第167話、エリス(これも広樹くんの能力なのかい?)
書きあがりましたので投稿します!
あくまでイメージなのですが、今暴走している詩織達の姿を、もの○け姫の最初に登場するタ○リ神と考えてくれれば嬉しいです!
どうかよろしくお願いします!
「巡回soldierを全て集結させるって、一体ボスは何を考えているんだ」
「化物が現れたらしいぞ。それに恐れて自分のいる部屋に全機配置するらしい」
「それが自分の保身の為だけだったら笑えない話だ。それで俺達のsoldierが奪われた訳だしよ。それに化物って…ボスは何を言っているんだ?」
「俺達から遠く離れた場所に現れたらしいぞ。そして今そこに向かっている訳だが…やはりボスの言葉を疑うな…」
「遂に麻薬をやったんじゃないか?それで幻覚を見ているとか」
「有り得るな。前払いで大金が舞い込んで来て、色々と緩んでいたろ」
「この国の重鎮を人質に取り、政府に機密情報を要求、その後に殺害だったな。そしてその依頼者は確か…」
「政府関係者だって噂だ。今人質にしている大臣が目障りで、俺達に大金をはたいたと聞いたぞ」
「ん?どうして機密情報も要求する必要があるんだ?殺して欲しいのなら、人質にするのは無駄じゃないか?」
「その要求している機密情報だが、外部に漏らした情報らしいぞ」
「あ〜〜つまり隠蔽か。悪どいな、自分の失態を隠すついでに、邪魔な大臣も殺すって算段か」
「しかもsoldierを用意出来る程の大金を前金で支払われたんだ。大規模テロに見せて自分達に疑いの目を向けさせない為に。そう考えれば、依頼人が一人とは限らないな」
「お〜怖い怖い。それだけ隠滅と殺害を望む奴等がいるんだな。俺達より真っ黒なんじゃないか?」
「あくまで噂と推測だ。実のところはボスしか知らない。そして俺達はボスの指示通りに、化物が現れたという場所に向かうしかない訳だ。与太話はそれまでにしろ」
「「「「「「了解」」」」」」
「そろそろ仲間からの通信が途絶えた場所に入る。総員、陣形を維持しながら、警戒を高めろ」
その言葉で彼等は集中する。
中腰になり、足音を消し、無駄な会話の一切を断ち切った。
「この先か……」
廊下の角を曲がり、大廊下へと出る。
そこには荒らされた形跡は無く、まだ何も起こっていないと見て取れた。
「姿は見えないが、俺達の付近、もしくはそう遠くない上階下階の何処かに潜んでいる筈だ」
ボスが錯乱していなければな……、そう誰かが考えている最中に、最奥の影から足音が鳴り響き始めた。
「っ、銃撃態勢!向かって来る対象を図る!」
引き金に指をかけ、ライフルの銃口を影に向ける。
非常電源で照らされた廊下は、その最奥を鮮明に捉えさせない。だが、近づいて来る足音が、その対象の位置を教えてくれた。
「距離100に一人……いや…これは」
ぐじゃぐじゃぐじゃぐじゃ────!!と、聞いた事の無い雑音が聞こえてきた。
「人ではない……なんだ、この音は」
意識を集中させ、その音の正体を掴もうとする──だが、それよりも先に、
『ヘッッ、ヘェルゥプゥミィィイイイイイイ!!』
悲鳴が大廊下に反響し、その声音の持ち主の恐怖がテロリスト達に伝播する。
そして見えてきたのは黒スーツを着た若い日本人と、その背に背負われた白髪の幼女である。
「一般人客だ。無駄弾は撃つな。その背後に再度警戒を……なっ!?」
『GSYLRRRRRRRRRRRRRRRRーー!!』
「なっ…なんだっ、アレは…」
「ば、化物」
「黒い触手…あんなの…見た事が…」
その悍ましい姿に、銃を構えていたテロリスト達は瞳を震わせながら硬直する。
だがすぐに、
「ヘルプミィィーー!テロリストでも警察部隊でもこの際どっちでもいいから助けてぇえ!化物が!あの黒い何かを倒してくれ!撃て!ファイヤ!ファイヤァァだ!」
隣をすれ違う少年の声を皮切りに、咄嗟に引き金は引かれた。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ!!
銃声を鳴り響かせ、無数の銃弾が化物へと向かう。
だが、
「なっ!?銃弾が曲がる!?」
「向けていない筈の壁に弾が!?どうしてだ!?」
化物に接近した銃弾の全てが、弾道を捻じ曲げて壁に風穴を開けた。
信じられない事実と光景に精神が受け止めきれず、彼等は身体を止めてしまう。
その最中にも化物が近づいて来ていた。
「助けっ…」
辛うじて出た言葉がソレだった。
意識が定まらず、恐怖で自然と漏れ出てしまった救いを求める弱音。
だがその声に反応する者は、仲間達の中にはいなかった。
そう、テロリスト達の中には──
「逃げろ!エスケープ!エスケープ!立ち上がれ!警察なんだろ!早く!スタンドアップゥゥ!!」
その轟声と共に背中に一喝が鳴り響いた。
ッッ!!?
そこで彼等はようやく動けた。
一度動けて仕舞えば、もう固まる瞬間は無い。
恐怖しながらも、恐怖では固まらない。
今の彼等はただ、
「総員撤退!!」
恐怖によって逃げられる。
広樹を含めた数十人のテロリストが、一斉に化物に背を向けて走り出した。
────。
────。
「ZZZ〜〜んんっ、ふぁぁ〜〜、うん?」
「お、今頃目が覚めたか」
「広樹くん?」
「ちょっと足を動かすなよ」
「……ん?……え、ちょっと、え?…一体、君は何をしているんだい?」
「何って、エリスの足を縛った紐を解こうとしているんだが、少し苦戦中だ」
「いや、そっちじゃなくて」
エリスが疑問を持ったのは、広樹の背後にいる者達にだ。
その黒ずくめの武装集団を見て、エリスは直ぐにその者達の素性を悟る。
「彼等はテロリス──」
「ヘイ!ボーイ!ナイフ!」
「あ、センキュー!ベリーマッチ!」
「「「「HAHAHAHA!!」」」」
「エリス、借りたナイフで紐を切るから、少し動かないでくれ」
武装集団から受け取ったナイフで、その足に巻きついた紐を断ち切った。
「どうもセンキュー!ユーアー、ジェントルマン!」
「オォウ!ユーアー、ファンタスティックボーイ!ベリーベリーセンキュー!」
彼等は笑顔でそう言い、広樹の背中を叩いた。
「エリスが眠っている間に、(翻訳機を無くしたり)色々あってな」
「ヘイ!ウォーター!」
「あ、センキュー!ごくごくっ…」
男に差し出された水を、広樹は躊躇なく喉に通す。
「で、色々とあって彼等と出会って」
「ヘイ!クラッカー!」
「センキュー!ぼりぼりっ…」
差し出されたお菓子を頬張り、
「まあ色々とあったんだよ」
「ちょっとその色々を詳しく。色々が色々して色々ばっかしか聞き取れなかった」
「ヘイ!マッサージー!」
「さっきから君達ヘイヘイうるさいよ!?」
「エリス、そう怒るな。人間ってのはちょっとしたすれ違いで、争ったり、別れたりするだろう。でもな」
広樹は立ち上がって、ナイフを貸してくれた男と目を合わせる。
「分かり合えるんだよ、(言葉が)通じ合えない相手でも。笑顔があれば……ヘイ!」
「ヘイ!」
「最初からこうすれば良かった……なぁエリス、見てくれよ」
両腕を大きく広げて、広樹は武装集団を背景にして言った。
「(言葉の)通じ合えない相手と良い関係を築けた。この光景を」
「通じ合えない敵達と奴隷関係を築けた……(まさか、集団洗脳……か)」
読んでくれてありがとうございます。
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