第34話、詩織(私は広樹を信じる!)
書き上がりました!
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助言があり!7月9日に間違いを訂正しました!
その顔を見た全員が目を鋭くした。
そして、ジャックは怒りの表情を見せながら口を開く。
「ジョン・マイヤー!」
ジョン・マイヤーと呼ばれた男は下卑た笑みで戦闘力者たちを見下ろした。
『おや私の名前を知っているのか。嬉しいね』
「WDC幹部の情報は戦闘学のブラックリストに載っている。お前は何人もの戦闘力者の命を弄んだんだからな」
『人聞きが悪いね。ビジネスだよ。戦闘力者は高価取引の大切な商品だからね。そして君たちもこれから私たちの商品となる』
「まずは」と呟きながら、ジョンは右手に持った端末を操作した。
「っ!?」
瞬間、ジャックの身体は力が抜けた様に揺れ、片膝を床についた。
ジャックだけではない。詩織を含めた全員が辛そうな表情を顔に出しながら、床に手をついたのだ。
『いやー、うまく引っかかってくれて助かるよ』
「な、何をっ」
『戦闘力者の弱点を突いただけだよ。簡単に言ったらWDCが開発した特殊な細菌兵器だ。それを君たちが通ってきた通路に散布しておいた』
「そんなものでっ」
『さっきの戦闘で身体と能力に違和感があっただろう。その時から君達の体内に潜伏していたんだ。そして、今その細菌を活性化させた』
身体の芯が焼けるような痛みに襲われる。
今しなければいけないことは、この場にいる全員が理解していた。
人体強化による免疫強化と自然治癒力強化を行い、細菌の対応をすることだ。
『そうだ。君たちは人体強化で免疫強化と自然治癒力強化を発動せざるを得ない。さて、これで君達は』
『能力を使えなくなった訳だね!』
その言葉を引き金に、部屋の出入口から大勢のspiderが姿を現した。
「っ!?総員!陣形を組め!」
『はははははは!知っているよ!戦闘力者は人体強化を使っている最中に、能力を使用できないことを!』
でかい口を開き、笑みを浮かべながら告げた。
『さらに言うなら、君たちは免疫強化と自然治癒力を限界まで使っていることで、運動能力強化や肉体強度強化に集中ができなくて使えないだろう!』
ジョンは愉快に笑いながら、戦闘を見下ろし続ける。
「撃ち続けろ!敵を近寄らせるな!」
ジャックが大声で叫び続ける。
その声に従って、ひたすら近づいてくるsoldierに弾幕を張り続けるが、
(残弾が無くなるっ)
詩織の中で一つの不安が生まれていた。
最低限の残弾を残していたつもりだったが、それは能力の併用も踏まえて考えていた。
よって、この銃撃戦は長く続けることはできない。
(一か八か!)
詩織は一つの賭けに出ようとした。
それは人体強化を解除し、能力を使ってジョンがいる部屋に黒棘を出現させることだった。しかし、
『ああ、念のために教えておくが、君たちの体内に入った細菌はすでに致死レベルを超えた活性化を遂げている。今、人体強化を解除してしまえば、どうなるか分からないよ』
ジョンの口から伝えられた言葉に、彼女の考えは完全に崩された。
『肉体はボロボロになるが、脳だけは綺麗に残しておこう!君たちはsoldierになって数億ドルで取引されるだろう!いやー、今から作るのが楽しみだよ!』
soldierに弄ばれ、最後に頭部を首から切断される。
その未来が着々と近づいていたことに、詩織を含めた戦闘力者が顔を青くする。
だが、それでも足掻こうと考える者がいた。
「メアリー!お前の能力で!」
「ええ!」
メアリーと呼ばれた少女が、陣形の中心に入り、覚悟を決めた表情で膝をついた。
「ッ!?クゥッ!ッ!」
そして突然メアリーが苦しみ始めた。表情が泣き崩れ、爪で身体を引っ掻き、耳と鼻から流血しているのが見えた。
それでも痛みを我慢し、段々とメアリーの流血が止まり始める。
「できたわ!」
「次は攻撃系統能力者に能力を使え!」
ジャックの指示に従い、メアリーが作業に入る。
その様子を見たジョンが一つの答えを導き出した。
『ほう、一人だけ治療系統能力を持った戦闘力者がいたのか。それにしても、あの細菌を短時間で死滅させるとは、素晴らしい!ぜひ!君を治療タイプのsoldierにしてあげよう!』
賞賛を口にする彼は、次の手を取った。
『もう一度、苦しみを味わってもらうよ』
部屋の空調設備が動き出した音が聞こえた。
この状況は誰にでも理解できる。ジョンは自分たちを苦しめる細菌兵器を再び散布し始めたのだ。
でも、その言葉を跳ね返す存在が、光の広い布を周囲に舞わせた。
「そう簡単に、あなたの思い通りになるとは思わないで下さいね!」
メアリーが一番に治療したのはメリルだった。
本来の力を取り戻した彼女は、振動粒子を大量に生み出し、大きなカーテンを広げたように陣形を包み込む。
ミクロサイズの粒子が、飛び交う細菌を粉々に死滅させながら、近づけさせないように防ぎ続ける。
『これでは私たちが危なくなるね。ならbeeとsnakeも投入しよう。ああ、間違って脳を傷付けないか心配だよ』
その言葉を呟かれたと同時に、拳サイズの蜂型soldierの群れが開かれた通気口から現れ、さらに白い床の一部が開き、人の胴体ほどの太さを持った蛇型soldierが飛び出した。
現れたsoldierは容赦なく、メリルの振動粒子に能力を放ち、少しずつ光のカーテンが削られていく。
『この部屋はとても広いだろう。ここはsoldierの性能実験場なんだ。つまりはsoldierが通る道がいくつも設置されているということだね』
この部屋の広さの理由を今になって知った。
つまり、この空間では相手はいくらでもsoldierを投入できるということだ。
『さあ!spider、bee、snake、細菌兵器と色んな物を用意したよ!どうする!』
両腕を大きく広げたジョンは、終わりを見据えて口の両端を吊り上げる。
「メアリーは治療に集中!治療を終えた者は能力で敵を攻撃!絶対にメアリーを殺らせるな!」
メアリーは四人目となる戦闘力者の治療をする中、メリルを含めた攻撃系統能力者は襲い来るsoldierと細菌兵器と交戦する。
目の前の敵から目を離す余裕の無い戦いに、それぞれの顔に疲労が見え始める。
(アイツらを倒せたらっ)
詩織もその一人。メアリーに治療され、能力で攻撃を再開するも、余裕が無いほどに追い込まれていた。
それはジョンがいる部屋に攻撃ができないまでに敵の数が多過ぎた。
そして、増え続ける敵に怯まず、攻撃を止めない詩織たちに、ジョンは新しい手を考えた。
『中々強情だから、いいことを考えたよ。soldierのリミッターを解除しよう。そして君たちのトドメは彼女につけてもらうよ』
襲いかかって来るsoldierの黒いボディーが赤色に覆われ、蒸気を放出する。
そして、放たれる能力が数倍になったことをすぐに理解した。
一体のsnakeが放った能力がメリルの振動粒子を貫通し、メリルの頬をかすらせたのだ。
だが、それで終わりではなかった。
「っ!?躱せぇ!」
誰かの叫び声に反応し、その場から飛び抜く。
瞬間、陣形があった場所に無数の攻撃が直撃したのだ。
「っ!?アァァ!?」「ッ!?アッ!?」
数人の呻き声が上がった。発生した煙の隙間から見えたのは、破れ黒焦げた戦闘服と地面に広がっていく血だった。
躱しきれなかった仲間が敵の攻撃を浴びたのだ。
「これは本当にまずい…」
「ええ、これでは…」
周囲が絶望に包まれ始めた。重傷者が複数出たこと、陣形が崩壊したこと、細菌兵器を防ぐ守りを失ったこと、あらゆる事実が戦う彼らの意思を弱め始めたのだ。
その表情を見たジョンは、
『いい感じだ。でもまだ諦めないでくれよ。今彼女をここに運んでいてね。あの娘を見るまで意識を失わないでくれよ』
「彼女…っ!?まさかっ!?」
詩織の反応に気づいたジョンは下卑た笑みを浮かべながら、ご察しの通りと答え伝えた。
「ああそうだ!作り上げたのだよ!最強のsoldierを!そう!彼女!アイリ・エデルマンの脳を使ったsoldierをね!」
そして、彼が持つ端末からピーという音が鳴り響き、鼻息を大きくする。
「到着したよ!さあ!お披露目だ!」
開く事を知らせるブザーが鳴ると共に、巨大な扉が開き始めた。
隙間から見えたのは巨体の影。
絶望が支配する空間で、さらなる絶望が現れるようとしている。
この場にいる全員が希望をなくした表情を見せた。
これから始まるのは一方的な惨殺だろうと誰もが想像した。
そして…
『OhーOhーOhー』
『さあ!ランナー満塁の逆転サヨナラチャンス!バッター姫路詩織に変わって!ピンチヒッターとして出てきたのは!荻野広樹だ!』
『OhーOhーOhー』
漆黒の獣を連想させるsoldierに跨り、絶望が支配した空間を見据えた…
荻野広樹がそこにいた。
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