量の爆煙を生み出した。
そして出来上がったのは、瓦礫の山と化した壁だった。
「アイツは…」
「日本支部の…」
「なんで此処に…いやどうやって…」
「アンナっ、本当にアイツには能力が無いんだよな?」
「…無いわ。私には何も見えない…」
目を大きく見開き、身体を震わせる者たちは、黒い獣の上に座る彼を見て言葉を漏らす。
絶望的状況をブチ壊した光の砲撃、それが放たれた扉の影。
闇に覆われた空間から、一人と一機が姿を現す。
漆黒の巨獣に乗り、ただ一点を見つめる彼の姿は、この場にいる誰もが息を呑んだ。
メリルたちが状況を飲み込めずに棒立ちになっているなか、一人だけ、この結果を予想していたように振る舞う少女がいた。
「ッ!?」
一人が詩織の顔を見てを息を詰まらせる。
彼女の顔は笑顔だった。だが、それは彼が知る笑顔とは別の笑顔。
「詩織、彼はいったい何なんですか?……」
息を詰まらせた一人を置いて、メリルが口を開く。
彼女も今の状況に追いつけず、詩織が知る情報を知らなければ平常に戻れないほどに、心身ともに震えていたのだ。
「今そんなことを言っていていいの?」
帰ってきた言葉に表情が崩れる。
『そんなこと』とはなんだ。
これが『そんなこと』で済まされていいのか。
納得がいかないとメリルはまた質問をしようとする。だが、その前に詩織はメリルに銃口を向けた。
「詩織?」
「だから、そんなことを言っている場合じゃないでしょ」
笑顔を消した詩織は、銃口から火花を散らす。
そこから放たれた鉄の鉛は、メリルの金髪を流れるように揺らして通り過ぎ、背後にいた黒い影に命中した。
「まだ終わってない。広樹はまだ瓦礫の山から目を離していない。この意味がわからないの?」
メリルの背後で、蜂の形をしたsoldierが火花を散らせてもがくなか、詩織は淡々と口を開く。
「残弾が残りわずか。重傷者多数。全員が細菌兵器に感染。soldierはいまだに動き続けている。ジョン・マイヤーの生存は不明。私たちの最優先目的はジョン・マイヤーが持つ細菌兵器を活性化させる操作端末の破壊と重傷者の治療。たったこれだけのことをどうしてわからないの」
目を濃く染めた詩織は、状況と今なすべきことを伝える。
だが、何を言っているのか理解できず、ただ棒立ちになっている彼らの姿を見て、彼女の目の色はさらに濃く濃くと染め上げた。
「私は行く」
そして言った。
右手に銃を握りしめ、黒い獣に乗る広樹を見据えながら。
その彼女の姿に呼吸を止めるメリルたち。
「あなた達の言う無能とは何?あなた達は何を見ているの?」
無能とは何もできない者のこと。
自分たちの教師が口々に彼に言い放った役立たずの象徴。
「もしも彼が無能なら、私は無能以下の塵芥。あなた達はどうなの?」
黒い棘を出現させ、次々とsoldierを貫いていく少女は彼らに問うた。
彼が『無能』だったら、彼に助けられている自分たちは何だと。
「私は行く。彼のいる高みに立つ。そのためなら這い蹲って踠いてでも彼の背中を追い続ける」
メリル達の表情が完全に壊される。
目の前の少女が言っていることを理解したからだ。
彼女は日本支部の第十位。序列最下位にも関わらず、この場において誰よりも強い存在だと感じた。
その彼女が這い蹲ってでも追いかけると言った彼とはなんなんだ。
答えはすでにメリル達の中にあった。
「治癒系能力者は重傷者の治療!」
「攻撃、防御系能力者はクールダウンを起こさないようサイクルを組んで仲間を守れ!」
「残りは全体の補助だ!」
ジャックが口を開き、細かく最低限の言葉で指示を出した。
それに反応して、陣形が組み直され、倒れた仲間の元へと走り出す。
「広樹…」
「俺じゃない…」
詩織が漏らした言葉に、広樹は答えた。
分かっている。今見るべき存在は広樹じゃないことを。今見るべきなのは自分たちの敵だと言うことを。
ガチャっと白い長方形の武器が床に落ちる。
「俺(の所為)じゃない…」
心の中で汗を大量に流す広樹が、現実から目を背けようと一言が出る。
目の前には、爆煙に包まれる瓦礫の山。そして、その瓦礫の山を作ったのが、自分が乗っているロボットだ。
(人…いたよな…)
光線が放たれる前、そこにはガラス張りの壁があり、その中に人影があったことを思い出す。
だが、その壁は今になっては見る影もなく破壊され、壁まるごとが瓦礫と化し、爆煙が舞っていた。
(俺の所為なのか…俺がアイリの股間に触れたから…)
全ての始まりが、あの暗い部屋でアイリに触れたことから始まったのだと思考が巡る。その記憶が今になっては、精神を焦がす炎となり、あらゆる恐怖が襲いかかる。
(全てのきっかけは俺だ…俺は人を殺して…)
この先にある未来は刑務所生活。人殺しの前科が付き就職も難しく、テレビには自分の顔が映され、身内や友達に嫌悪される。
(俺の未来は…)
ドッガァアアアアアアアーーン!!
広樹と詩織たちの瞳が大きく開く。瓦礫の山から破壊音が轟き、複数の人影と異様な形をした影が姿を現したのだ。
「き、貴様ァアアア!?」
『KISYRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
服を焦がし、身体を発熱させたジョン・マイヤーがそこにいた。そして背後にはタコの形をした車台の大きさをしたロボットが火花を散らせながら吠えている。
ーー目の前が光に塗りつぶされた時、彼らの背後に擬態し隠れていたsoldier・octopusが、八本の足を使ってジョンらの身体を包んだのだ。
その直後に光がoctopusのボディーを焼き、壁ごと崩落した。
octopusの利用法は護衛。最も頑丈な素材と擬態型の能力を積んだ兵器。
彼らはそのoctopusによって光線を退けたのだ。
「誰だ貴様はっ、どうしてligerに乗っている!どうやってligerを操った!?」
表情を爆発させ、広樹を指差しながらジョンは喚く。
その顔からは怒りと混乱で荒れ狂っていた。
「貴様はいったいッ!?」
ジョンは言葉を止めた。
その理由は二撃目を放とうと再び口に光を収縮するアイリの姿を見たからだった。
彼と巨獣の姿に、ジョンは叫ぶ。
「soldierを全機出せっ、撃たせるな!?」
その言葉に反応し、部屋の其処彼処に暗い空間が開き、大量の影が飛び込んできた。
「あのガキを殺せぇええ!!」
一人の少年を殺せと言い放つ。だが、その言葉はアイリが許しはしなかった。
『ガキを殺せ』という言葉に広樹との記憶が意識に現れ覚醒する。
(お兄ちゃんに近よるなぁあああ!!)
『GAR!!』
「ちょっ!?」
広樹を尻尾で固定し飛躍、その場から後退したアイリは壁に張り付き、向かってくるsoldierに砲撃を連射する。
放たれた光の球がsoldierに命中し、いくつもの爆発をあげるが、soldierの数は一向に減らず増え続けていた。
あらゆる能力と弾丸が襲うなかで、アイリは能力と身体を操り、防御と回避運動をとる。
完全無欠のsoldierを彷彿させるなか、その紅瞳が一つの集団を捉えた。
(アレはっ!?)
(うん、同じ服を着ているからお兄ちゃんの仲間だ!)
(別のロボットが向かってるよ!)
(なら!)
(うん!助ける!)
進むロボットの群勢が、詩織たちを吞み込もうとしている。
それは許さないと、壁肌を抉って爆砕し、アイリは加速した。
『GARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
雄叫びを上げ、プラズマの塊を頭上高くに生み出し、青白い雷撃をsoldierに放ち焦がし尽くす。
爆雷と轟音を轟かせ、勢い強く着地したアイリの姿に詩織たちが瞠目した。
「広樹っ、どうして……ッ!?」
詩織は気づいた。そして次に気づいたのはメリル達だった。自分たちが彼によって守られていることに。自分たちという足手まといを守るために、ここに来たのだと全員が想像した。
そして、そのチャンスを敵は見逃さない。
「攻撃を集中させろ!脳はもうどうでもいい!絶対に始末しろ!」
spider、bee、snake…あらゆる種類のsoldierが広樹たちへと突撃。
波のように押し寄せた大群は、備わった武装と能力で一斉砲撃の火蓋を切る。
瞬時、目の前に黒い柱が何十本も乱立し、soldierの攻撃の渦を塞きとめる。
炸裂し砕けた黒い柱の隙間からは、手を振り上げたメリル達を覗かせた。
数秒で撃砕された黒い柱。その崩壊と同時にsoldierへと怒涛の一斉砲撃が放たれる。
『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああいあああああああああああああああああああああああああ!!』
『GARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR RRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
力強い声が上がる。
アイリと詩織、メリル、ジャックも合わさった何人にも並ぶその雄叫び。
すでに詩織たちはクールダウンを迎え、能力が使えなくなっているはずだった。だが、そんな彼ら彼女らを突き動かしていたのは、たった1人、『荻野広樹』の存在だ。
(もう守られないって誓ったのに!)
(私は一瞬でも彼のことを弱いと思った!)
(俺はなんでアイツのことに気づけなかった!)
詩織は過去の後悔を思い出し、メリルは過去の間違いを嘆き、ジャックは過去の自分に心を焦がした。
三人だけじゃない。ここにいる全て者が過去の自分に強い嫌悪を抱き咆哮していた。
過去の自分が生み出したのが、『荻野広樹』の足枷になっている自分たちなのだと、心に鋭く刻み込む。
後悔という刃が胸を突き刺し、深い傷口からは血が流れ続けていた。
この血を止めるには、この傷口を治すにはどうすればいい。
答えは単純だった。
限界を突破した意思が連なり、詩織たちは能力を行使する。
彼ら彼女らの意思はただ一つ。
『這い蹲ってやる』
『踠いてやる』
この言葉が、この想いが、全て奮起させていたのだ。
あらゆる爆音轟音騒音が入り乱れ、全てがぶつかり合う。
物体、光線、雷撃、炎、光。
床の表面は弾け飛び、目の前が嵐となる。
生み出された残骸の数に比例するように、一人、また一人と膝をつく戦闘力者が現れる。
だが、その瞳に光は消えず、手を前に出し続けた。
詩織たちは動き続けていた。
今も自分たちの体内には細菌が流れている。
終わっていた。
もしも広樹がガラス張りの壁を破壊しなければ、敵はまた細菌の力を使っていただろう。
だが、彼らは外に放り出され、細菌を体内に入れられたのだ。
それによって細菌を活性化させることができなくなった。
荻野広樹が作り上げた、限界状態の拮抗。
正真正銘の最終交戦。
そして一人の戦意も途切れない攻防が、ジョン・マイヤーの顔に恐怖を生む。
「どうしてだっ、お前たちはもう終わっていたはずだ!」
ジョンはあらん限り叫ぶ。すでにsoldierの残機が限界を迎え、最初の余裕が嘘のように消えていた。
汗を流し、唾を吐き散らしながら、その恐怖に入り混じった怒りの形相は一人の少年に向く。
「お前だっ、全てはお前が原因だった、お前さえ来なければ何もかも上手くいっていたのだ!」
右手でポケットから一つの端末を取り出した。それは細菌兵器の操作端末とは別の端末。それを見たジョンの仲間らは目をギョッと見開いた。
「マイヤー様!施設にはまだ脳が保管されていますっ、それを使うのは!?」
「黙れっ、すでにsoldierの残機は少ない!このままでは私たちの身が危ないのだ!残された手段はこれしかない!」
制止を振り切り、ジョンは端末を操作する。そして、施設内からサイレンと警告が鳴り響き始めた。
その警告の内容は『施設の自爆』。
施設の崩壊へのカウントダウンが始まったのだ。
「戦闘学っ、君たちには施設と滅んでもらおう!もう会うことはないだろう!さあ、最後の時までsoldierと遊んでいてくれ!ハハハハハハハハ!!」
そう最後に言い残したジョンは、仲間を連れて扉の中へと姿を消す。
そして残された者たちは、身体を震わせながら、交戦を余儀なく続けさせられていた。
「おいっヤバイぞ!?」
「このまま終わるのかよ!?」
迫り来る結末に怒号を吐き、意思の炎が消えようとーー
『GARRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
側にいた黒い巨獣は大きな声を上げる。
そして、この場にいた戦闘力者全員の身体が浮かび、巨獣の周りを浮遊した。
「おいこれは!?」
「何をする気なんだ!?」
仰天した者が現れるなか床を踏み抜き、背後にあった扉へと飛び込む。
赤い光が飛び交い、警告を知らせる音が入り乱れるなか、巨獣は止まらない。
向かう先にはsoldierの影もなく、交戦になる要素は何一つ無い。
そして、行き止まりに差し掛かり歩みを止める。
『GAR!』
浮遊が解け、床に降り立った詩織たち。
何も理解できずにいた彼ら彼女らを置いて、アイリは、突き出した前脚を変哲のない壁に押し出した。
(ここだよね!)
(うん!)(絶対にここだよ!)(今開けるから!)
『ハッキング』の発動。アイリ達はその壁の奥にある空間を知っていた。
ビィィィと音が鳴り、壁はシェルターのように上へと上がっていく。
そして目の当たりにした空間に詩織たちは、瞳を大きく開き、驚愕をあらわにした。
そこは数え切れない数のカプセルが広がっていたのだ。
「……ここにあったのね」
カプセルの中を見て理解する。そこは何百個にも並ぶ『脳』を保管する部屋だったのだ。
一つのカプセルに、一つの脳が数本のコードに繋がれて浮いていた。
そして、この部屋の最奥、この空間内で最も大きいカプセルに意識を奪われる。
そのカプセルには一つの脳を中心に、何十個もの脳が入れられていた。
「アイリ・エデルマン……」
詩織がカプセルに記載してあった文字を口にする。
『GARRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
瞬間、部屋の入り口にいた巨獣は咆哮を上げて、爆音が響いた。
「っ!soldierが来るぞ!」
入り口の外に見える通路より、多数のsoldierが姿を現したのだ。
巨獣はそれに交戦するように、前へと出て砲撃を放ち続ける。
(お兄ちゃん…)
尻尾で巻かれている彼をゆっくりと背中から持ち上げて、床へと下ろす。
(もっと一緒にいたかったけど…)
ずっと巻きつけていた尻尾をシュルシュルと解いていく。
(もうおしまいだね…)
巨獣は広樹を置いて、入り口の外へと踏み出していく。
(ごめん、何度もハッキングを試したけど、自爆システムだけは止められなかった)
(ロボットたちのハッキングも駄目だった)
(たぶん、あの悪い人たちが何かやってるんだよ)
(しょうがないね)
(この部屋が爆弾から一番離れてるから)
(うん、あとはお兄ちゃんたちを信じるだけ)
(じゃあ、これからどうする?)
(決まってるよ!)
『ハッキング』発動、シェルターの閉鎖開始。
『GARRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
号砲を上げ、アイリたちの戦いが始まる。
黒い背中に青白いプラズマを収縮させ、視界に入るモノ全てに雷撃を轟かせる。
全てを穿ち、焦がし、漆黒に染め上げる青雷の嵐。
ゆっくりとシェルターが閉じられていく中、眩い光を身に纏う獣は限界の限りまで、入り口の前で雄々しく吠え続ける。
広樹たちが最後に目にしたのは、青い光で輝かせる黒い脚。轟声を鳴り響くなか、壁は完全に閉ざされた。
「詩織…」
(まったく状況に追いつけないんだけど…)
「分かっているわ」
情報処理の限界を超えて、詩織に頼ろうと名を口に出す。
それを先読みし、思考を読んだように、詩織が返事を返し、次に声を張り上げた。
「具現化系統能力者は全員で壁床天井を固形物で覆いなさい!!それ以外の者は中央に集まり対衝撃姿勢で待機!」
その言葉に一斉に動き出し、空間の周りが氷、土、光、黒い棘…と多種多用の能力によって覆われ尽くす。
数秒で隙間の無い完全な密閉空間が完成され、広樹を中心に全員が集まり、さらにその周囲を能力で覆った。
「なあ詩織…」
「なに、広樹」
「俺…」
ーーーーーーッ!!
瞬間、頭を破るほどの爆音が全てを支配し、言葉が最後まで続くことはなかった…
なるべく早いうちに、1話とタイトルを使えたらと思っています!でも、もう少し後になるかもです。でも!面白いストーリーを書けるようにこれからも頑張って行きますので、ぜひ!これからも読みに来てくれると嬉しいです!
これからもよろしくお願いします!
♪───O(≧∇≦)O────♪