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第218話、夜織「そうよ。映画みたいな展開にしてしまえばいいのよ。悪いマッドサイエンティストがいるんだから、それっぽい言い訳を考えましょう!」

書き上がりました!

よろしくお願いします!

「ヤっちゃえばいいのよ」


夜織は考えつく。

姑息な罠によって荻野広樹を奪われた。そして彼を救い出そうと奮起したが、その場で彼は死んでしまった。そんなストーリーにしてしまおうと。


「そうよ。そういう事にしましょう」


敵は研究機関の人間だ。

なら奇想天外きそうてんがいな理由で嘘八百でっちあげってもいいだろう。


「マッドサイエンティストが出てくる映画みたいな展開がいいわね。ああいう頭のヤバい連中は何をしてもおかしくない訳だし」


追い詰められた研究者達は荻野広樹に謎の薬が投与し、ゲームみたいな怪物にされてしまった。

そして彼に誰も殺させないよう、私は苦渋の決断を下した。


「きっと詩織も許してくれるわよね。彼のことを想っての決断だったことにして」


このシナリオでいこう。迷いはない。悪いのは敵なのだから。

全ての罪を相手に押しつける。それが最高のハッピーエンドだ。


そう考えながら夜織は空中に立っていた。


思惑を固めて『黒い武装』のトリガーに指をかけ、周囲の空気が震え始める。



────────。

────────。



武装名【超重罰グラヴィティ・パニシメント】。

能力【重力操作】。


能力持ちの中でも、重力操作を持つ人間は比較的に多い。

一般的な能力と揶揄されるほどに多いのだ。

だがその力量は個人によって異なっている。


【超重罰】の元となったDNAの持ち主は、超重量級の戦艦を浮かべ、空を埋め尽くしたという経歴があった。


それを姫路夜織が持っている。

それを白姫葉月は知っていた。


「間に合わない」


だから葉月は予期できた。

肌に感じる空気の揺れ。

その正体。これから起こる衝撃に。


「回避は不可能」


蒼い瞳を見開かせて小さな手を床に置く。

瞬間に葉月は感じた。


周囲から轟く地響きを。全てが崩壊する激震を。


きっと誰もが恐怖に怯えるだろう。

息もできずに瞳を震わせていただろう。


だが葉月は違った。


「対象は車両じゃない?……彼女のまとは車両以外の全て?」


鋭かった瞳が緩みを見せる。

ああ。その力の矛先は車両じゃない。狙いは車両以外の全てだった。

そう理解した葉月は安心を漏らす。


「なら潰されない」



────────。

────────。


「詩織と泥団子を作ったころを思い出すわね」


夜織が思い出を呟く先で地獄が起きていた。


半径500メートル以内にある全てが、車両に襲いかかる光景があった。


ビル群は倒壊し、地上が掘り起こされる。


護送者を中心に全ての物体が吸い込まれ、重なり合うように収縮され、押し潰していく。


そして生まれたのは人工物に混じれた巨大な球体だった。


脱出不可能。

死因は圧死。

そう夜織が思った時だった。


「そうくるのね」


球体の右半分が塵と化した。

車両が放たれて地上に落ちていく。

それを夜織は見逃さず、瓦礫の球体に着地して即座に車両に照準を定めた。


「頑丈な車ね。今ので潰されないなら、直接本体を」


当初は逃げられないよう広範囲を狙ってビル群を巻き込んだが、結果として敵は潰されなかった。

ならば一点集中。全ての出力を一箇所に向かって放とうと決める。


だが夜織の背後から影が伸びた。


「っ!?」


車両を囮にしての視覚外攻撃。

突如と生えた岩棘に頬を掠らせながらも夜織は避けきった。


「……」


「……」


お互いに言葉はなかった。話し合いは無用なのだと両者が臨戦姿勢を見せ合う。


そして夜織は思考した。


彼の能力は?──────不明。

能力の射程距離は?───不明。

身体能力値は?─────不明。


思い浮かぶ情報が不明だらけ。

故に戦法は限られてくる。

だが初手だけは決まっていた。


「やっぱりこれしかないわね」


近づいてくる荻野広樹に武装を向けた。


「っ!?」


広樹が吹き飛ばされる。

落下し続けるビル群に風穴を開けながら、その身体は加速とともに落とされた。


彼の能力が分からない。

それだけで懐に入れてはならないと遠距離戦に持ち込んだ。


そしてビル群を操作して追撃しようとした時、


「くっ!?…………へぇ、狙撃もできるのねっ」


右肩を撃ち抜かれた。だが痛覚よりも先に驚愕に襲われる。視界にいるのは狙撃銃を構える荻野広樹。


「その武器はどこから出したの?」


放たれる二発目の弾丸を重力操作で受け止める。そして荻野広樹の周囲にある石片を操作して一斉に襲わせた。


だが彼は回避行動を見せず、


「塵にできるのね…」


彼を襲った全てが塵となる。

接近戦を選ばなくて正解だった。


そして彼の弱点も知れた。


「最初に君を吹き飛ばせたってことは、その能力は物理のみに有効ってことかしら?」


重力操作で彼を狙う。

触れることのできない攻撃こそ有効打。

そして相手の耐久力が不明な以上、広範囲攻撃ではなく一点集中攻撃を選ぶのは必然だった。


「最悪だわ」


落下し続けているビルの中に彼は飛び込んだ。

これでは狙いを絞れない。


ビルごと潰す?

いや既に一度逃げられている。彼本体を狙わなければ意味がない。


「博打ね」


夜織は己に重力操作を付与し、その身体をビルの中に突貫させる。


リスクはある。近づかれれば負けるのだ。

だが相手にもリスクがある。姿を見せれば一瞬で仕留められる技術と武装が夜織にある。


「どこにいるのかしら」


雑音が襲う。落下するビルの中にいるのだ。音による察知は不可能。ならば視界と勘のみが頼りになる。


「…そこ!!」


気配を感じた。

それは序列者にも引けを取らない強い意志の気配。

本能が危険信号を発し、長年の勘がソレを嗅ぎとり即座に能力で捕獲した。


廊下の奥に手首があった。

固定できたのは肉体の一部だが、それだけ捕まえられれば十分だった。

あとは逃さぬよう引きずり出して圧縮すれば終わる。


夜織は手首を引き寄せた。


そして瞠目した。


「な!?」


「え、えぇ…と、私…」


違う。それは荻野広樹ではなかった。

それはカメラを持った知らない少女。


変装?


いや。この少女は本物だ。本当に怯えている。


なら彼はどこに?


「捕まえた」


床が爆散する。武装が手から離れる。

激しく散った破片が塵となってすぐさまパズルのように組み合わさっていく。

それは夜織の下半身を覆い、逃げられないよう固定された。

そして壁から生えるように荻野広樹が現れる。


「これで詰み」


「どうかしら」


「まだ手段が?」


「この程度で終わっちゃうなら、数年前の任務に死んでるわよ」


汚いけどね。そう夜織は呟いて口からソレを吐き出した。


見た目は鎖に繋がれたら黒い箱。

器用にも鎖を甘噛みしながら、夜織は起動ワードを唱えた。


「【 愛妹黒棘シオリ】、刺し貫きなさい」


黒い棘。

それが地面から生まれ出た。


「くっ」


荻野広樹が手をかざした。

それは咄嗟に見せた防御の構え。触れれば塵にできると考えてしまった咄嗟の行動だった。


だが結果は異なり、赤い鮮血が宙を舞った。


(賭けだったわね。でも賞賛はあった。荻野広樹が使用している能力はほぼ序列一位と酷似していたわ)


大量の瓦礫が塵にされた時。

岩棘を作り出して攻撃された時。

足場を粉砕してその破片で足を拘束された時。


そこから分析した能力特有の現象から夜織は一つの可能性に賭けた。


もし彼の能力が序列第一位の能力と類似するのであれば、それに効果的な攻撃手段がある。


白姫葉月の能力。それは応用力が高く、その過程でモノを塵にすることができる。

だが塵にできるのものは限られていた。


「『黒槍出現』。この世に存在しない物質を突起物として出現させる能力」


「っっ」


「やっぱり塵にできないようね。構造や成分が分からないから」


刺し貫かれ、背後に飛ばされた右腕がある。

それは紛れもなく広樹の右腕だった。

夥しい量の血を流しながらも広樹は追撃に備える。片腕を奪ったことと、効果のある攻撃手段が割れた以上、この好機を逃すのほど姫路夜織は甘くない。


そう葉月は知っていたが、


「中断よ。右腕は治していいから」


「っ?」


「ビルが地面に落ちるわ。私たちは大丈夫だけど、その子が分からないのよ。もう加速して落ちてるから重力で持ち上げ直すのは間に合わないわ」


カメラを持った少女に視線を向けて、夜織は【超重罰】を拾った。


「今どきのカメラ付き端末って怖いのよね。データをすぐにクラウドへ保存して、その端末を壊したとしてもデータが残る可能性があるもの」


重力によるバリアを広げて自身と少女を覆う。荻野広樹だけは拾った右腕を繋げながら、ことの成り行きを静かに待った。


そしてビルは地面に激突する。

崩壊する中で夜織は周囲の邪魔な全てを重力で吹き飛ばした。


自分。荻野広樹。そしてカメラを持った少女。

その場に3人のみを残した円状の空間ができあがる。


「さてと…………はぁ〜〜」


項垂れた。

もう戦う気力がないように武装を地面に降ろす。


「もう何から手をつければいいか分からないわ」


頭を痛そうにする姫路夜織。


「カメラを持った子はいるし。荻野広樹は序列第一位とほぼ同じ実力だし。しかも右腕を飛ばしたのに涼しい顔してるし」


情報の整理が追いつかず夜織は文句を垂れた。

そして一番頭を痛くしたのは、


「ねぇ、そのカメラでどこまで撮ったのかしら?そのデータを全て消去してくれるなら、何億でも用意するわ」


この惨事を撮影されていた事実に夜織は追い詰められていた。

データの中身によって自身の考えていたシナリオが否定されてしまうのだから。


もう事実の捏造も隠蔽も不可能。


とにかくデータを確認し、ここまでの事態を引き起こしてしまった言い訳を考えなければならない。


下手をすれば広樹と戦ったことで妹に嫌われるかもしれない。ここまでで夜織の心臓は飛びかけていた。


「一億でも二億でも。とりあえず即金で十億は出せるわよ。だからお願い。その映像データを」


「ごめんなさい。これライブ配信なんです」


「……へ?」

読みに来てくれてありがとうございます。

そしてまた1年もお待たせしてしまい申し訳ございませんでした。

新年2025年もどうかよろしくお願いします。

皆々様、よいお年をお迎えください。


物語とは関係はありませんが、近日中にバンジージャンプを体験してくる予定です。

そのバンジージャンプまでに短文でもいいので219話を書き上げて、その日の夜に投稿したいと思います。

よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
おかえりー!!1年ぶりだね!!まってたーー!
ラッチちゃん、頼もしいww (〃・ω・ノ)ノ オカエリー (今度は続くと良いな
更新は嬉しいけど、年一更新は少なすぎるよ⋯
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