第161話、エリス「やはり、此処が狙われたね」
書きあがりましたので投稿します!
よろしくお願いします!
逃げられないまま、流されるままに、豪華な昼食を振舞われ、今は食後の会話となっていた。
「ほう、エリスと一緒にバスケを?」
「ええ、まぁ…」
「そうなんだよ。いや〜中々面白い体験をしたね」
「で、君を除いた他全員が、女の子だけでメンバー構成されていたと?」
「はい…構成されていました…」
「『活発系』『クール系』『外人系』といたよ」
「それと『合法ロ─ッ痛!?」
ん?合法?
「何でもないよ広樹くん」
「あ、はい…」
「これ、年寄りを労らんか…まぁ、貴女はワシ以上に老い─ッ痛!?」
ワシ以上におい?
「広樹くん、この老いぼれの話は聞かない方が賢明だよ」
賢明なんだ…もしかして、エリスは反抗期なのか?
「エリスが邪魔をするから、ワシの言いたい事が言えんじゃろう」
「そんな話をする為に昼食を誘ったんじゃないよ」
「軽い話も大切じゃ、それに今の話を聞くと、ワシはどうしても広樹くんに伝えたい事があるんじゃよ──」
エリスから視線を離した御老人は、俺の方へと顔を寄せる。
そして瞼をカッと広げ──
「何処のハーレム男子じゃ!うらやまけしからん!」
「………………へ?」
「ワシもそんな青春時代を送りたかった!」
「………………ん?」
(ちょっと何言ってるかワカラナイ)
本当にワカラナイヨ。
ヒロイン?ハーレム?ウラヤマシイ?
以前にルーカスにも同じ事を言われたが、まず変人二人は恋愛対象枠と呼べるのか?……いや呼べない。
あの二人は人類を超えた戦闘民族だ。
そして今は新たな同性愛に目覚めて、現在進行形で異性との恋愛は出来ない。つまり恋愛対象外。
次に目の前にいるエリスについては、もう幼女だから対象外。
最後にメリルは…………ん?
(メリルは確か…)
メリルの事を改めて振り返ってみる。
可憐な金髪ロング、実った巨乳、透き通った青瞳、片言だが日本語で通じ合える、(詩織と鈴子についての)俺の気持ちを知ってくれる理解者、そして結構可愛い……あれ?
オーストラリア支部の序列者である以外は、凄く女の子らしいんじゃないか?
(メリルってもしかして…良い?)
いやいや!早まるな俺!
メリルはサッカーの時に相手ゴールキーパーの顔面をボロ雑巾にしたじゃないか……いや、待て、
(なんで、メリルは始めから相手を瀕死にしなかったんだ?……いや、瀕死にしたくなかったのか?)
あの時は俺が足手まといになっていた。汗まみれになり、息も切らし、リタイアを宣言しようと思っていた程に。
そんな俺を見兼ねて、メリルが最後の最後にあの最悪の選択を決めたのだとしたら?
もしかして、俺はメリルにやらせたくない事をやらせたのか?あの泥沼の戦いを終わらせる為に。
そう考えると、メリルが凄く優しい女の子と言う訳で……あ、優しい女の子だったわ。
(え、これは本当にマズくないか?)
ヤバイ!今になって罪悪感が凄く来る!
自分の為に頑張ってくれた女の子を、何も教えずに餌として使ってしまった!
早く連絡を取らないと!
「すみません、少し席を外す用事があるので、そろそろお暇を……ご馳走さまでした」
「っ!?いやいや広樹くん、もう少し話していこうよ」
「そうじゃそうじゃ!まだ君の話を聞きたいのう」
何故か知らないが、すっごく止められた。
美味しいフルコースを振舞ってもらったから、かなり断り辛い。
「あ、じゃあ、後で戻って来ますので、少しだけ席を離れます。ちょっと解消しておきたい事が─」
「解消しておきたい事?それは一体なんだい?」
「そうじゃな。そこに興味が沸くのう」
幼女と老人の顔がぐいぐい迫って来る。
なんでそこまで俺のプライベートに興味津々なのかが分からない。
「いや、本当に軽い事なんで。すぐに片付けられる事なので」
「軽い事なのかい?本当に?」
「すぐに片付けられると言っても、ワシの勘では数時間は必要だと思うがのう」
メリルへの連絡だけなのに、どうして数時間も必要になるんだ。
でも、本当に軽い事かと聞かれれば、たぶん違うかもしれない。
「確かに場合によっては軽い事じゃなくなるかもしれないですけど、そこは……なんとか努力で」
高い確率であの二人の話題が飛び込んで来そうだ。
でも、努力でなんとか……なるのか?
ヤバイ。同性愛相談のゴールが見えない。
「私の予想だと、努力で叶えられる範疇を超えていると思うが?」
「ああそうじゃ、良ければワシ達に何か話してくれぬか?力になれるかもしれぬぞ」
エリスは俺の何を予想したの?
確かに努力で叶えられる範疇を超える可能性はあるけど…
そして御老人。
力になれると言ってくれても、同性愛についての話なんです。
結局これの解決策なんて、諦めさせるか、応援するかの選択肢しかない。
そんな羞恥的な相談を、この二人にするのは人選が違い過ぎる。
(良し、行こう)
「ありがとうございます。でも、俺だけで何とかしたいので……っん?あの、なんで肩を掴んでいるんですか?」
「広樹くん、安心して私達に訳を話してくれ。きっと力になれるから」
「そうじゃ、君の知っている事を全て教えてくれれば、後はワシ達で解決しよう」
そんな自信たっぷりに言われても、こんなふざけた相談をこの二人にするのは絶対に間違ってる。
「この問題は俺が─」
「広樹くん、大丈夫だから。全てを話してくれ」
「一人で背追い込まずに、さあ、正直に話すのじゃ」
頑なに俺の力になってくれると言う。
だが、それでも…
同性愛の相談をするのは恥ずかしいんだ!
そしてメリルが俺を待っている!
「すみません!やっぱり二人を巻き込めません!俺行きます!」
俺はバックを持って、肩にあった二人の手を跳ね除けた。
「ひ、広樹くん!」
「ちょっと待ちたまえ!」
「二人の力を借りるまでもありません!でもお気持ちは嬉しかったです!」
閉じられていた赤い扉を開け放ち、気品ある絨毯廊下に出た。
「本当にありがとうございましたー!!」
「広樹くーん!!」
「待つのじゃ!君がこの件に関わるべきでは──」
背後から自分を呼ぶ声が聞こえるが、今は耳を強く塞ぐ。
そんな真剣になられても、場違いなあの二人に同性愛の相談は駄目だ。
「聞かせてくれ!私達には君が必要なんだ!」
「おぬしは一体何を知っておるのじゃ!」
(あー!あー!何も聞こえないー!)
客が降りたばかりのエレベーターを見つけ、考える間も無く突っ込んだ。
そしてすかさず適当な『階』を押して、『閉扉(close)』を連打する。
そして閉まりかける扉を見て──言葉を失った。
「全力の私を受け止めてくれぇえ!」
停止を考えない全力疾走。
そんな超加速で走って来た幼女の前頭部が、俺の広樹に「グボォッッ!?」
扉が閉まる寸前で、エリスはエレベーター内への滑り込みに成功した。
「間に合ったよ広樹くん!これで君は私と一緒に行動するしかない!さぁ全てを話すんだ!」
「オォオン!?オォォッッ!?ゴォォォオウウォオウ!?」
「何をしているんだ君は!?」
それは俺のセリフぅうう!!
俺の大切な広樹に強烈な一発決めておいて、なんで胸倉を掴まれながら事情聴取させられてるの!?
「エッ、エリスゥゥ、ちょっ」
「早く白状したまえ!今君がしようとしていた事を話すんだ!」
やばい!苦しい!アレも痛くて言葉が出ない!
ただメリルに電話しようとしただけなのに、どうしてエリスはこんなにも必死なんだ。
「エリスぅ、本当にっ、本当に今はっ…」
「君がこんなにも慌ててるという事は、もう時間がないんだろう!」
「い、いえっ、もう手遅れかも…」
「手遅れだと!?」
いや、あの着信履歴数を考えると、もう既にメリルは……って考えてしまう自分がいる。
だが、まだ…
「でもっ…まだ、決まった訳ではっ…」
「そうだ!まだ結果は決まってない!後手に回ろうとも、私達なら解決出来るさ!」
後手か。ああ後手だ。決着もしてない。
今から電話しても遅くない筈……いや、やっぱ怖い。
だが、その前にまず胸倉に掛けられた手をどうにかしなければ、
「エリスっ、一度手を離し─」
エリスに伝える、その時だった。
『────────────────ッッツッ!!!!』
「「っ!?」」
突然と響き渡ったのは、連続する乱れた衝撃音。
まるで近くで何かが爆発し、崩壊したか様に聞き取れた。
そして繋がっていた衝撃音の嵐は消え、次に待っていたのは──『ブツッ』
「電力管理室を落とされたか…」
暗転したエレベーター内で、エリスは何かを呟き、俺の胸倉から手を離した。
読んでくれてありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!