第211話、昼愛倫「本気で挑む気ですか?この私に?」
お久しぶりです。
書き上がりましたので投稿します。
これからもよろしくお願いします。
「つまらない物ですが」
「これはどうもご丁寧に」
あぁ…マズイ流れだ…。
断られるのを前提に社交辞令でお茶に誘ったが、まさか初対面の男の家に警戒せず入ってくるとは…。しかも部屋に入ってから明るかった雰囲気が嘘みたいに消えてる。
そこの辺りがホント怖い。絶対に何かある。
いや誘った俺も悪いんだけども。
「一つ質問をよろしいでしょうか?」
異様に静まった雰囲気で彼女が問いかける。
「私が訪れる前、どなたか来客がありませんでしたか?」
……何かの誘導尋問?
これはどう答えたら正解なんだ?
「……」
「分かりました。では質問を変えましょう」
沈黙に対して、彼女は上着のボタンを一つずつ外し始めた。
あ…マジだ。
来たよ。来ちゃったよ。いつか来ると思っていた女の常套手段。
『男を騙してお金を奪う』と書いてハニートラップ作戦だ。
くっ!ヤバイ!
こっちは思春期真っ盛りの健全な男子高校生なんだぞ!
無反応を続けることなんて不可能だ!
「……睨まないでください。別に武器を出そうと考えていませんので」
いやいや武器だろ。
上着で隠れていて分からなかったが、思っていた以上に巨大な武器を隠していたぜオイ。
詩織と鈴子が駆逐艦級なら、榛名とメリルは戦艦級。
たが目の前にいる昼愛倫さんはどうだ?
宇宙戦艦級だよ!!!!!!
え!?ホントに同じ日本人なの!?
テレビでも見たことないよ!そんな巨乳を持つ日本人は!
「これを見てください」
大胆だこの人!?
胸元を凝視しろと!?そして襲いに来いと!?弱みを作って脅されろと!?
止めてくれ!俺の心に眠る性欲の本能が目覚め──えっ。
「……そ、その傷は?」
さっきまでの興奮が嘘みたいに消えた。
そこに見えたのは吐き気を催すほどの悍ましい傷痕である。
「アナタの家に訪れる直前で何者かに背後から刺されました。重要な臓器と衣類は能力で補填できたので、綺麗な身なりで訪れることが叶った訳です」
第二ボタンまでを開き、胸の谷間にある深傷を指して昼愛倫は語る。
「改めて質問させて頂きます。この傷を作った不届き者に心当たりはありませんか?」
「っ…」
家に来る前に襲われた?それも扉の前で?
だったら犯人は一人しか……。
「誰か、思い当たる人が?」
「っ!?」
「もし分かるのなら教えていただきたい」
それを教えたらどうなる?
駄目だ。分かりきっている。
「……知りません」
俺の返答に聞いて、昼愛倫さんの顔に影が差した。
「……正直、この傷については隠して置きたかったんです。本当ならご挨拶だけにしようと……ですが、状況を確認する限り、詳しく聞く必要が出来ました」
胸元を閉じながら立ち上がり、昼愛倫は威圧を込めた声音で問い詰める。
「荻野さん。この部屋から匂うんですよ。アナタではない他の誰かの匂いが」
「っ!?」
「人体強化を使わなくても分かります……しかも女ですね」
そこまで分かるの!?
「女性はその辺りに敏感なんですよ。特に自分以外の女の匂いなら尚更に!」
女こわっ!!
「そしてアナタは嘘をついた!私が負った悲惨な傷痕を見ても尚、その女を庇った事実!それを私が許容できると思いましたか?」
そして昼愛倫は右手を構えた。
「序列第四位として警告します!」
宣言直後、右手に巨大な銃器が出現した。
懐から抜いたものではない。それは手品のように何もない空間から現れたのだ。
「嘘偽りなく全てを話して下さい!もし抵抗すれば、アナタを危険人物として対処します!」
冗談ではない。その証拠に指が引き金にかかってる。彼女は本気だ。
「そ、その…」
「余計な言葉は不要!」
「ぐっ!?」
の、喉に銃口がッッ!?
「さぁ答えなさい!!」
ど、どうする。
正直に伝えても待っているのは葉月からの制裁だ。どちらを選んでも詰みじゃないか!!
「まだ答えませんか!いいでしょう!なら尋問はやめて拷問の時間です!まずは腕の一本から!」
え、腕の一本!?それ撃つ人の台詞だよね!?
しかもそんな大きい銃で撃たれたら吹き飛ぶよ!
待って!無理!それは本当にギブ!
撃たれたらショック死する自信がある!
てか拷問イヤぁあ!ただの一般人に何しようとしてるの!?
「私は詩織ほど優しくないですよ!甘い覚悟で序列第四位は名乗れま─なッ!?」
突如、昼愛倫は背後に身を引いた。
そして床にボトッと何かが落ちる。
「くっ……今日はホント厄日ですね。胸を貫かれた上、次は右腕もですか」
それを見て血の気が引いた。
紛れもなく落ちたソレは、昼愛倫さんの切断された右腕だったからだ。
「そして匂います。しかも覚えのある……ええ、良いフローラルな香りです。来たばかりのようですね、黒衣灯花」
「……申し訳ありません四弦さん。彼には恩があります。それに無抵抗な相手を拷問するのは少々…」
姿が見えない。だが聞き覚えのある声音に名前だ。まさか本当に灯火さんがここに?
「榛名さんから急ぎの連絡がきて、訪れてみれば案の定でした。彼女がそうなんですね?」
「は、榛名から?」
分からない。
確か榛名と最後にした会話は、ビームの色についてだ。それが灯火さんを寄越してくれた理由?
「いえ、聞かなくても分かりますね。彼女の瞳は本気でした。だから私も躊躇せずに切り落とした訳ですから」
殺気を込めた声音で灯火さんが言う。
「四弦さん。力不足とは思いますが私が相手になりますよ。彼に戦意が無い以上、恩を受けている私がただ見てるのは我慢できませんから」
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