第178話、ジェシカ「さぁ行きなさい!貴女がオーストラリア支部の序列第一位よ!…………え?ちょ、ちょっと待ちなさい!そんな突入方法は許さないわよ!」榛名「私の手作りお粥です!」
書き上がりました!
これからもよろしくお願いします!
昨日も投稿したので、確認していただけると嬉しいです!
「博士、お気を確かに」
「あ、ああぁ…」
白いベットで博士は苦しい顔をしていた。その原因は主に、今お粥をフーフーしている少女にある。
「むぐむぐ。うん、やっぱりお粥は卵粥ですね」
「あぁぁ…あ?榛名くん?それは私のお粥じゃないかい?」
「ああ大丈夫です。博士の分は…」
榛名は機械しいバッグを開けて、湯気が出ている土鍋を取り出した。
「この榛名印のお粥があります。一生懸命作りました。どうぞ召し上がって下さい」
「何故熱々なんだい?今明らかにバックから取り出したよねぇ?」
「私が作ったバッグですよ。電子レンジ機能くらい付けます」
「そうかぁ……で」
博士は異様な視線で土鍋を見る。
「榛名くんの手作りみたいだけどぉ、普通のレシピで作ったんだよねぇ?」
「私に普通を期待されても」
博士は無言で土鍋をテーブルの隅に置いた。
「どうしてですか!?」
「誰だってそうするよぉ」
ハァ〜と溜め息を吐き出して、博士は土鍋を蓋を開けた。
「ほら榛名くん。あーん」
「えっ…」
「あーんだよぉ。榛名くん」
「そ、それはちょっと…」
「…………」
「……何を入れたんだい?」
「……何も入れてませんよ?」
「そんなに目線をそらされたらぁ、説得力もないねぇ」
スプーンを下ろして、瞳を泳がしている榛名を見る。
「本当に何を入れたんだい?」
「ぅぅ〜……ちょっとだけ……私が調合した元気になる……薬を……」
博士はベットの横にあるゴミ箱に、躊躇なく土鍋をひっくり返した。
「ああー!もったいない!」
「これが正しい判断だよぉ。間違って誰かが食べたら目も当てられない。私の記憶が正しければぁ、君は薬学の勉強をしてないよねぇ?」
鋭く言われた言葉に、榛名は涙目になる。
だが無理もない。今博士が入院している理由、それは榛名が起こした不祥事にあった。
「詩織くんがいた研究施設の不法侵入、及び研究者達への脅迫、開発中の試作機の改造及びぃ、詩織くんへの譲渡……私の胃も限界突破だよぉ」
「うっ」
「いくら詩織くんの為を思ってもぉ、限度があるんじゃないかい?」
「ぅぅ、ごめんなさい」
頭を下げて謝る弟子に、博士は眉頭を摘んだ。
「確かに彼処の研究者達はやや変わった考えを持っていたぁ。でもそれを解決するのは君の役目じゃない」
長い前髪に隠れた瞳は、ゆっくりと榛名の方へと向き、
「次からは私に言いなさい。分かったねぇ?」
「……はい」
「よろしい」
弱々しく漏れた返事だったが、博士はそれを許した。彼女の行動は友達を想った結果であり、それを博士が一番知っていたからだ。
そして暗い雰囲気を払拭しようと、博士は話題を切り替える。
「まさか君が詩織くんの能力をねぇ」
「……」
「詩織くんの所有物だったから、イベント検査機関は手を抜いたんだろう。確か名前は……」
「『黒鱗』です…」
「やはり私の生徒なのかぁ、能力の擬似再現化に着手するなんてねぇ。私が作った『白縛』と良い勝負だったよぉ」
「はい…」
「でも正直に言うとぉ、あれは『使用者が鈴子くん』であり『最後に使った』。その条件を満たしていたからこそ、白縛を最大限に活かせていたんだよねぇ」
博士は自らが作り上げた武装を脳裏に浮かべて言う。
「鈴子くんが成分を最適に調整しぃ、更には短時間だけの足止めのみに使ったぁ。状況にもよるけどぉ、平均的にあれは一分も凝固体を維持できないからねぇ」
白縛の欠点。あの船での戦いでは誰にも知られなかったが、それは偶然が生み出した結果だった。もし普通に使っていれば、姫路詩織を十秒も縛り付ける事は不可能だっただろう。
「長期使用には向かない……広樹くんにそう伝えてあるけどぉ、大丈夫かなぁ?説明書も入れておいたしぃ」
「たまに説明書をしっかり読まない人っていますよね。ゲームの説明書とか」
「怖い事を考えさせないでくれぇ」
────。
────。
「い、いや……」
なんで……わ、私は、お父さんの言う通りに、この『暗示』に……お願いして……
『KISYRRRRRRRRRRRR』
その声の先には血に濡れた鎌を持つロボットが立っていた。
そしてその足元には…
「お、おにい……ちゃん?」
「…………」
貴賓ある白い絨毯が、ゆっくりと赤く染まっていく。
うつ伏せに倒れた彼は何も答えてくれず、それがどういう意味を示しているのかは、リリーは震えながら知ってしまった。
そして近づいて来るロボットに、
「こ、来ないで……」
動けない。
いくら力を込めても、その脚が絨毯から離れない。
これから起こる事、それを考えるだけで息ができなくなる。
声も出せなくなり、心臓が締め付けられる様に苦しくなっていく。
そして行き着いてしまった。
目の前には自分を見下ろすロボットがいる。
もう逃げられない。そう心に抱いた。自分に伸びる赤く染まった鎌。
それにリリーは耐えきれず瞼を閉じて。
「た…たす……助けて」
霞みながらも出せた最後の求め。
だが、それを聞き取れた者は既に死んで──
──ッッ!!?
それは突如と鳴り響いた。止まない断続的な衝撃音。その音の先には、円状にいくつもの風穴が掘られた大窓があった。
そしてその窓の先、落雷轟く嵐の中に。
それは目にも止まらない速さで飛んで来た。
「ラリアットォオオオオ!!」
『KISYRRRRRRRRRRRRっっ!!?』
砲弾の如く飛んで来たソレは、大窓を突き破ってロボットに突撃した。
その勢いにロボットは耐えきれず、飛んで来た者と共に壁に打ち付けられる。
『KIっ──KISYRRっ──RRRRっ──KISYRRRRっっ』
ロボットはバチバチと放電させながら、壊れた断末魔を上げ続けた。
だが直ぐに、
「これで終わりよ」
機械の首が捥ぎ取られ、それをポイっと絨毯に転げる。そしてロボットが完全に止まった。
「大丈夫?─ん?あれ?もしかしてリリー・ジョウソン?」
骸となったロボットを背にして歩いて来たのは、手と足の間に布を張らせたスーツを着たお姉さんだった。
「っ、は……は、い」
何が起こったのか分からない。でも、咄嗟と声を出せた。
「やっぱり!いやー最初に重要目標を確保できて安心!襲われている女の子が見えたから、真っ先に飛んで来て正解だわ!」
お姉さんは満面の笑みで、私を抱きしめてきた。
「私の名前はサラ・ホワイト。安心して、貴女を無事に助け出すのも、私に与えられた任務の一つだから」
「サラ?……っ!サラ・ホワイト!?序列第一位!?」
リリーは思い出した。目の前にいるお姉さんの正体を。
自分が通う戦闘学のトップであり、全生徒の憧れの存在。そして、
「シンデレラ!」
「──に、魔法をかける魔法使いだけどね。実際は」
彼女には二つ名がある。
『シンデレラ』『魔法使い』『フェアリー』。そう呼ばれるのは、彼女が持つ能力に理由があった。
その能力を知っているリリーは、すぐにお願いした。
「お願い!お兄ちゃんを助けて!」
「お兄ちゃん?……あ」
そしてようやく気づいた。ロボットに襲われかけていたリリーに夢中で、その存在を疎かにしてしまっていた。
「大変!分かったわ!今すぐに私の能力で!」
広樹を抱き起こしたサラは、腹に開いた傷に触れて能力を使う。
「心臓はまだ微かに動いていたみたいね。これなら…」
「治る?」
「大丈夫よ!むしろ、もっと元気になるわ!」
サラはリリーに頭を撫でて、涙に染まった顔を拭いてあげた。
「彼を今からシンデレラにするからね!」
読んでくれてありがとうございます!
第164話の伏線を回収できました!オーストラリア支部の序列第一位の登場です!
サラ「彼を今からシンデレラにするからね!」
山本「」
ちょっと考えてみました。
シンデレラ役、荻野広樹
王子様役、山本一夜
魔法使い役、サラ・ホワイト
馬車を引く人、コアラ子ちゃん
意地悪なお姉さん役、姫路詩織・内守谷鈴子・白姫葉月……
ヒロインズが同性結婚を防ぐために奮闘する展開ができそうです!
それとサブタイトルの名前ですが、ジェシカはオーストラリア支部の校長です!久しぶりに名前を出したので、紹介しておきます!
これからも投稿頑張ります!