第29話、天草先生「私に出来ることは……」
書き上がりました!
そろそろバトルが始まる雰囲気です!
ぜひ!読みに来てもらえると嬉しいです!
いろんなコメントを待っています!
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
助言があり、一部訂正しました!
『この飛行機はまもなく離陸します。シートベルトをもう一度お確かめ下さい』
うわーい。戦闘学のお金で飛行機に乗っちゃったぞ。これから
「地獄に行くのかー」
「広樹くん、何か言いました?」
「いえ、独り言です。天草先生…」
飛行機の中で絶賛憂鬱になっていた。
これが旅行だったら良かった。だが、今回行くのは犯罪組織がいる国だ。
隣にいる天草先生は引率者として同行。
もしも詩織と二人っきりだったら、広樹は平常心を保てなかっただろう。
「天草先生、もう一度確認しますが、俺は自由に行動してもいいんですよね?」
「ええ!でも、一度別支部の引率者達にも話をするから、その後なら好きにして大丈夫よ!」
「分かりました」
言質はとった。
これで任務中に危険な場所へは行かず、安全地帯で遊んで時間を過ごしても文句を言われなくなった。
(外国で三、四日適当に時間を潰して、帰ってきたら借金がチャラ。完璧だな)
ディザスターも試したかったが、向こうに戦車があるのかも分からない。
というよりは、戦車と出会いたくない。
出会ったら死ぬ。これガチ。
「もう遅いから寝ててもいいわよ。到着はしばらく先だから」
そう言われ毛布を渡された。
確かに眠い。まあ夜だからしょうがないか。
「ありがとうございます」
「うん、お休み」
「広樹は寝ましたか?」
「ええ、瞼を閉じてから数秒もかからずにね。…本当に彼は」
すごい。
きっと天草先生はそう言おうとしたはずだ。
私もそう思う。
今回の任務は敵組織が活動している基地への潜入。最も危険な場所に入ろうとしているのに、彼は何も気にせずに堂々と寝られているのだ。
「詩織ちゃんも潜入任務を遂行したことがあったわよね。初めての前日はどうだったの?」
「眠れませんでした。考えてみると、今でも少し怖いです」
「それが普通よ。これから死ぬかもしれないのに、冷静でいられる人間は少ないわ」
「でも彼は」
「あなたと広樹くんを比べちゃ駄目よ。それはあなたが一番よく知っているはず」
彼の実力は私の実力を遥かに上回っている。
それは痛いほど分かっている。
だから、彼はこの状況下で寝られているのだ。
それでも、
「比べなきゃいけないんですよ」
「詩織ちゃん?」
「先生、私も寝ます。お休みなさい」
「ええ、お休みなさい」
私も広樹のように瞼を閉じる。
きっと、今回はすぐに眠れるはずだ。
理由?
そんなの、強い広樹が近くにいるからよ。
「ん……んん」
目を開けると、窓から日差しが顔に飛び込んできていた。
「おはよう広樹くん。ぐっすり寝ていたわね」
隣にはタブレット端末を操作する天草先生がいた。
「おはようございます。あとどれくらいで着きますか?」
「あと四時間くらいよ。ご飯がそろそろ来るから、頼みたい物を決めて起きなさい」
「はい」
機内食を食べるのは久しぶりだった。
確かビーフorフィッシュだっけ?
「俺はビーフにします」
「私はフィッシュね」
「ダイエットですか?」
「違うわ、ビーフは好きだけど今は肉を食べたくないだけよ」
うん?無料で好きなビーフを食べられるのに、今は食べたくない?
(好きだけど食べない。これは)
我慢だ。
先生は、今回の任務が終わるまで好きな物を食べずに我慢して、全てが終わったら好きなだけ爆食いするパターンの人だ。
でも無料で食べられるのに、それを逃すのは駄目だろ。だから、
「先生、今から食べちゃってもいいと思いますよ」
「え?」
「食べてください。俺はその方がいいと思います」
「私の気持ちを知っていて言っているの?」
「はい。俺は食べてもらいたいんです。それが1番正しいと思いますから」
「……ありがとう広樹くん。じゃあお願いね」
「はい」
うん。すっごく良い事をした気分だ。
てか、先生の瞳がちょっと潤んでいるのは気のせいか?
まあ、いいか。俺は先生の分のビーフも頼もう。
(全て知っているのね)
私は肉を食べられる気分ではなかった。
これはいつものことだった。
これから生徒が死ぬかもしれない。
その綺麗な肌が血に染まるかもしれない。
それを想像すると、いつも肉が食べられなくなる。
でも、
『今から食べちゃってもいいと思いますよ』
『俺はその方が良いと思います』
『俺は食べてもらいたいんです。それが1番正しいと思いますよ』
私は彼が怖いと思った。
彼は私の気持ちを知っていると言った。
そんな私に肉を食べてとお願いしたのだ。
こんなにも教師不幸な生徒がいただろうか。
こんなにも心配させてくれない生徒がいただろうか。
いなかった。
彼を心配する権利は誰も持っていない。
教師としての思いやりも彼には必要とされていないのだ。
こんなにも見ることが辛い生徒はいなかった。
でも何故だか、彼がいる任務では肉を食べられる気がした。
だから、私は彼にお願いをした。
『……ありがとう広樹くん。じゃあ(詩織ちゃんと他のみんなを)お願いね』
そのお願いに彼は迷いなく『はい』と言ってくれた。
きっと広樹くんなら、一人も死者を出さずに任務を達成できる。
校長も見抜けない力を彼が持っている。
世界で最も高い安定値を彼は出して見せた。
第十位の詩織ちゃんを簡単に倒した。
これが彼の実力の証拠であり、私が信じられる理由。
私が彼に自由行動を許したのは、彼の枷を外すため。
推測では、彼は本気の力を他者に見られたくないはずだ。
彼が力を隠したいのなら、隠させてあげる。
それで、みんなが無事に帰って来れるのなら。
だから
「頑張ってね」
「先生?何か言いましたか?」
「いえ、ただの独り言ですよ。広樹くん」
これからもよろしくです!!
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