第25話、鈴子「期間限定クエスト」
またですが、遅い時間に何とか書き上がりました!
多くの感想、コメントをお待ちしています!
これからもよろしくお願いします!
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プルルルル、プルルルル
「…ん〜…はぁい?もしもし」
電話のコール音に起こされ、眠たげな声で耳に端末を当てる。
『おい!今何時だと思ってるんだ!客から連絡が来てるぞ!予定の時間に来ないって!』
「は?何のことで……っ!?」
腕時計の時間を見て我に帰った一人の配達員。
(確か、俺は何かを踏んで……って、それどころじゃない!?荷物は!?って!何でここに伝票があるの!?)
『さっさと行け!苦情の電話がヤバイぞ!』
「は、はい!」
一人の不幸な配達員はトラックを走らせた。
暗い部屋のカーテンを乱暴に開き、窓を全開までスライドさせる。
改めて外の光を中に入れたが、想像を絶する光景が広がっていた。
リビングに広がるのは布団・布・枕・大量のゴミ袋、脱ぎ散らかる衣類…女が住む部屋には見えなかった。
玄関から窓へ辿り着くために何分要した分からない。
ゴミ袋をいくつ踏み越えたかも忘れた。
(人の住む部屋か疑うな)
広樹は白目でゴミ袋の山に寝かせた少女を見る。
(……でもやるっきゃないか。後で何か言われても、状況的に社会は俺の味方だ)
押し倒され、服を汚され、部屋を見たらゴミ屋敷。
味方になってくれるという確信があった。
「掃除をしてやるか。ついでに飯もここで食わしてもらうぞ」
広樹の掃除が始まった。
何かを煮込む音が聞こえる。
それといい匂いも。
グツグツグツ
(いい匂いがする……)
グツグツグツ
(こんな匂いはいつ以来だっけ……)
グツグツグツ
(そうだ、小学校を卒業してからだ…)
グツグツグツ
(最後に実家に帰ったの、いつだっけ?)
グツグツグツ
(お母さんの料理が食べたい……)
「調味料も腐ってたから、全部買う羽目になったじゃねえか」
(調味料?最後に使ったのは……あれ?いつだっけ?三年前?)
「三食カップ麺と出前とか、何考えてるんだ」
(うるさい)
「脱ぎ散らかってた衣類から胞子っぽい何かが張り付いててよ」
(うるさいっ)
「ゴミ袋から謎の液が垂れてくるわ」
(うるさい!)
「キッチンなんかゴキブリの幼虫が街を作って」
「うるさいっ!!」
「っ!?」
突然の怒鳴り声に、その呟き声が止んだ。
(あれ?ここどこ?)
私の部屋はこんなに広かった?いや、懐かしい気がする。そうだ。この部屋は、住み初めの頃はこんなだった。
あれ、男の人?
「……………………………っ!?」
私は寝ていたソファーから飛び起き、部屋の隅っこに走るように逃げた。
その姿を白目で見た男の人はゆっくりと口を開ける。
「まず言うぞ。俺は何も悪くない」
「……」
「最初から説明してやるから、よ〜く聞けよ」
「……」
「……ごめんなさい」
「……」
目の前の少女は小さい声だが、ちゃんと謝ってくれた。
だが、要求することがある。
「……お前に頼みが……いや命令だな」
「っ!?」
ビクっと少女の肩が震える。
そして、何かを恐れるように細腕で自分の身体を強く抱きしめた。
「そうか。お前が俺をどう思っているのか分かった。でも絶対あり得ないから心配するな」
「…?」
「お前…最後にお風呂に入ったのはいつだ?」
忌々しいものを見る目で少女に質問を飛ばした。
「……三週間…前?」
ブチっと何かが切れる音を聞いた。
その言葉を聞いた広樹が爆発したのである。
「風呂沸かしたから入れぇ!さっきから臭うんだよ!すごく腐った臭いがな!」
広樹は少女の腕を引っ張り、風呂場にぶち込んだ。
「綺麗になってる……」
最後に掃除したのはいつだったか覚えてないけど、綺麗に掃除されていたのは分かった。
着ているものを全て脱いで、お風呂に浸かる。
どこかで嗅いだことのある香りだ。
そうだ、これはお風呂の匂いだった。
私はゆっくりお風呂を堪能した。
少し経ってお風呂場を出ると、畳んである着替えが用意されていた。
私が来た時にあった?と疑問が浮かぶ。
匂いを嗅ぐと洗濯とアイロンをした香りがした。忘れかけていた匂いだ。
用意された服に着替えて、リビングへと歩き出す。
「出たか」
お湯で洗い流された苔色は、綺麗な明るい色を取り戻していた。
「……っ!?」
少女は広樹がいる位置を見た瞬間、強い動揺に襲われた。
「ああ、悪い。暇だったからゲームをやらせてって!?うおお!?」
広樹を押し出し、パソコンの画面に目を合わせる。
「痛ーよったく、俺が来た時から電源がオンのままだったんだぞ」
倒れた身体を起こし、広樹はパソコンの電源がついていた理由を話した。
だが、そんな事は聞いてないと、少女の瞳が広樹を指す。
「……どうやって?」
動揺している少女は、震えた口を動かした。
「ん?何が?」
「どうやって倒したの?」
ビクつく少女は画面を広樹に向けて質問をする。
その画面には広樹がプレイして倒したモンスターが映し出されていたのだ。
「いや、俺もこのゲームやってたから。でも最近ログインしてないから辞めてるのと同じだな」
「……」
少女は沈黙する。
だが、『グゥゥゥゥ〜』と少女のお腹は沈黙しなかった。
その音に反応し顔を赤らめる。
「こ、これは…」
「飯、適当に作ったから食うか?」
「……いただきます」
広樹の提案におずおずと返事を返した少女。
「今さらだが、俺は荻野広樹、高等部一年な」
作りたてのカレーを皿にかけながら、忘れていた自己紹介に入る。
「……内守谷鈴子…同じく一年です」
鈴子は内気な少女なのだと空気で感じる。
眉毛が八の字で、口元が逆三角形に見え、雰囲気で印象が伝わってくる。
「ほら、カレーだ」
「……ありがとう」
鈴子は警戒心を持ちながら、用意されたスプーンをゆっくりとる。
それを見た広樹は少し不快に感じた。
「男が作った料理だ。警戒するのも分かるが、何も入ってないから安心して食べな」
そう言って、鈴子のカレーを一口奪い、毒味をして見せた。
その行動を見た鈴子は、ゆっくりとスプーンを動かし、カレーを口に運んだ。
「……」
「美味いか?」
「……」
「無言はどっちなんだ?」
「……」
質問に無言を続ける鈴子に嫌気がさし、彼女のお皿に手をかける。
「不味かったか?じゃあ俺がお前の分も食べるから皿を寄越せっ!?……」
皿を掴んで引っ張り込もうとしたが、皿は動かなかった。
理由は明白、鈴子がお皿を強く握りしめていたからだった。
「……美味しいよ」
小さな口から出たのは小さな声。
「聞こえなかったぞ。なんだ?」
広樹は表情を変えずに、少し意地悪な対応を取ることにした。
その意地悪な言葉に鈴子は大きく息を吸い。
「美味しかった!っ!っ!っ!っ!」
その大きな一言を引き金に、バクバクと口の中にカレーを掻き込む。
その眼は何かにしみたように潤んでいた。
その鼻からは、ズズッという音を何度も鳴らした。
部屋を掃除し、少女のこれまでの生活を知った広樹は、その理由が何なのか分かっていた。
そして、ただ一言。
「そうか、それは良かったな」
今後もよろしくお願いします!
これからも頑張ります!
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