第203話、灯花「もう開けて中を見てみましょう」『灯花BADEND』
書き上がりましたので投稿します!
※『BADEND』という事で強烈な表現が含まれています。もしちょっとでも気分が悪くなった方がいれば、次話から読むことをオススメします。
次話から読んでも内容が伝わるようにしますので、どうかよろしくお願いします。
「ん…?」
ここは…どこだ?
廊下?灯りが非常灯だけでよく見えない。
確か俺は榛名の部屋でお菓子を食べていた筈だ。
『─ッ──ッ』
ん?声?
廊下の奥から微かに声音が響く。
それを追って暗がりを進んだ。
そして声音が段々と鮮明に聞こえ始める。
『ぁぁッ──やめ──助け──ッ!』
まだよく分からない。
『やめてくれッ!もう許してくれッッ!』
それは断末魔だった。声と共に響き渡るのは、歯科医院でよく聞くキュイーンという歪な異音。
近づいてはいけない。そう本能が叫んでいる。
だが足が勝手に動いていた。
『嫌だ!こんなッ!こんなッッ!ぁあ!ァアアアアアアアアアアアアアッッ!!』
鋭く突き刺すような叫びが耳を貫く。辿り着いたのは隙間光を漏らす白い扉。
恐る恐る中を覗くと、そこには短い黒髪の少女が立っている。その後ろ髪を見てすぐに灯花さんだと気づいた。
『ァ…ァ……ァァ……』
空気を震わせていた悲鳴が嘘のように消えた。
灯花さんの影に隠れて、一つの治療台がある。
悲鳴の出処はそこであり、その声音には聞き覚えがあった。
「やっと静かになりましたね」
『ォォ……ァァ!……ァィィ!』
「はいはい。そのまま大声を出さないで下さいねー」
再び始まったキュイーンという異音。それを発するのは灯花さんが持っている歯科医院でよく見るアレだった。
そして向けるのは、治療台に縛られた一人の男性。
顔は見えない。だが恐らく彼だ。
灯花さんがいなければ、彼を思い浮かべなかっただろう。
だが灯花さんの後ろ姿と、聞き覚えのある声音に、治療台に縛られている男の正体を悟った。
彼は序列第二位の──
「そこにいるのは誰ですか?」
「ひぃ!?」
突然振り返った灯花さん。そして隠れていた彼の顔が露わになる。
いや、露わになったのは顔じゃない。
その内側にあるものだった。
「ぅ、ゔぉおおおおッッ」
吐いた。胃の中にあった全てを吐き出した。
「ああ、広樹さんですか。どうぞ中へ。隠れなくてもいいですよ?」
「ぁ、ああああッッー!!」
逃げた。我慢出来ず悲鳴を叫んで廊下を走る。
あれは俺の知っている灯花さんじゃない。サイコパスだ。あんな酷い事をあの優しい彼女がやる筈がない。
「どこに行くつもりですか?」
「がはッ!?」
腹部に強い圧迫が襲う。
そして耳元には灯花さんの口があり、横腹を彼女に締め上げられていた。
「どうして人体強化を使わなかったのですか?それに叫びながら逃げるなんて意味不明です」
不思議そうに語る灯花さん。
怖い。今すぐ逃げたい。
何故そんな事を平然と言えるのか。
「広樹さんも来て下さい。ぜひ見て欲しいんです。あのバカが綺麗になっていくところを」
「き、綺麗になっていく…?」
「ええ、綺麗にしているんです。あのバカに付いた虫歯を削ってあげてるんです」
何を言っているんだ…。虫歯?そんな光景には見えなかったぞ。
「でもあのバカに付いた虫歯はどうも歯だけじゃなくて、もっと奥に侵食していたみたいで、今頑張ってるところなんですよ」
も、もっと奥に?どういう事だ。
や、やめろ!そっちに行きたくない!
「広樹さんは助手をやって下さい。歯科医院に行った事があればアレを知っていますよね。漏れ出た涎や血を吸引するアレです。そのホースを持ってるだけでいいので」
嫌だ!入りたくない!その部屋に俺を入れるな!
見せるな!見たくない!ここから出してくれ!
「はい、よく見て下さい。ココを削っていきますから、このホースをココに当てて……ああ、当てる度に色々とピクピクしていますが気にしないで下さいね」
その酷く不快な感触を最後に、俺は意識を手放した。
読んでくれてありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




