第38話、アイリ(私が撃つ、私が撃つ、私が撃ツ、私がウツ、私ガウツ、ワタシガウツ、ワタシガコワス、ワタシガハカイスル、ワタシガ…)
お久しぶりです!
面白いと思うものを書いたつもりなので!
ぜひ!読んで欲しいです!╰(*´︶`*)╯
いろんな感想、コメントをお待ちしております!
♪───O(≧∇≦)O────♪
助言があり、8月1日に修正を加えました!
背中を突く者の正体を見た。
それは自分が先ほどまで触っていたロボット。
そして改めて動き出したロボットを見る。
巨象を超える巨獣。狩猟者捕食者を思わせる牙と爪を持ち、その瞳は狂者を彷彿させる紅色をしていた。
それが操縦式ではなく全自動式だった事実に、さっきまでのワクワクは一瞬にして消え去り、一秒後にはグチャグチャ食べられるか、その鋭い爪でザックリされるかを想像してしまう。
そして真っ先に頭によぎったのは自分の命。
突然動き出したロボットに恐怖しながらも、必死に思考を回し、この危険な状況を打開する作戦を考える。
そして視界に入ったのは、操作パネルに突き刺さったままの…
(いけるのか?いや!いくしかない!?)
打開策が考えつき、ゆっくりと右腕を伸ばし、白い板の形をした武器、Eを掴み取った。
そしてポンッと出した白い球を左手に取り、ユラユラと左右に振って見せる。
その球が気になったのか、輝く紅色の瞳が球の揺れを追いかける。
そして、
カッキーン!
『打ったぁあああ!これはセンターフライかぁああ!?』
Eを全力で振り回してボールを空中に上げた。
榛名声の実況の言葉通りのフライ。
「……」
『……GAU?』
なんの変化を示さないロボットは依然として動かない。
犬が飛んでいったボールを追いかける場面を想像しての考えついた作戦だった。
第三者から見れば打開策ではなく愚策だと答えるこの作戦。
「……っ」
(お願いだからあっちを向いてくれ!)
それでもこれしかないと、Eを持った右手を上げて、球が転がっている方を指した。
「……っ」
(お願いだから!)
『……GAU』
その意思が伝わったのか、ロボットは球の転がる方向にゆっくりと歩き始めた。
それを機に反対側にある扉に走り出す影があった。
当然一人しかいない。
「誰かぁあああ!助けてくださぁああぃいいいい!ロボットの、ロボットの電源がONになったみたいですぅうううう!」
さっきとは比べ物にならない大声量が喉から飛び出す。必死になって叫びながら、Eをガンガンと扉を叩くが反応は依然と返ってこない。
「お願いだから!グチャグチャはやだぁああ!誰かぁああああ!」
脳裏に思い出したのは、昔に見たトラウマシーン。小学生の頃に観た映画の中に、目の前にいる獣型ロボットと同じ色合いをした人型ロボットを見たことがあった。
本来は人類を助けるために使用されるはずだったが、侵食型ウイルスに感染して敵になり、主人公が乗る人型ロボットにグチャグチャとグロテスクな姿にされたあのロボットだ。
そのグロシーンを思い出し、昔のトラウマが再発。吐き気と恐怖が心を支配した。
「くっそぉぉ!開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ開けッ!」
手のひらを赤くさせながら、必死にEを打ち続ける。
(ボールは取ったけど…)
(ドア叩いてるね)(何してるんだろ〜)(楽しそう!)(俺も叩きたい!)(うるさいよ〜)(なにをいっているんだろ〜)
黒い口に備わる牙で白い球を挟み込んだまま停止する。
視線の先には白い板を振り回す彼の背中。
その光景を見て、すかさず脳内会議が開かれていた。
(とりあえず行かない?)(うん!)(ボールは取ったし行こうよ)(じゃあ行こうか)
(うん……大丈夫だよ…ね?)
(大丈夫!)(大丈夫だ!)(大丈夫だよ!)
不安な気持ちを抱きながらも、みんなに励まされ、ゆっくりと彼に足先を向けた。
ゆっくりと、ゆっくりと、ゆっくりと…
彼に警戒されないように出来る限りゆっくりと近づく。
ドシン…ドシン…ドシン…
(…何の…音だ…)
背後から近づいて来る独特な音に、手を止め、瞳が大きく震える。
分かり切っていた。答えは知っていた。
だが、それを認めたくない自分がいた。
奴が一歩一歩とゆっくり向かってくる。それもただ歩いてくるのではない。一歩ごとに間を置いて近づいてきているのだ。
その動きが、その音が、その間が広樹の心をさらなる恐怖に染め上げていた。
人は恐怖に陥ると思考速度が加速すると言われている。
広樹は今、これから自分に起こる残酷な結末を、その僅かな時間に想像してしまっていたのだ。
あの映画のワンシーンのように、首を潰され、胸を抉られ、頭を砕かれ、腹の中にあるもの全てを撒き散らされる。
ドシン……。
そして、余命が訪れたのだと、背後から聞こえていた恐怖の音が止んだ。
自分の目の前が背後にいる巨獣の陰に覆われ、これからされることが脳内に巡り、瞳から光が消える。
(終わった…)
光を失った瞳に宿るのは、死を受け入れた色だった。
無駄な抵抗はせず、潔く安楽死ができることを祈って瞼を閉じて…ポツンッ。
「っ!」
目の前に何かが落とされる音がなった。
閉じかけた瞼の隙間から見えたのは白い影。
瞼を完全に開き、それが何なのかを理解した。
「……取ってきてくれたのか?」
『GAU!』
恐怖が一瞬にして消え去った。
それは球を取ってきてくれたことからか、自分の言葉に返事を返してくれたことからか、決定的な理由はなかった。
だが、ここに来るまでずっと一人だった広樹の胸は、今この時に何かで満たされた。
ここに来て初めて声を聞いてくれる相手が見つかったのだ。
「……もう一度やるか?」
『GAU!』
再び左手で白い球を上に軽く上げて、
『さあ、広樹選手!ここから何を見せてくれるのか!』
榛名の声がその部屋で鳴り響く。
(ねぇ、何やってるの?)(うん、ちょっとおかしいよね)(お嬢ちゃん、本当のことを話してみ〜)
(うっ、うるさい!これは彼と仲良くするためで!遊んでいるとかそうゆうのじゃなくて!)
(あ〜はいはい)
(うんうん、遊んでない遊んでない)
(ねぇ!ねぇ!今のアイリはお兄ちゃんの犬でいい?)
(いやいや、ペットでしょう。あ、同じか!)
(たしかに!)
(ねぇアイリ、彼のことをご主人様とお兄ちゃん、どっちで呼びたい?)
(ち・が・う・のぉおおおおお!)
必死に自分の意思を主張するもみんなはニヤニヤし、そんな彼らに私はカァァッと頬を赤く染める。
(今も彼に撫で撫でしてもらってるけど、これは怖がらないでもらうため!そう!まずは彼と仲良くすることが大事なの!)
この空間の外では、球を持ってきたことで撫で撫でをしてもらっていた。
これは彼が段々と私たちに心を開いてきたということだ。
これからここを抜け出すためには必要なことだと、心の中であらん限りに吠えた。
(じゃあさ、そろそろ行動しないとね)
ニヤニヤする友達のうちの一人が、そろそろ行動しなきゃと提案をする。
でも、アイリは少し不安そうに瞳を揺らし、
(……もう少し…)
(……)(……)(……)(……)
(……あのさ、アイリからこの身体の操縦権を奪えないかな?)
(ごめんなさい!今すぐするから何もしないで!)
慌てて、前言撤回だと口にした。
(でもこれからどうすればいいの?)
(まずは……あっ…)
(あっ…ってどうした?)
(いやさ、あの人に名前を教えてなかったことに気がついて…)
(必要なの?)
(呼び方が分からないと、あの人が不便に感じると思うよ)
(それはちょっと分かる)
(でさ!いいことを思いついたんだ!ついでに自分たちの頭がいいことも教えることもできる!)
(おお!)
(どうするの?)
爪を使って…
A i r i
「A、i、r、i…」
ロボットが黒い爪で床を引っ掻き、できた傷跡からその言葉が口から生まれた。
「どうゆうことだ?」
伝わるか分からないが、質問をぶつけてみる。
それに反応し、ロボットは両方の前足を使って、傷跡と己の顔を指差した。
「何を伝えたいんだ?」
聞いても返事は返ってこず、淡々と指を指し続ける。
自分を見つめ続けるその紅瞳が、何かを伝えたがっているように感じられた。
そして口から一言、
「アイリ…」
『GAUッ!』
その小さく漏れた言葉にロボットは大きく反応した。
そうか、何を伝えたかったのか分かった。
「アイリ」
『GAU!』
このロボットの名前がアイリだと分かった。
そして、さらに気づいたことがある。それを確かめようと言葉を口にした。
「お前は知能があるのか?」
『GAッ!?』
カキカキカキカキカキカキカキ!
アイリも何かに気づいたように慌てて床に爪を走らせた。そしてそこに一つの英文が刻まれた。
We have been kidnapped!
(私たちは誘拐されて来たの!)
伝えたいことを走り書きしたアイリ。
「私たちは…ん?」
だがこれを読むのは、高校一年の日本人だ。
当然読めるわけがない。
「ソーリー、ノォー、イングリッシュ…」
(ごめんな、英語が分からないんだ。歌は意味を知らずに歌っているし…)
『GAU…』
どこかアイリも落ち込んだように見えた。とりあえず、落ち込んで下がった頭を撫でる。
「ソーリー、本当にごめんな」
『GAU GAU』
撫でられるアイリが、大丈夫だと返事を返してくれた気がした。
「てか、そろそろここから出ないとな」
改めて目的を思い出した。
そして今は、
「アイリ、あの扉を壊せないか?」
今はアイリがいる。このロボットの力を借りれば、
『… GAU?』
アイリは顔を斜めに傾けて、分からないとアピールしていた。
「伝わらないよな」
本格的に手段を考え始める。手元にある武器は拳銃二丁とEのみ。隠し傘は玄関の傘立てに挿しっぱなしで持っていない。
スマホは依然に圏外。
辺りは緑の証明に照らされて薄暗い。
そして隣には獣型ロボットのアイリが座って…
「……お前、そのコードなんだけど、接続部分が折れ曲がってるぞ。大丈夫か?」
アイリの股間から、部屋の中央に位置する床に繋がる太いコードがあった。
そして犬猫が座る体制で座っていることにより、接続部分がほぼ直角に曲がっている。
「俺もさ、スマホの充電器のコードを曲げながら使ったせいで、接続が悪くなったんだよ。そう考えると、お前のそれもヤバいよな」
そう言いながらアイリの股間に手を伸ばし、コードの接続部に触れた。
ピーピーピー!
瞬間にアラートが空間に鳴り響き、アイリが急に立ち上がる。
「えっ!?もしかして俺が触れたからか!?」
そして、コードが繋がった先にある床がゆっくりと沈み始め、アイリの身体が引っ張られ始めた。
「おいおいおい!」
(これはっ!?早くコードを切らなきゃ!)
(駄目!)
(それをやったら確実にバレる!)
(でも、このままじゃ!ッッッ!ひっぱられるぅうう!)
四本の足で必死に踏ん張るも、床に繋がったコードが身体を引っ張り、底に連れていこうと沈み続ける。
(どうしよ!どうしよ!どうすれば!)
冷静な判断能力を失いながら慌てて周りを見回し、一人の人影を紅瞳がとらえた。
(お兄ちゃん!)
一人にしたくないと、とっさに私はその人影を長い尻尾で巻きつけた。
「ちょっ!まっ!えええ!?」
悲鳴を上げられるも、その人影を背中に乗せる。
身体は完全に沈みきり、見えてきたのは薄暗い広い空間。
辺りには様々な形をしたロボットが、其処彼処の溝にはめ込まれていた。
(こんなにあったんだ…)
立っている床はしばらく沈み続けて、バシュゥゥー、という音と共に、下半身に繋がれてたコードが身体から抜け落ちる。
そして床が半分に分かれ、下にあるベルトコンベアに乗せられ、移動を続けた。
(どこに連れて行かれるの…)
(……ッ)
みんなの表情が一変する。
それは恐怖。それは怒り。それは恨み。
全てがその空間にあった。
(……まさか)
(……ゥ)(……ス)(……ッ)
みんなが呟く。それは親や先生たちが言ってはいけないと教えられた汚い言葉。
ベルトコンベアが停止する。目の前にあるのは閉じられた巨大扉。
(いる……イル…ァ…ァ……)
みんなの感情と記憶が頭の中に入ってくる。
彼らにされた痛みが、醜悪な顔が、気持ち悪い声が、数秒前までの記憶を呑み込み一つの感情に心を黒く染め上げた。
開くことを知らせるブザーが鳴る。
巨大な扉が開き始め、隙間から見えたのは眩い光に包まれた広い空間。
最初に見たのは黒い服を着た人たちと黒い影が戦っている光景。
血を流しながら戦っている彼らは、私を見てその目を大きく開いていた。
だが、その光景よりも私たちの心を大きく刺激する存在がそこにいた。
(ミツケタ…)(イタ…)(ドウスル…)(キマッテル…)(ユルサナイ…)
(ァ…ァ…ァァァアアアアアアアアアア!!)
『OhーO』
『さーーーー満塁ーーサヨナーー!バッーー姫ーー変わーーーーヒッーー出てきーー広樹ーー!』
『OーーOhー』
耳元に何かが流れる、だが今になってはその音を聞き取る精神は持っていない。
今は何も聞こえない。
身体を大きく揺らし、ひざをゆっくり曲げながら重心を低くする。
顔にある大口を限界まで開き、そこに光が集約されていく。
それは炎か雷か、答えは全てだ。それは憎悪の塊であり、子供たちの闇に他ならない。
そして砲声する。
(オマエタチガァアアアアアアアアア!!)
『GARRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!』
光砲射。
「「「「「ーーーーーー」」」」」
その場にいた全ての者が眩い光に眼を凝らした。
数え切れない数の黒い影と傷だらけの彼らを巨大な光線が飛び越える。
そして、放たれた先にいる彼らの顔が恐怖に染まった。
これからもよろしくお願いします!
また読みに来てください!
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