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第3話、斉木「少年が掴もうとするのは、希望か、欲望か…」

なんとかできました!感想待ってます!


5月31日に間違った部分を修正しました!


7月3日に読みやすくなる様に、修正しました!

広樹が戦闘力を知ってから一週間。

周りを不自然に見回し歩いている少年がいる。

広樹である。


(知り合いに会うなぁあ…)


彼は呪詛を唱えるが如く、知り合いに会わないことを祈っている。一週間前に斉木から『山本は運向上とか持ってたんじゃね?』と言われて、広樹も自分にそういう能力があるんじゃないかと思い、運試しをやってみた。


宝くじで。






そして現在に戻るが……


広樹は偶然にも当てたのだ。

それもなんと一億円。


本当の偶然。能力などの力も働いていない、単純な偶然だ。


今の彼の頭には戦闘力のセの字もない。大金を当てた広樹の頭には一億円という文字と呪詛のみである。


そして銀行に到着。


平常心を保ちながら扉をくぐり、受付カウンターから整理券をもらい椅子に座る。広樹自身は平常心を保ち、普通にしていると考えているが……







「あの人、ヤバくありませんか?」


「確かにね、とりあえず社員全体に注意を呼びかけておいて」


「分かりました」


受付カウンターに座る女性と上司の会話。

広樹が周囲にまき散らす雰囲気は怪しさ百パーセントのソレである。


スーツ

サングラス

過呼吸

大量の汗

顔真っ赤


順番を待っている他の客も広樹から距離をとっている。完全に目立たないようにしているはずの広樹は、今銀行にいる誰よりも目立っている。


過呼吸、汗、顔色は一億円という大金から発生した生理現象であり、スーツ、サングラスは自分の年齢と素顔を見せないようにするためである。


十八歳未満が宝くじを購入することは法律で禁止されており、受け取りも同じである。よって高校生とバレないようにした結果、今の広樹が生まれたのである。


「それにこの銀行に犯罪者が来ることはまずないだろう」


「そうですね。日本一安全な銀行っていうのがうちの決まり文句でしたよね」


「ああそうだ」


この銀行は首都にある最も大きな銀行である。

よって、警備もしっかりしており、緊急時には完璧な対応をして、事態解決を図る。

そして今にも怪しさを持つ広樹に声をかけようと2人の警備員が向かった。


「声をかけるみたいだね。とりあえずは安心できそうだ」


「はい」


銀行員の二人は警備員のこれからの対応に安心感を覚え、作業に戻る……




「どうするべきか。犯罪者ではないと思うが、周囲の目が俺たちに『(声をかけてこい)』と言っていて少し引くくらいだ」


「そうですね。正直言うと周囲の目が怖いです。でもこの銀行で犯罪を起こす馬鹿なんていませんよ」


警備員の二人の会話である。

一人はこの銀行の配属になって八年のベテランであり、もう一人は他の銀行から移動してきたばかりの若い後輩。


どちらも警備員として経験を積んでいるベテラン。そんな彼らは大勢の客から『(声かけてこい)』というメッセージのこもった視線から一人の男を見ている。


「スーツ、サングラス、過呼吸、大量の汗、顔真っ赤。数え役満ですね。見ていて逆に恥ずかしくなってきたんですが…」


「俺もだ。あんなのがこの銀行を襲おうとしている犯罪者だったら、次の飲み会のネタになるレベルだ。だが、怪しいのは事実、声をかけにいくぞ。犯罪者ではないと思うが警備員としての役割を果たす」


二人は意思を固めて広樹の方向に足を進める。彼に近づくにつれて彼の様子を間近で見えるようになり始めた。


貧乏ゆすりをしながら、顔全体を覆うほどの汗、窓から入ってくる日差しが彼の汗を反射して光沢を放っている。


((本当になんなんだこの人?))


警備員の二人は同じことを目の前の男に思い、距離を詰めていく。





(今の俺はどこから見てもサラリーマンだ!大丈夫!だから早く俺の番号を呼んでくれー!!)


広樹は体に生理現象が現れるくらいにあせっていた。


(やっぱり人がたくさんいるよな、そりゃそうだ、なにせ日本一でかい銀行なんだからな!でも、チックショー!!)


広樹がこの銀行を選んだのには理由がある。


宝くじの購入と受け取りは未成年ではできない。だが金の受け取りの際に年齢確認をされないことを知った広樹は一つの手段を見つけた。


成人のフリをして一億を現金で受け取り、そのまま帰る。


貯金をしたいが成人用の通帳がない。


よって現金で受け取って帰るしかない。親に相談ができればとっくに協力してもらっているが、現在行方不明という名の旅行中だ。寮生活になってからいつのまにか旅行に行って、手紙つきで生活費が送られてくる状態。


今日この場で一億円の現金が手に入る銀行を厳選した結果、日本一でかい銀行を選んだのだ。


だが、この銀行を選んだ結果により、広樹の隠れた瞳に動揺が生まれた。


(やべぇ!あの警備員たち!俺を見ながら近づいてきてやがる!なんでだ!)


理由はお前だ。


第三者がいればそう答えるだろう。

どこからどう見ても百パーセント広樹の姿と様子が原因で近づいてきている。


(もしかして未成年者だとバレたか!いやサングラスで顔を隠して、大人っぽいスーツを着ているんだぞ!バレるはずがない!)


バレてない。

バレるよりも前に怪しすぎるのだ。


未成年ということを隠すのに意識し過ぎたせいで、怪しさを隠すのを忘れていた。

そして広樹自身はそれに気づいていない。


(どうする!あれは完全に俺に向かってきている!)


限界まであせる。さらに汗の排出量と貧乏ゆすりを加速させて、周囲の人がさらに警戒をするほどにまで、彼の姿はマズイことになっている。


(どうする!どうする!どうする!)


精神はすでに限界を超えていた。

頭の中では思考を加速させ、この状況の打開を検討するが、何も思いつかない。そして警備員がちょうど話ができるほどに近づき、話しかけようとしたその時、彼に救いの光が差した。


『ピンポーン…二十五番…二十五番』


奇跡と言われてもおかしくないタイミングで広樹の待ち番号を呼ぶ機械音が聞こえる。


(よっしゃぁぁぁぁぁぁあ!!!)


彼は心の中で何かが弾けたように勢いよく立ち上がった。


たった数分間の出来事であったが、彼の中では数十時間に感じていた。だが、たった今それは解放された。


警備員たちの行動は止まった。


(はやく!はやく!はやく!)


立ち上がった彼の行動は早かった。キャリーケースの取っ手を握り、不自然と思われないくらいのスピードで早歩きで受付カウンターに向かった。





「どういうことだ!」


「あの子は最近うちに入社したばかりの新人です!どうしましょう!」


銀行員の上司と部下があせっていた。


先ほど社員たちに注意を呼びかけたはずだ。

だが、警備員が声をかけに行き、問題が解決する瞬間での呼び出し。


「注意しか呼びかけていなかった私のミスだね。具体的な行動を指示していればよかった」


「ここまできたらしょうがないですよ!私があの子の代わりに対応しますか!」


「いや、私がいこう。今この時間の管理責任者は私だ。君はそこにいてくれ」


上司は自らの行動に責任を感じながら、額に汗を浮かべ、緊張をした面持ちで広樹のいる受付カウンターに向かった。





警備員たちは動けなかった。


その二人は広樹が受付カウンターに向かっている中で思っていた。


普通に声をかけるつもりだったはずなのに、近づくにつれて彼から感じられる何かに体と精神が拒否反応を示していた。


周りの声も耳に届かないほどの強力な何か。自分たちを警備員と知っていながら放ってきたそれは、声と足を止めるほどのものだった。


普通なら警備員が近づいてきたと知れば、逆に怪しまれないように考え対応するはずだ。


だが彼は近づく私たちに黒い何かを飛ばしてきた。ありえない。危険だ。彼をあのまま向かわせてはいけない。


それは犯罪者が撒き散らす何かだ。


しかし、今だに動けず、残された銀行員たちを見ることしかできなかった。


















私は間違えてしまった。


入社してまだ二週間しか経っていない新人社員は思っていた。


さっき聞いた要注意人物の呼び出し番号を呼んでしまったからだ。


まだ仕事になれてない影響か、初めて見る怪しさ満点の男を見た影響か、彼女は冷静な判断機能を失っていた。そして最も呼び出してはいけない番号を呼び出したのである。


呼び出しボタンを押した自分の指を力一杯つまんで自らのやってしまった行動に後悔する。


だが、もう遅い。


彼はすでに私の目の前に立っている。その顔からは湯気が出ており、サングラスから薄く見える瞳からは強い狂気が伝わってくる。


ああ、短い人生だったな。


自然と頭の中に出てきたそのセリフは、彼女が目の前にいる男に何かされると感じさせられたことから発生した自身の叫びだった。
















ついに来た。

広樹は受付カウンターの前で立っていた。そしてついに目の前にいる女性から声がかかる。


「おまたせいたしました」


「はい」


(はい、ってなんだよ!やっちまった!完全に待たされたことに嫌味を言った感じになっちゃったよ!)


さっきまでの状況から解放されたことに余裕があったわけでもなく、これからが本番だと気合を入れた結果、間違えた返事をしてしまった。


(いや、早めに行動に移してしまおう!)


スーツの内ポケットを探り、宝くじを取り出そうとする。






ああ、私は今これから死ぬんだ。


彼はおまたせしたことに怒りを覚えていたのであろう。現に『はい』と答えてきた。そして流れる動きでスーツの内ポケットに手を入れる彼の姿はドラマで見たことがある。


その行動は私への死刑宣告なんだと思い、彼女は覚悟を決めた。






(チッ!奥にあって取りづらい!だが早く取らないと怪しまれる!)


広樹は宝くじをうまく取れずにあせっている。だが、まだポケットに手を入れてから二秒すら経っていない。一億という大金が広樹の思考を加速させているのだ。


目を合わせない様にするため、偶発的に広樹は天井を見上げる。


探ってから数秒。ようやく宝くじを手にとらえた。

頑張っていきます!

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