第164話、メリル「逃げ場を失いまシタ……ウゥッ、校長とあんな約束をするんじゃなかったデス……」
書きあがりましたので投稿します!
どうかよろしくお願いします!
「もしもし…校長…」
『メリル?現場には到着したの?』
「あ、はい。これから着くところです…いえ、その前に別件のお話があってですね」
『?…聞きましょうか』
「はい…」
スゥーと、呼吸を置いてから、
「本当に帰らせて下さい」
『駄目よ』
心からの本音を却下された。
「お願いします!もう無理ですめちゃくちゃです!何がどうなってこんな状況になるんですか!?」
『メ、メリル?何をそんなに混乱しているの?さっきまで普通に状況を受け入れていたじゃない』
「「…………」」
「はぁ!?そんなの知りませんよ!受け入れられる訳ないじゃないですか!この私が!」
『いいえ!アナタは受け入れていました!冷静な声で現場に急行すると、私の耳が覚えているわよ!』
「だから!いつ私がそんな……そん…な?」
チラっと、私は詩織と鈴子を見た。
「「…………」」
プイッと、視線を逸らされる。
二人が私の端末を持っていた理由が今分かった。
「帰らせて下さい!本当に駄目です!気づかぬ間に私の端末が二人にッッムグ!?」
『ん?メリル?どうしたの?』
メリルの声が押し黙り、ジェシカが疑問を唱える。
が、すぐに、
「『ごめんなさいでした!大丈夫です!メリル・キャンデロロ!これより警察組織と合流を図ります!』」
『え、ええ。お願いするわ』
ムグゥゥーー!!
何を勝手に言っているんデスカ!?
そんな合わせ技が出来るなんて、私知りませんデシタヨ!?
この方法で校長に返事を返したんデスネ!?
『あ、それと朗報よ!メリルの要望だけど、何とか応えられたわ!』
「『っ?…ありがとうございます!』」
に、逃げ道が!?校長が約束を守ってしまいマシタ!
そして今その話をするのは本当に危険デス!
これ以上は駄目デス!私の寿命が削られマス!
『今そちらに輸送しているから!政治家達に散々文句を言われたけど、今回のテロ発生現場が影響して融通が利いたのよ!』
どれだけ頑張ったんデスカ校長!?もう嫌デス!部屋に帰りたいデス!
「『それは良かったです!では、頑張ってくれた校長の為にも、私は任務遂行に前向きに当たります!』」
『ええ、頑張りなさい!』
「『はい!』」
『ブツッ』と通話が切れた音が鳴る。
「……ねぇメリル」
近い近い近い!?顔をそんなに近づけなイデ!
「何を頼んだのか、教えてもらっても良いかしら?」
「うぇっ!?……え、え〜と、デスネ……」
「本来の任務は、私達を監視する内容だった筈……それに必要な何かを、校長にお願いしていた事になる……」
ムワァァ〜と、背後から悪臭が漂ってくる。
これはマズイ!?背後で内守谷さんが何かしようとシテル!!
「言いマス!白状しマスカラ!だから殺気を向けるのは止めて下サイ!」
どうせ言わなくても後で分かるんだ。
だったらと、私は観念して答えを打ち明けた。
「オーストラリア支部の序列第一位。先輩がこちらに向かっていマス。私が要請したのは、頼れる人員の補充デス」
「「!?」」
「さ、さすがに二人でも驚きマスぅぅななっ!なっ!何をしようとしてるんデスカ!?」
触手と悪臭玉を出した二人に、私は涙目で問い質した。
「何って、それは私達のセリフよ」
「オーストラリア支部の一位を呼び出すなんて……完全に私達と争う気だったに決まってる」
「ええ、そうね。ただ監視するだけだと言っておいて、その裏にスナイパーライフルを隠し持たれていた気分だわ。それは完全に背後から撃つ気満々だったって事よね」
「やっぱり狙いは……広樹」
「ち、違いマス!勘違いデス!」
詩織と鈴子の重ね重ねの推測に、私は本気で否定した。
「私達は日本と事を構えるつもりはありまセン!ただ、詩織が突然現れたり、一般イベントで戦闘力を使われたりと、本当に私の予想を超えた事が連続してるんデス!ココまできたら、次は何が起こるか考えつきまセン!」
正直、次に起こされる何かに立ち会いたくない。
注意したとしても、二人が止まらないのは分かりきっている。
いや、注意する事自体が、恐ろしくて私には出来ない。
だが本当に厄介なのは、別の方にある。
「詩織達が引き起こす事も心配デスガ、それ以上の『もしも』に備えたいんデス!広樹もそうデスガ、内守谷さんが目立つのは本当にマズイんデスヨ!」
「私?」
「そうデス!内守谷さんはなにせ『世界トップクラスの誘導改変』の持ち主!アナタの来訪を悪い人間が嗅ぎ付けたら、私一人の手に負えまセン!なので頼れる人員の補充が必要だったんデス!」
どこかのトチ狂った研究者が、『新しい研究の革命の為にぃい!』とか発狂しやって来る可能性もある。
最悪の板挟みだ。
恐ろしい詩織達と、厄介な研究者達。
それに挟まれるなんて、一人では耐えられない。
「これは三人の為にも言っているんデス!それに先輩は色々と融通を聞いてくれマス!もし詩織達が変に戦闘力を使用しても、大抵は見逃してくれマス!」
…………。
「ん?あの、聞いてマス──カ?」
沈黙が気になって、二人がいる背後に振り返ると、
「はっ!?詩織!?内守谷さん!?」
ちょっと目を離した隙に消えていた。
「何処ですか!私一人を残して何処にッッ──!?」
「──あっ」
首だけとなった内守谷さんがいた。
「…………じゃ」
外されたマンホールの蓋。
その側の穴に入る内守谷さんの姿を見て、
「待って下サイ!?まず警察組織と合流をしないといけないんデスヨ!何処に行く気デスカ!ちょっ!私を置いて行かなイデ!!」
合流か詩織達、どちらを優先しなければいけないのか──そんな思考すら与えられずに、私はマンホールの中に潜り込むしかなかった。
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『早く機内にお戻り下さい!』
「……え?何?窓越しだからよく聞こえなーい」
『き!な!い!に!戻って来て下さい!』
「えー?『わ!た!し!を!カボチャの馬車に乗せて!』って?」
『誰がそんな事を頼むんですか!?早く機内に戻れって言ってるんですよ!この第一位ぃい!!』
「あーはいはい。分かりましたー。戻りますよー。もうっ、ちょっとしたオーストラリアンジョークなのに…」
深く澄み渡る蒼い空を背にして、微笑み笑いをする彼女。
黒色の鉄右翼に足音を鳴らしながら、第一位と呼ばれた彼女は、向かう先の空を見た。
「メリルちゃん、怪我してないと良いな…」
読んでくれてありがとうございます!
第153話でメリルが校長と約束した『人員補充』の目処が立ちました!
これでオーストラリア支部の序列第一位が登場する予定です!どうか楽しみにしていてください!
これからもよろしくお願いします!